夢からの侵略者

平山芙蓉

夢からの侵略者

 この告白を信じてくれる人間がこの世の中にどの程度いるだろうか? 少なくとも私と苦楽を共にしてきた友人、そして私をここまで育ててくれた家族は信じてくれるだろうと盲信してはいるが、地球で生きている何十億という人間は、その辺にいる瘋癲が死の間際に、馬鹿な妄想を書き記した程度のものだと思い込むだろう。私はこの告白を書いている瞬間でさえも、身体を覆う皮の下で、本来持っている人間としての形状のほとんどを拉げさせようと、認知することのできない領域から蝕んでくる、恐怖と剣呑な興奮を併せ持った何かを抑えながらの決死の作業としてこれを書いている。精神が少し図太くあったおかげでこうしてこの何かに、今は私の身体の所有権を略奪されずに済んでいる。だがもしもこれが私以外の人間だったら、悲しいかな知らぬうちに、それも私が今感じているような狂気を伴う苦痛を感じる暇もなく、赤子の手を捻るよりも簡単に肉体を奪い取られていたことだろう。この書き置きが人目に触れられた時、私の身体はとうに私のものではなくなっていて、世を恐怖に陥れる怪異に侵されて跳梁跋扈しているか、もしくは至善に達した人間達によって、母なる地球の土壌に返されている頃合いだろう。もうこれを長い間止めることなどできない。それでも私の意識が遠のいていかない限りは、全身全霊で延伸をさせる肚積もりだ。そして、せめて自分の身に起きたことの全てを刻み、二度とこのような怪異が、我々の世界へ侵入することのないようにするため、手を尽くすよう伝えることしかできない。

 冒頭でも書いたが、この告白を信じてくれなくともよい。ただし、その場合は、我々が何世代にもよって連綿と紡いできたこの惑星が、何処からか来た侵略者によって造作もなく食い尽くされ、あたかも何千年も前からこの惑星を支配していた存在がそのもの達であると、我が物顔をされてしまうことに違いない。それでもいいのであれば、鼻で笑ってからこの手紙を火に焼べてくれてよい。


 さて、そろそろ私の身に起きたこの現象の全てを書き示すことにしよう。人間として残っているのはもうほとんどない。ペンを握れているだけでも、奇跡にも等しいことだ。最初に述べておくと、それの的確な正体が何なのか、私は一切知らない。様々な考古学的資料を用いて調べてみたが、どこの国の文化や伝承、呪術の類にも特徴と一致するものは見つからなかった。それに群としての名前があるかも、個としての名前があるのかもわからない。ただ、私の中を蝕んでいると言ったのでそれの存在が分からないのではないかという疑問が浮かぶかもしれないが、しかしながら、私はそれの全体の容姿や声を、この耳と目と鼻と肌で確かに知っている。いや、今はたしかに残っている脳の五感を司る部分で直接、感じ取ったと叙述する方が如実に語れているかもしれない。

 そんなものと私の起こるはずなかった邂逅が生じてしまったのは、我々の足が着いている現実世界での出来事ではない。あれは厭でも憶えている、夢の世界での出来事だ。やつは忌々しいことに、這いずるように夢の中から来襲してきたのだ。

 始めてそれを目にしたのは、K市にあるK大学文学部にめでたく入学をしてから一ヶ月程度経った日のことだ。当時、日々のレポート課題に追われて、疲労がかなり溜まっている状況が続いていた。夕方までの講義がある日なんてものは、帰ってから夕食と入浴を済ませた後に、パソコンの前に座って課題に勤しんで、就寝時間は大体、午前二時から午前三時になることが多かった。その上、毎日のようにある必修科目は大抵が午前にコマ割りがされていたので、ごく僅かな睡眠時間で大学に行かなければならない日がしょっちゅうあった。加えて、講義中に居眠りをすることなど以ての外で、一度眠ってしまえば理解が追い付かなくなるのは当然だ。なので、常に睡魔と戦いながらも、何とか授業についていこうとしていた。どうしても眠気が抑えられないときはカフェイン剤を摂取して何とか眠気を誤魔化し続けた。ただ、それも所詮はその場凌ぎでしかなかったので、段々とカフェイン剤に対しての耐性が身体の方にできてしまったのか、一度の服用量が弥増すばかりでしかなかった。そのため、効き目のないそのカフェイン剤に加えて、今度は市販されていた安価なドリンク剤にも手を出し始めた。その頃には大学の通学路に新しくできた薬局があったので、カートン単位でそこでしか販売していない「ハイダー」という名のドリンク剤を買い占め、大学のロッカーに常温で置いていた。一つのカートンに二十本入っていたが、それを何度も買っていたために、周りの人間には心配されることも多々あった。


