【第3話】 三日後、巨大隕石が地球に直撃か…
ここは異世界アルファザード(惑星アルファザード)の空中神殿。
オレと3人の女神たちは、神殿内部から地球のトラック事故現場を
『千里眼』で視ていた。
『強制転移』の際、どうやらオレは写真付きの生徒手帳が入ったバッグを
落としてきてしまったらしく、今まさにトラックの運転手がそのバッグに
気付いて拾い上げているところだった。
このまま中の生徒手帳を見られるのはマズイ!
この事故を『はじめからなかったことにする』為、オレはとっさに
スキル『現実改変』を使っていた。
「 『 現実改変 』!!
このトラック事故自体をなかったことにするっ!! 」
オレがスキルを発動した瞬間、事故現場周辺が一瞬光ったかと思うと、
次の瞬間には店のシャッターを突き破っていたはずのトラックは消え、
トラックの運転手も警官も野次馬も消えて、シャッターも壊れる前の状態に
戻っていた。
そして、オレの頭の中に、新たな記憶が流れ込んでくる。
『現実改変』を使用した場合、改変された現実との矛盾が生じないように、
適宜、自動修正が入る。
そして、どのように修正されたのかが新たな記憶として流れ込んでくるのだ。
ふむ…その新たな記憶によると…オレは、
『ヒーリス達から異世界アルファザードを救って欲しいとテレパシーで
相談・依頼されて、その依頼に応じて、ここアルファザードに転移された。
で、転移の際に創造主だった記憶が戻った。』
…ということになったらしい。
本来、オレはトラック事故がきっかけで、ここアルファザードに召喚
されたのだが、そのトラック事故自体が『現実改変』により
なかったことになったので、整合性をとる為、このように改変されたようだ。
ちなみに、『現実改変』で『最初からなかった』ことにした場合、
オレ以外の者の記憶は改変される。
人間に転生した状態で『現実改変』を使用したのは今回がはじめてだ。
スキルが正常に働いているか、念の為、目の前の3人の女神たちにも
確認してみるか…。
「なぁ…ちょっと変なこと聞くようだけど、オレって、なんでここに
召喚されたんだっけ…?」
すると、ヒーリスは心配そうな…やや怪訝な表情で、
「えっ…? それは…
『魔王を倒しうるくらい潜在能力の高い少年を探して、
テレパシーでご助力をお願いして、転移魔法でこちらに召喚したら、
その少年の正体がたまたま創造主様だった』
…と言ったところですが…。」
と、返答してきた。
アイネも同様に、
「創造主様、また記憶喪失…? 大丈夫…?」(ボソッ)
と、心配そうな…やや怪訝な表情で返してくる。
ファイナにいたっては、
「いやだなぁ~…しかっりして欲しいっスね~創造主様っ♪」
と、笑いながらオレの背中をバンバン叩いてきた…。
いやいやいや…なんかオレが『記憶喪失の物忘れひどい人』みたいな扱いに
なってるけど、逆だからな?
オマエ達の方がトラック事故のことを忘れてるんだからな?
…まぁ、スキル『現実改変』は正常に作用しているようで、それは結構な
ことではあるのだが、オレが『物忘れひどい人』みたいな扱いになってるのは、
正直、面白くない。
しょうがない…もう一回、『現実改変』を使って…
「 『 現実改変 』!!
目の前の女神たち3人は、先ほどのトラック事故のことを思い出す!! 」
すると、オレや女神たちの周囲が一瞬光ったかと思うと、次の瞬間…
「「「あっ…!!!」」」
っと、女神たち3人は同時に声をあげた。
どうやら、自分たちがトラック事故のことを忘れていたということを
思い出したようだ。
「あぁ…申し訳ございませんっ…!! そうでした!
創造主様がトラック事故を『現実改変』で、なかったことにしていたん
ですよねっ…」
「思い…だした…」(ボソッ)
「いや~…な~んか変だなぁ~…とは思ってたんスよ~…」
嘘つけ…オマエ、全然、そんなこと感じてなかっただろ… (^_^;)
まぁ、こんな感じで、スキル『現実改変』は最強クラスのスキルのひとつでは
あるが、『〇〇を最初からなかったことにする』という使い方をした場合、
『オレ以外の全ての者の記憶まで改変されてしまう』という特徴がある。
敵味方問わずに…だ。
その為、味方にだけ『現実改変』前の記憶も思い出させたい場合は、
今回のように、『△△は〇〇のことを思い出す』というように、
再度『現実改変』を使ってやらなければならないのだ。
大した短所ではないものの、地味に面倒くさくはある…。
「まぁ、これでトラック事故も片付いたわけだ…。
じゃあ、オレは早速、冒険の準備に入…」
と言いかけたところで、オレの額のあたりに『キュピーン!』と閃光が走った!!
