25.もう一人
懐かしむことも 名残惜しく思うこともない
そんな出会いしかして来なかったから 別れを寂しく思ったことはない
愛に溺れることもなければ 恋に焦がれることも・・・
出会いなど 目まぐるしく起こる事象の只中では 些細なことに過ぎなかった
挨拶にも 握手にも 要らぬ感情は込めなかった
抱擁も 接吻も 只の動きでしかなく 無論意味を為さないものだった
いつしか出会いは 痛みを伴うものになっていた
未知の恐怖はそうしてやって来て ひどく苛まれるようになっていった
もう一人を望むほかなかった しかし もう一人はそれを望んではいなかった
私は私であり誰かではない それなのに もう一人はまるで誰かだった
一人を望もうにも 決して一人にはなれない
挨拶も 握手も 不要な上 抱擁は勿論 接吻など その対象ではなかった
懐かしむことも 名残惜しく思うこともない
そんな出会いをこの上なく寂しく思っていたのは もう一人だった
愛に溺れること 恋に焦がれること それをもう一人はずっと望んでいた
誰のために生きるべきなのか
私の人生は 私一人のためのものではないのか
私の内なる欲望は そうやって私を蝕み続けた
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