 そうして、安値で買えるハイダーを飲み続けて何日か経った頃、講義が終わった瞬間に急激な睡魔に襲われた。立つことはおろか、眠ってはいけないなどと思考する暇もなく、糸が切れたみたいに机へと打ち付けるように落ちていった。そのまま横向きになった世界がぐるぐると回ると、睡眠の渦の中へと吸い込まれていったが、それはもうほとんど、気絶したと言った方がいい現象だった。

 再び世界が広がった時、私は何が起こったのかを瞬時に察知することができなかった。だが、それでもそこで起こっている現象が変事であるとは解することができた。なぜなら、目の前には異常なくらいに大きな月が、その半身を地平線に隠していて、くすんだ真珠のように緑白の輝きを発していたからだ。月はそんなに出鱈目な大きさのものではないし、スーパームーンと呼ばれる自然現象でさえも、自らをここまで魅せるサーヴィスはしていないだろう、とそのあたりは妙に納得をすることができた。月を遮るものはほとんどなく、唯一あったのは背の低い、名前も知らない木が一本あっただけだった。雑草の生えた地面は柔らかかったが、どうしてか冷たさを感じた。

 しかし、虚構であるとは言えども、ついつい私はそれに見惚れてしまっていて、うっとりしていた。そこにそれが現れたのは、まさにその時だった。風が吹くことが当然のように、木が騒めくのが当然のように、雲が空を横切るのが当然のように、それはそこに現れるのが当然のように、どこからともなく、辺りに広がる月光の影響すら受けない深い闇と寸分違わない色合いをして、月を背景に立っていた。遠目に見れば、人の形にも見えなくはなかったが、そうであってほしいと願うあたりからして、人ならざるものであるのは安易に見当がついた。『それ』に気が付いたことに、向こう側も気が付いたのか、のそりのそりと悠長に歩いてきた姿を見て、さらに私は戦慄した。造次顛沛に骨の髄までもが畏怖するべき対象としてそれを認識して、すぐにでもその場で回れ右をして走り出したい衝動に駆られたが、ここから逃げたとしてもどこにも行く当てがないことを無駄に冷静な自分が囁いていたので、本能を押さえつけて、歯の根が合わぬまま立ち竦んでいた。それは歴とした二足歩行をしているのに、地球上に存在する全ての生物には当て嵌らない姿をしていた。猿が二足歩行をしているところは映像資料などで見たことがあるが、こんな猛獣の全てをかき混ぜた最悪の権化たる存在が、二足であるいてこちらへ向かっているというのがこの眼で見ていることなのに、信じることが一切できないでいた。

