めるへんぱわー、せっとあっぷ!
ツリーハウスに戻ると、早速呪いの装備を脱ぎ捨てた。パンイチ少女参上! いや、ブラも着けてるけど。
すぐに出掛ける予定も無いので、とりあえずデフォルトに設定していたコスチュームセットにセットアップ!
クローゼットには10種類のコーデを登録できた。デフォルトに設定していたのは金髪碧眼、ロココ調の赤いのベルベットドレス。レースのフリフリ付き。
超可愛い! お人形さんみたい! ビスクドールよりは、現代風のドールをイメージしてるんだ。
私はアンティークドールも嫌いじゃないけど、現代風のドールの方が好き。顔立ちが日本人好みなんだよね。洋服も可愛いし。
でも高くて買えないから、スマホで画像を眺めるだけ。私の家、メチャシンプルだったから、その分ブルーベル・フォレストに給料と熱いパトスを注ぎ込んでたんだ。
ゲームでは設定済みのコーデは、アイコンをタップするだけで衣装チェンジできたけど、同じ様にできないかなと思っていたら、脳内仮想ディスプレイが表示された。
ついタップするように手を動かしちゃうけど、仮想なのでスカッとすり抜ける。でもちゃんとコーデが選択されて、アイコンと私自身が輝くと、私の姿は金髪ロココ・みるくへと替わっていた。
「手を動かしたら、変身したの! 魔法少女なの!」
は、恥ずかしい。意味のないスカッただけの手の動きを見られてしまった。でも、髪も目の色も一瞬で変わる変身って感じで楽しい。
「これ、楽しい! そしてドレス可愛い! 細かい刺繍とかレースとか凄い綺麗。特に特殊能力も無いのにエクストラだっただけのことはあるね!」
そう、このドレスはただ可愛いだけ、可愛いだけなの。でも実物になると着心地も触り心地も良いし、絵で見るより更に可愛くて最高!
金髪碧眼に可愛いドレス! ステキ! 転移してきて良かった!
私が全身整形したってこんなに完璧な可愛さにはならない。幼さと女性らしさを、可愛さと美しさを絶妙なバランスで成り立たせている。絵師さん天才過ぎじゃない?
う、嬉しすぎる。こんな綺麗な肌で、こんな綺麗な瞳。不健康に色が白くて、返って目のクマが目立っていたのをファンデーションで隠していた私とは全然違う。
こ、これは、あれじゃない? あれ、やっちゃう? でもでも、それはさすがに痛いかな。
でも女子の夢だもんね、やっちゃうよ!
私はコーデの内でも特にお気に入りのアイコンをタップするように手をかざした。
「セットアップ!」
いや、そんな呪文ないよ? いいじゃんか、言いたかったの! 美少女戦士も決めゼリフ言うじゃない! 手をかざすのも変身ポーズみたいで良いじゃない!
私は光に包まれ、その光が治まるとそこにはお姫様がいた。
「きゃっふーっ! やったー! お姫様だー! 金髪碧眼の、シンデレラみたい!」
そう、女の子はいくつになってもお姫様に憧れるものなの。私今12歳だから仕方ないの。
このコーデは小悪魔コーデよりも更にお金が掛かっている。その名もプリンセスコーデ。そのままだけど。
出現率が異様に低くて、ウェディングドレスで代用してたんだけど、諦めきれなくてボーナスを全てつぎ込むことになってしまった。
「ああ、ステキ。このティアラにいくらつぎ込んだことか」
純白のプリンセスドレスはウェディングに近いけど、ダイヤモンドやパールがふんだんに使われ、アクセントにルビーが散りばめられている。しかもこれ、オフショルダーバージョンとビスチェタイプがある。プリンセスなのにデコルテを出すのはどうなのとは思わなくもないけど、現代のプリンセスはデコルテも出しちゃうの!