俗に言う、『第六感』というやつだ。
オレの第六感が告げている…何かとてつもなく巨大なモノが地球に向かって
飛来していると…。
とりあえず、再度、『千里眼』で地球を視てみる。
先ほどは、トラック事故の現場にズームインした状態で視ていたが、
今度は思いっきりズームアウトした状態で視ている。
地球と月が一緒に映るくらいズームアウトした状態で視てみると…
視界に何か石ころのようなモノが映った。
今度は、その石ころのようなモノにズームインしてみると…
それは巨大な隕石であることがわかった。
オレは科学の分野はよくわからないが、もし、これが地球に激突したら、
おそらく、ほとんどの生物は滅亡するだろう。
(生き残るのは、Gだけかもしれない…)
「…? 創造主様…? また、何か『千里眼』で視ていらっしゃるのですか…?」
ヒーリスが話しかけてくる。
「あぁ…。 オマエ達も『千里眼』で地球をズームアウトした状態で視てみろ。」
そして、3人もオレにならって『千里眼』を使った。
「「「あっ…!?」」」
3人、同時に声をあげる。
「これは…」
「巨大隕石…?」(ボソッ)
「うわ~…これ、もし地球に直撃しちゃったらヤバくないっスか~?」
たしかに、これが地球に直撃したらヤバそうだ。
そこで、オレは…
「 スキル『未来視!』 」
オレがこの巨大隕石に関与しなかった場合、この巨大隕石がどうなるのかを
予見してみた。
(そのまま太陽系の外にまで通り過ぎてくれればいいのだが…)
オレの頭の中に、巨大隕石の予測(予知)軌道が早送り状態で再生されはじめた。
例えるなら、テレビの録画を超高速で早送りしているような状態だ。
…と、その映像の冒頭、地球の方から1000発ものミサイルが巨大隕石めがけて
飛んでいくのが視えた。
どうやら、NASAや大国の宇宙・航空部門はこの巨大隕石の存在に気が付いており、
核ミサイルを撃ち込んで巨大隕石の破壊を試みたようだった。
しかし、結局、破壊することはかなわず、三日後、この巨大隕石は地球に直撃
してしまうようだ。
(ただし、これは、オレが巨大隕石に関与しなかった場合の話だ。)
オレは女神たち3人に告げる。
「今、『未来視』でみたところ、三日後に地球に直撃するようだ。」
だが、3人とも慌てている様子はない。
これは別に3人が『異世界(他の星)のことなんてどうでもいい』と考えている
薄情者というわけではない。
オレ=創造主にとっては、巨大隕石を消すことなんて、道端の小石をどかすのと
大差ないということがわかっているからだ。
「そうですか。 では、また『現実改変』で…?」
「『現実改変』で隕石瞬殺…」(ボソッ)
「んじゃ、『現実改変』でチャチャッと消しちゃって下さいよっ♪」
…というように、3人ともオレが『現実改変』で巨大隕石をなかったことにする、
と考えているようだ。
しかし、オレは…
「いや…『現実改変』は使わないでおく。
この人間・春埼隆人の身体(からだ)で他のスキルも正常に使用できるのか、
その巨大隕石相手に色々試してみようと思う。」
「なるほど~…巨大隕石を実験台にってことっスね?」
「まぁな……
それに、オマエらって忘れっぽいから、オレが『現実改変』使うと
すぐ物忘れしちゃうじゃん?」
さっき、『物忘れひどい人』みたいな扱いされたので、お返しに
チクリと言い返してみた。
すると、3人は抗議の声をあげる。
「えぇ~…? それは仕方がないかと思いますが…。
創造主様の『現実改変』は、基本的に創造主様ご本人以外の全て者の記憶を
改変されるわけですから…。
我々の記憶も改変さてしまうのも、いたしかたないかと…。」
「これは物忘れとは違うと思う…」(ボソッ)
「いやいやいや…それは、しゃーないと思うっスよ…?」
「まぁ、物忘れ云々ってのは冗談だ。
けど、オレが今回『現実改変』を使わないつもりってのは本当だ。
さっきも言ったけど、人間・春埼隆人の身体で、
巨大隕石を相手に、色々なスキルを試してみようと思う。」
さて、冗談や軽口はこのくらいにして…
「 まぁ、そんなわけで、
ちょっくら巨大隕石に乗り込んで、ぶっ壊してくるから。 」
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