 そしてそれは私に向かってくるにつれて、私を食い千切るという明確な殺意を含んだ発狂をした。

 それの声は狼が飢渇の末にやっとのことありついた餌を前にしたときの唸り声に似ていた。何を訴えているのかわからない意味不明の意志を伝えていたように思え、全身が総毛立って収まることがなかった。全体のフォルムは、腐り果てた肉ばかりを食べ続けたせいで、身体を形成する組織の全てさえも爛れ落ちたような、猫背気味のだらしない恰好だった。合わせるように手足は長く、手と思わしきところから伸びる巨大で凶暴なかぎ爪は、便宜上爪と呼んでいると言った方がいいだろう。刀を指先から生やしていると表現すればまさしく言い得て妙だ。目は我々が普段から識別できるような赤色とは全く以って違い、何の変哲もなく生きているのであればただの一度だって生活する中で目にすることはないであろう、どうも名状し難い赤色を帯びたものだった。気が狂いそうになるわりには玲瓏と輝いているようで、そのせいか、瞳孔が全く見えないのにそういった奇天烈な魅力を兼ね備えていた。静謐な心を掻き乱すような、歪で、そのくせ鋭利な歯を、どす黒いカビでも生えているのかと疑いたくなる歯茎から生やしていた。その口から漏れる息は、何十年と溜まった生ごみの臭いなんてものがマシに思えるほどの悪臭で、周囲一帯に広がっていた。どれほどの血肉を食い漁ればそんな臭いが染みつくのだろうと、最低な好奇心に駆られるほどだ。一度その息がかかれば二度とは取れないと確信ができる。

 兎のものと似通った耳を使って私の僅かに漏れる吐息を拾って、大股で近づいてきた。一歩の大きさは大体、人間の一歩よりも二回りほど大きかった。

 全貌がやっと近づいて見えたときに、ようやく私は逃げなければならないと悟った。月光から向かってくるそれに背を向けて走っていったが、伸びてくる影に何度も足が竦みそうになった。暗闇の中へと飛び込むようにして逃げていき、ほとんど等間隔で響動く咆哮が、私を嘲笑している風に聞こえて、人間としての尊厳が傷ついていくことへの恥と、私の心胆を寒からしめるその声が聞こえなくなるところにまで逃げようという意思がぶつかった。私はとにかく生きて元の日常風景に戻ることだけを考えていた。どこに出口があるかも、どういう風にして脱出するのかも、検討の一つも立たなかったが、とにかく闇へと逃げ続けた。

 おおよそそんなことをしていて何十分も経ったところで、急激な眩暈に襲われて、膝から地面へと落ちていった。顔についた泥の冷たさが、生と死の境界を曖昧にしていった。その時私は、こんな何処とも判然としない未知の地で死んで逝くことが、酷く哀しく、そして屈辱的なことのように思え、自然と涙が流れた。そして全身を襲ったのはこの上ない感情を包含した絶望と、孤独で凄惨な死への恐怖で、近づいてくるそれの足音に恐怖しながら、私は目を閉じて臍を固めた。


 しかし、足音は止み、どうしたものかと思って再び私が目を開けたとき、そこにはいつもの教室が広がっていた。机に突っ伏していた頭を上げて、周りの状態をよく見てみれば、誰もおらず、窓からはオレンジ色の夕陽の光が射し込んでいた。どうやら私は意識を失っていて、どうもあれは夢だったのだと結論付けた。身体の方に疲労が溜まっていたので、それが原因であんなおぞましい悪夢に魘われたのだろうと楽観的推考もしてみた。この時はまだ私は、事をこうして楽観視していたので、今となっては思うことすらできない安堵感に入り浸った。今の自分から訴えかけることができるのであれば、そんな考えをするなと言うだろう。

 私はその後、胡乱な頭を首から上に抱えたまま、大学を後にした。大学を出てから、当たり前のように薬局へと寄って、ハイダーを買いこみ、冷えている一本を取り出してからその液体を一気に飲んだ。捌かれてバラバラになっていたような意識が、ドリンク剤のお陰で一つにまとまり、軽快な気分になった。今になって考えてみれば、それこそが私の悪夢の序章に拍車をかけた決定的な事項だったのだ。後悔先に立たずとはよく言うが、まさにその通りであり、こんなことをしなければよかったのだと、この時点でもう私はその悪魔の血液に等しい液体の虜になって、取り返しのつかない領域にまで到達していた。

 その日の夜、私は何本かのドリンク剤を飲んで課題をしていると、昼頃と同じ急激な睡魔に襲われた。さっきまではしっかりと纏まっていた意識は、束ねていた糸が解れるみたいにバラバラになって、またも同じように机に突っ伏すことになった。