今はビスチェタイプ。お胸が見えちゃいそう。
合わせてグローブも透けないサテングローブ、ちょっと透けてるオーガンジーグローブ、指輪がキラリのフィンガーレスグローブと色々あるけど、どうしても指輪がキラリしたかったので刺繍の美しいフィンガーレス。
指輪はドレスとのセットアップじゃないんだけど、これもまた色々あるの。このコーデに着けているのは大粒のピンクダイヤ。コレに合わせた宝飾品セットアップがあって、イヤリング、ネックレス、ティアラがある。
ドレスセットと宝飾品セットはセットアップ効果も別の扱いなんだけど、どちらもプリンセスフェア限定モデルの、ガチプリンセスコーデ。
プリンセスフェアは何度かあって、毎回ドレスのデザインが変わる。シルエットもそうだし、刺繍やレース、色も違う。何度給料とボーナスを巻き上げれば気が済むんだ!
しかしその甲斐あって、特にネックレスとティアラの美しさが半端ない。スマホじゃ可愛いだけだったけど、現実はヤバい。
「ああ、ステキ! 凄いわ!」
くるくる回ると裾がふわっと持ち上がってとても可愛い。
「クルミがお姫様になっちゃったの!」
「これ、凄いね、神コーデなんですけど! もう、特殊効果とかどうでもいいや! 可愛いは正義! 大正義クルミなのです!」
た、楽しすぎる。異世界転移最高。現実だったらこの宝石、一体何億するんだろう。はぁ、もう私この世界で永住してもいい!
「わおん!」
くるくる回るクルミちゃんの周りを更に廻るシロ。ふふふっ、舞踏会ですわ!
「これ凄すぎるから、クルミちゃんの真なる姿っていう設定にしよう。誰にも見せられないけど」
ふふふ、クルミはまだ変身を7回残しているぞ。
作業着コーデはわざわざセットしてない。あんまり可愛くないし。コーデは元々可愛さだけで設定してるから、これからは実用性で設定し直さないと。もちろんプリンセスコーデは真なる姿だから置いておくよ?
コックさんコーデは結構多用しそうだけど、コックコートとシェフハットだけだから、一枠使うのはもったいない。
「ああ、楽しかった! 汚れないように着替えよう。まぁ、汚れないんだけどさ」
堪能したのでロココ・クルミに戻る。銀髪で街に行っちゃったから、金髪自体真なる姿として楽しむだけにしよう。
デフォルトをコピーして真なる姿シリーズが三つになった。えっ? 後一つ? もちろんプリンセスコーデ別バージョンだよ? いやオフショルダーはまた宝石も全とっかえで別バージョンに決まってるでしょ? あっ、銀髪でも楽しみたいから、こっちは銀髪金眼に替えておこう。興奮しすぎて鼻血でそう。
元々は他に淡いブルーのドレスセットとかピンクのドレスセットとか入れてたんだけど、実用性のために変更しないとね。
小悪魔コーデとハンティングコーデとかは実用的だし、他は何が良いのか分からないから思い付いたら随時変更しよう。
「楽しすぎて遊んじゃうから、髪と目の色は銀と金に戻して…ああっ、可愛い! 銀髪金眼でもロココは可愛すぎる!」
可愛いなぁ。銀髪は私の中ではゴスロリだったんだよね。でもピンクの甘ロリもやってみよう。いつも普通に脱いで着てたけど、試しに服に触れながら念じると服の交換も自動でできた。すぼらじゃないの! ドレスは脱着が大変なの!
「ああ、ピンクも素敵すぎ。スクショ、スクショ!」
カシャッ!
「あっ、本当に撮れた。ちゃんと前のアルバムも残ってる!」
脳内だけどね。このスクショ、システムじゃなくて私の妄想だったらどうしよう。い、いや、コーデチェンジとかできるんだし、システム、システム!
