9.変化
僕がその中で存在を保っていられたのは いずれ訪れる変化を前に感覚を閉じたからか
又そうすることが果して永久の愛への渇望をなくすることに繋がるのか
僕はその中でそんな馬鹿なことを考えながら 直に訪れる変化を待っていた
変化は確かに訪れた
様変わりしたと言えるほどのものではなかったが 一瞬間揺らいだ僕の存在がその証明になる気がした
感覚を解いてからも僕はその中で休む間もなく ただひとつのことを真剣に考えなければならなかった
もうこの中では変化が訪れることはない そう思ったから 僕は大事にしていた感覚を手放した
しかし手放した矢先 その後方から何かがこちらに向かってくるのが見えた――変化だった
為す術などあろう筈もなかった
無防備となった僕の存在は 変化の餌食になるしかなかった
永久の愛への渇望をなくするには・・・
そのことについて今の今まで考えていた筈なのに 今にも訪れようとしている変化を目前にして 僕の思考は停止してしまった
と同時に 手放した感覚が変化に触れて一瞬間揺らぐのを見てしまった
その直後から一刻一刻が恐ろしくゆっくりと流れ始めた
と驚いたことに 変化はその流れの合間を 縫うように看過していってしまった――
その後 僕が手放した感覚のことを思い出すことはなかった
また あれから変化が訪れることもなかった
そんな中でも僕は存在を保とうとした
一体何が永久の愛への渇望をなくすることに繋がるのか
僕はもうそんな馬鹿なことでも考えていなければ 存在を保つことが出来なかった
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