 そしてまた、私はあの、月のある場所に立っていた。厭な冷汗が毛穴という毛穴から噴き出て、脳裏に焼き付いた悪心を催すイメージが、這いずるように私の全身の感覚を支配した。感覚を媒介にして外へとできたのか、知らぬ間にそれは私を見つめ立っていた。身体がそれとは逆方向に走り出したときに、狼狽していた脳が遅れて逃げろと言ってきた。それの齎す恐怖は、人間が人間として成り立つために必要な要素などを完全に無視して、それよりももっと根本的基盤に潜在している動物的本能に訴えかけるものだったのだ。

 余裕綽々ともいえる速度で歩いてくるそれに苛立ちを覚えながらも、私はとにかく走った。悍ましいそれは一定の間隔を保っていて、蔽うとしても蔽いきれない殺気がそれにあることが、皮肉なことに唯一の救いだった。恐らく、私が疲れはてて倒れるのを待っているのだ。転倒して恐怖と絶望に顔を歪ませるその瞬間まで、それは私を待っていた。それの掌で踊らされていることが分かっていながらそれでも、足が縺れて転倒することで間抜けな死を迎えることだけは絶対にしないように、意識をしていた。

 私は足を止めることをなく何分も走り続けた。どうして同じ夢を見るのか、という疑問が脳の何グラムかだけ残った、冷静を死守している部分で朧気に考えていた。

 結局その時も、私は意識が朦朧として、さらに膝から地面に倒れる直前まで走り続けた。動悸は激しく、心臓はそれに喰い破られる前に破裂しそうな勢いだったが、どこからか元の現実に戻れるといった、ほとんど証憑のない安心感を抱いた。もちろんそれは目覚めたときにちゃんと自室でいたことによって、立証はされた。

 私はその夢を見始めた頃から、眠ることが怖くて例のハイダーを数本と、一度の服用量を完全に無視したカフェイン剤を一緒に飲んでいた。丸々二日寝ていないときもあった。ふと気を抜いた時にあの睡魔は私を襲った。そしてそんな胡乱になる頭で考えているのは、今日が自分の命日になるかもしれないという、十分にあり得ることだった。そうならなかった時は酷く安心はしたが、食事を摂ることもほとんどせず、ドリンク剤と一緒に買った健康栄養食品だけを食して過ごしたので、体重は数週間で十数キロ程低下した。一度外で倒れたことがあり、あの恐怖に魘されながら目が覚めれば、病院の天井が広がっていた。あの時は本当に気が違いそうになった。私はとうに壊れていた。


 そして、つい二日前に電撃が奔ったように気が付いたのは、全てのことがあのドリンク剤を買ったことから始まっていたということだ。その推理を裏付けるために、私は製造元に記された電話番号に電話を掛けた。だがしかし、そこに繋がることはなかったし、飢餓の影響で覚束ない手元で押し間違えたかもしれないと思い、今度こそはと間違えないように何度も心を用いて電話を掛けたが、その番号に繋がることはなかった。住所に記載されている場所を検索してもみたが、そこはただの住宅街だった。会社のホームページもついでにと見たが、文字化けして狂気に輪をかけるようなもの結果にしかならなかった。ジリジリと鳩尾のあたりから蝕んでくる不安に駆られ、最低限の荷物だけを携えてから家を飛び出してハイダーが唯一売ってあるあの薬局に向かった。

 夢の中で走っているときよりも息も絶え絶えに店内に入って、近くにいた店員に例のドリンク剤について、半ば乱暴に聞いた。すると、そのドリンク剤は仕入れ業者がいつの間にか倉庫に置いてあったものを、新しく開店する記念にと持ってきたものだと言っていた。事実を聞いた途端に、気が遠くなっていくのを感じた。絶望なんて言葉で表現できるほどの感情であったら、どれほどよかったのだろう。私はその場で倒れ込むのを抑えることに、ただただ必死だった。脳には全く関係のない明日と、その遥か先にあったかもしれない希望に満ちた未来のことが浮揚しては、あの嘲笑を現す咆哮をする怪奇の影に、全てを捻りつぶされた。

