第14話 真相

数日後、今、俺はプリシアも使っている魔法学校の前にいる。

様々な生徒が通り過ぎていくが誰一人として俺に気づくことはない。

それもそのはずで、俺は今透明化及び気配消しの魔法を使っている。

結局能力に頼っているのだが、この程度はよしとしている。

そんな曖昧でいいのかとも思うのだが、今は気にしないことにする。

(出てきたか)

件の金髪の少女と黒髪の少女が出てくる。

二人一緒のようだ。

「エルナ、久しぶりにあそこに寄ろうよ」

「そうだね、ルルエル。報告したいこともあるしね」

なるほど。金髪の少女はルルエル、黒髪の少女はエルナという名前なのか。

二人は談笑しつつ、住宅街に行くようだ。

その顔はこの前プリシアを苦しめたことなどみじんも感じさせない顔だ。

二人にとってはその程度の出来事だったのだろうか。

あれからプリシアの顔は見ていない。まだ苦しんでいるのだろう。

そうだというのに二人は暢気なものだ。


(何か気にしているな)

住宅街に入ってしばらくたつと二人は周囲を警戒しながら歩き始める。

非常に怪しい動きだ。

正直尾行で何かわかるとは思ってもいなかったのだが、もしかしたら初日から何かつかめるかもしれない。

二人はとある建物の前で止まり、あたりに誰もいないか確認しながら建物に入る。

(どうするべきか……)

建物に入るのには流石にためらいが生じる。

相当なプライベートに踏み込むであろうことは予想される。

誰かの自宅かもしれない。そうなれば二人だけではなく、他の人間のプライベートも侵害することになる。

しかし、今更な事でもある。もう尾行をしている時点で恥も外聞もない。

そう考え自分も建物の中に入る。


建物に入ると二人が地下に向かっているのが見える。

後についていくように自分も地下へ行く。

地下に行くと開けた場所に出た。

そこは礼拝堂のように見える。そして、礼拝堂の壁にはあるシンボルが飾られていた。

(これはまさか、ウィクス神教のシンボル……)

ウィクス神教。ウィクスの森に住んでいる神を崇める宗教だ。

要するに俺を神格化した宗教なわけだ。

ウィクス神教の信仰は国が定めた法律で禁止されている。

恐らくこのように隠れたところにあるのは国に見つかりたくないからだろう。

二人はこんな形で自分とかかわっていたのか。


二人に目を向けると白い衣装をまとった男性の老人に話しかけるところだった。

「神父様、今日はお話したいことがあります」

「何かねルルエル、エルナ話したまえ」

ルルエルが自分が話すとエルナに伝える

「先日ウィクス様に取り入る虫を追い払ってきました」

「どういうことかね」

疑問符を浮かべる神父。それに対して二人の目は輝いていた。

「プリシアという女が、ウィクス様に近づいていたんです。あれはウィクス様を惑わすために違いありません。なので二度と近づかないように手を下しました。」

「なにを……したんだね」

「ウィクス様に二度と会いたくないように仕向けただけです。決して命はとっていません。ウィクス様のためになることをしました。褒めていただけますか?」

神父は顔をゆがめる。

「褒めることはできない。君たちは良くないことをした」

「何故ですか。私たちはウィクス様のことを思って……」

神父が諭すように口を開く。

「いいかい。我々教徒はウィクス様には関わってはいけない。それは言ってあるだろう。だから、ウィクス様の周りのことにも影響を与えてはいけないんだ。そういった出来事はウィクス様本人が決めることだ」

「そんな……そんなこと……ウィクス様の未来を思ってこその行動です!」

ルルエルは声を荒げる。隣にいるエルナも神父に目で訴えかけている。

「君たちはウィクス様のためになると思っているかもしれないが、良いか悪いかはウィクス様が決めることなんだよ。もしかしたら君たちの行動でウィクス様の未来は良い方向に行ったかもしれない。でもそうでないかもしれない。だから我々は不用意に関わってはいけない」

「…………」

「良い子ならこのことを心にとめておきなさい。そして、その娘に謝ることを私は勧めるよ」

「……はい」

返事はしたもののルルエルとエルナは全く納得していないようだ。そういう顔をしている。

「失礼します……」

二人は意気消沈し、礼拝を去り、階段を上がっていく。


どうやらこれが真相だったようだ。

二人は決してプリシアをいじめることが目的だったのではない。

俺からプリシアを引き離すための行動だった。

これはプリシアの問題ではなく、俺の問題だったのだ。

(そうか、そうだったのか。これは俺自身が解決するべき問題だったんだな)

俺は決意を胸に秘める。

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