23.三詩三様

心探している答えがいつもそこにないから いつまでもここから動けない

目の端で捉えた星の瞬きが すぐに消滅と結びついて巧く生きられない・・・


持つことの出来た心は 誰しもが持っているものだった

色は違えど 形は違えど 手放せないものに相違はなかった

それもその筈 心はその身との癒着によって 自身の均衡を保つものであった

心を失うことそれ即ち死を意味していた――死とは意味をなくすこと

色も違う 形も違う それでも心を持つことが許されたのは 生物の端くれだから


答えが見つからないのは 盲目だからではない

答えに辿り着けないのは 膝行るためではない

確かに眼下には闇が広がっている 確かに起伏の激しい道ではある

しかし 我が目には一筋の光が宿っているのだ

されど 我が背には一対の羽が生えているのだ

答えを見つけるためには 答えに辿り着くためには

むしろ目を瞑り 思い切って飛ぶしか方法はないのである


夜には星が瞬くから きっと居ても立ってもいられなくなって 空を見上げるだろう

まだ見ぬ光 その一粒一粟に思いを馳せ 何を願おうか考えるかもしれない

今まで出会った人たちの幸せを願おうか これから出会う人たちの息災を願おうか

待ちに待った夜が来て 星が瞬き出したら 両の手を合わせよう

それから目蓋をすっかり閉じて 口には出さず心の中で 願い事をひとつだけ言おう

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