4.歩度

一分一秒が惜しい人たちによって

“現在”とは

「1分1秒までのことである」

という考えが広まった


「1分1秒より前を過去とし

1分1秒後からを未来とする」


この考え方により

恣に生きてきた人たちにとっては

現在がとても大事なものになった

一方

現在とはまさに今この瞬間のことだと

そう思って生きてきた人たちは

そのあまりの永さに

現在を蔑ろにするようになった


“現在”の定義が決まったその世界で

一人一人の歩む速度は変わっても

全体的に見れば何も変わらなかった・・・


そんな中

そもそもからして

「1分も1秒も存在しない」

と考えもなく生きてきた私にとって現在とは

誕生の刻から死の床に就くまでのことであったが為に

私の歩む速度はいつも決まっていた

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