ブルーベル・フォレストでは可愛いコーデをSNSにアップしたり、ハロウィンパーティーみたいなイベントの記念写真とか用にカメラ機能がついている。
ネットに上げるとかの外部ソフトを使うときは単なるJPGだけど、ゲーム内のアルバムは、言わば3D GIFみたいな感じ。まあ、そんな規格ないんだけどね。GIFみたいにアニメーションするんだけど、グリグリアングルを変えられるんだ。もちろん普通の静止画も撮れるよ。
はっ、もしやパンツが妙に充実してるのは、アングルを変えてパンツを覗くヤツがいるからか!
ぜ、全然気付かなかった。
デフォルトじゃなくて可愛いパンツを履くべきか。いや、何故見せてあげる前提で選ぶんだ。ちょっと動転してた。
ハロウィンパーティー行く前にこっちに来ちゃったんだよね。残念だったけど、パンツ見られるよりいいか。ん? もちろんゲーム内のパーティーだよ? パリピじゃないよ?
今度セリスとシャーリーとパーティーしよう。クリスマスみたいなのはあるのかな。
あっ、忘れてた! 手紙書くの忘れてたよ。
レターセットは季節物にしたいけど、今って秋なのかなぁ。日本は秋だったけど。そもそも四季があるのか知らないから、季節物はやめて、定番のお花柄にしよう。
「手紙書くのって久々だなぁ。お礼状も宛名ソフトで作ってたから、手書きなんて学生の時以来かも。
えーと、拝啓 森の木々も赤く色づき…、しまった、日本式に時候の挨拶入れちゃった。やり直しやり直し。メール感覚にしとこう」
『やっほー! クルミだよ!
美味しいカボチャプリンとタルトタタンを用意して待ってるからねー!』
いつの間にか綺麗な鳥が、私の手紙を覗き込んでいました。
「鳥さん、鳥さん、あなたの美しい翼で、私のお手紙運んでくださいな」
鳥さんは、分かったとばかりにクルルと鳴くと、私の手紙を咥えて飛んで行きました。
少女は手を振って見送り、鳥さんが無事に手紙を届けてくれるように祈りました。
はっ、またメルヘンに当てられて童話な少女になってしまった。
メルヘンなこの家ににずっといると、私自身がメルヘン童話少女か、本当に妖精になってしまいそう。それで挨拶が『めるへん!』になるんだ。いや、語尾が『めるへん』なのかもしれないめるへん。
ハロウィンコスのハズレというかノーマル品に、何の効果もない妖精コスもあったんだけど、あれを着るとヤバいことが起きる気がするぞ。めるへんの呪いが降りかかるに違いないめるへん!
あれ、ミニスカビスチェで可愛いんだけど、私の中で妖精さんは、もっと小さいものなの。なんかそそられないのよね。外人さんのティンカーベルのコスプレみたいな感じ。あれは小さい子供、5歳までじゃないとシックリ来ないかな。
あれは元々着る気も無かったから、デッドストックだ。着たら森中の野生の妖精がやってきて、メルヘン祭りになりそう。
あっ、これも忘れてたんだけど、衣装をインベントリに入れられるかやってみないと。
結果入りました。
でもインベントリとクローゼットってどっちが安心かというと微妙。盗難は怖いけど、このシステム自体がなんの保証もないから、いつインベントリごと消えるかもしれないと思うとこれも不安なの。
だって私のスキルにインベントリとかアイテムボックスとか無いんだもん。だから、数着の二級品だけ入れておいた。あの夢のようなプリンセスコーデが消えてしまったら、私は精神的に死ぬ。金庫にでも入れておきたい。
プリンセスコーデにも私の中で二級品があるので、それは入れておいた。メルヘンパワーで突然王子様からパーティーにお呼ばれするかもしれませんしね、おほほっ。
ハンティングコーデの余りも入れておいた。ハンティングコーデだと弓とか使えるからね。
コックコートは余ってるから入れておく。セリスの家でお料理するかもしれないし。ナースもダブリが余ってるので入れておいた。私元々看護師なので、ナース服なんて仕事を思い出すだけで、テンション上がらないんだけど、貴重な回復スキルがあるからね。