 私はそのドリンク剤を全て買うと言って、在庫を持ってきてもらったが、もう残りは十本しかなかった。それと気休めに、カフェイン剤を買ってからその日は帰路についた。ふと見上げた空に浮かぶ白い月は、あの場所の月なんかよりも綺麗に思え、ここで見れる最後の姿かもしれないと考えていると自然と涙が頬を伝った。

 そして、私は帰宅してすぐに意識を失った。

 あの月の見える場所で私はあれに追い付かれないようにとにかく逃げ続けた。だが、私は薬局で告げられた絶望と、これに対する恐怖が入り混じって余計なことを考え、気が緩んだせいか、つい足が縺れて転倒してしまった。自分で間抜けな死に方だけはよそうと肝に銘じていたのに、本当に屈辱的だった。間髪入れずにそれは理解したのか、間抜けだという嘲りと、それに加えて欣喜とを綯い交ぜにしたと、理解できずともそうだとわかる咆哮を轟かせた。

 それは変わらぬ歩みの速度で私の前にまでくると、大きな手で私の両腕を掴んでから私の身体を舐めまわすように眺めてきた。その眼は遠目に見たときは、瞳孔がギラギラと光り輝いて見えなかったが近くで見ると、海にできたブルーホールや、地中に続く真っ暗な穴、黒のクレヨンで塗りつぶした黒点のような、そこはかとなく胸騒ぎを生じさせる、奇警な雰囲気を漂わせていた。私はそれに吸い込まれるようなそれに、自分のこれからの運命を察した。いつも自分が惨い死を迎えることになるのかと想像して、声を押し殺して泣きじゃくった日もあったが、それが遂に来たとなると、妙に落ち着き払い、受け入れることにした。

 だが、そんな覚悟をしたことが私の間違いともいえるだろう。あろうことか、私はここで意識が濁ったのだ。それはあの怪奇にあるはずもない慈悲が芽生えたためか、それともただ最後を覚悟した人間がつまらないためか、どちらかはわからない。だからこそ、玄関で目が覚めてから私は取り乱したようにして自室に戻り、眠らないまま、あのドリンク剤を絶やすことなく飲み続けながら、書き置きを書いている。これがもう最後の一本だ。もうこれを飲んだところであと十数分と持たないだろう。奴に掴まれたあとに目をさましたときから、身体の中の感覚が徐々に無くなっていき、蝕まれているのが分かる。ドリンク剤が食道を通る感覚も、胃の中に落ちていく感覚も、もう感じていない。


 あのドリンク剤の原材料ももうわからないが、もしかするとやつの体液か何かの一部だったのかもしれない。そう考えると、虫唾が奔ってしまう。そして、あの月の見える場所は、恐らく地球上のどこにも存在しない、異星の風景なのだと推考している。だがそうなると、どのようにしてそれを地球にまで送り、どのようにして広めたのかという疑問だけが残るが、どちらにしてもそれを知る時間は私には残されていない。だが、この書き置きを読み、勇猛な意思が充溢した、人類の存続を何としてでも固守する人間がこの夢からの侵略者を破滅させて、その正体を暴くことを切に願う。私はどうやらここまでだ。家族にも友人にも、本当に申し訳ないことだと思う。しかし、私の死を乗り越えて、必ず生き長らえてくれるようにここに書き記しておく。

 ああ、意識が遠のいていく。

 奴の声が聞こえる気がする。

 奴の目が私を見ている気がする。

 奴の放つ不快極まりない悪臭が鼻を衝く気がする。

 夢に隠れしあの侵略者が、現実までも蝕んでくる。

 それをひしひしと感じなければならないのが辛い。

 嫌だ。

 受け入れたくない。

 死にたくない。

 死にたくない。

 死にたくない。

 死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にた————

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