そうそう、ブルーベル・フォレストってガチャがダブるんだよね。でも、ちょっとだけ良心的なのが、服でもアクセサリーでもリフォームできるんだ。リフォーム屋さんの村人のところへ持って行くと、ゲームマネーで色とかちょっとしたフリルの変更とかしてくれる。
このカスタムができることで、ファッションゲーム要素が増して、女性達の課金が促進されていた。
公式でファッションショーイベントとか、ミスコンイベントとかがあって、魅惑のカスタムコーデ大会になって非常に盛り上がる。
顔パーツはゲーム開始時はドラッグしたりすると多少変形させられるので、色んな顔の人が居る。
そもそも人間じゃないクマさんとかの動物で始める人もいるし、ネコ耳の獣人さんもいた。色々いるからミスコンも楽しい。
まあ、やっぱりデザイナーが最上級アイテムとして設定しているものを越えることは難しい。デフォルトに黒子だけつけて個性付けしてる人もいる。泣きボクロとか人気。
私はもちろん限定品の最高級フェイスですよ。カスタムなんて絵師様を汚すような行為はしませんよ。小物や洋服は多少カスタムしたけどね。
ええと、あとは何を入れておこうかな。
小悪魔コーデ?
小悪魔コーデを入れるなんてとんでもない! でも似たようなのないんだよね。天使コーデも高かったから入れたくないし。
嫌な予感がする妖精コーデはインベントリに封印しておこう。これも意外と飛べるかもしれない。そんな機能なかったけど。
街で違和感のないワンピースなんかもあった方が良いね。普通のワンピースなんて、ゲームではハズレも良いところで、ビギナーしか着ていない。カスタムしたけどタンスの肥やしってやつ。
ゲームの仕様にはなかったけど、インベントリの衣装もコーデセットが設定できるようになってた。髪とか眼の色は替えられないみたいだけど。
「とりあえず、これくらいかな」
正直戦力としては心許ないけど、戦力になりそうなのはハンティングコーデと小悪魔コーデくらいなので仕方ない。
箱庭ゲームで何と戦うというのか。メチャクチャほのぼのしてたのに。まあ、村を襲う大きなクマと戦う期間限定イベントはあったけど。クマの住人居るのにそれは良いのか?
これレイドバトルなんだよ。無駄に凝ってるよね。ハンターがいっぱい来て撃ちまくるの。
MMORPGなレイドバトルじゃなくて、プレイヤーにHPとかないんだけど、ダメージを受けると服が破れたりでコスチュームが壊れるの。通称、猟友会イベ。
討伐報酬はクマの着ぐるみ。可愛いタイプのやつ。
これ、やってるときは何も考えてなかったけど、リアルに考えると熊を殺して皮を剥いで着ぐるみにするんだよね。ガチのマタギじゃない。猟友会イベ、恐っ。
「バードが帰ってきたの!」
ココの言葉に目をやると、お利口さんな伝書バードが返事を持って帰ってきていた。
「良かった。返事は持って来れないかもって思ってたよ」
手紙は二通あって、ちゃんと二人のところへ廻ってくれたみたい。お礼に頭をナデナデしておく。マナあげられてるかな?
手紙は、シンプルな白い封筒にシーリングスタンプが捺(お)されている。
「カッコいい! 私もシーリングスタンプほしいなぁ。後で作業着で作っちゃおうかな」
『明日は森で採集するの。一緒に行かない? セリス』
『明日ならお休みなのですが、ご都合如何でしょうか シャーリー』
ほうほう、二人とも早く美味しい物が食べたいのですね? 良いですとも! 私ニートみたいなもんだから、いつでも良いよ!
お返事を送ると二人で待ち合わせて森に来ることになった。シロと一緒に森の入り口までお迎えに行こう。
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