第12話 困惑

「今戻りました」

「遅かったな」

一度店に戻らなければと思い、帰ってくる。

「プリシアさんだっけ? あの子は?」

「先に帰りました」

「そうか。しかし……顔色悪いな。何かあったのか」

ライドさんが心配そうにこちらに話しかけてくる。

「いえ、その……大丈夫です」

「……俺はいつでも相談に乗るぞ。話したくなったら言ってくれ」

ライドさんは何かあったのだとわかっているようだ。

恐らく顔に出ているのだろう。声も落ち込んでいるのがわかるに違いない。

「後片付けはこっちでやるから、帰りな。というか後片付けはもうほとんど済んじまってるんだ」

「……はい。お言葉に甘えさせていただきます」

頭を下げる。

「お先に失礼します」

「気を付けて帰れよな」

「はい」

そう言って店から出る。

即座にウィクスの森の前に転移する。


森の前までくる。

何も考えずに、いや考えられずに家のポストを開ける。

「何も入っていない……」

いつもなら誰かからの差し入れが入っているのだが、今日は入っていない。

こういう時は差し入れで気を紛らわせようと考えたのだが、そうはいかないようだ。

「何かあったのかな」

一日入っていなかっただけだというのにこう考えてしまう。

単に忙しかったのかもしれないし、入れるのに飽きただけかもしれない。

だというのに、落ち込んだ気分である今は悪い考えの方が先に浮かんでしまう。

そんな落ち込んだ気分のまま、家に入る。

「お帰りなさい」

「……あぁ」

ホムンクルスであるムイが挨拶をしてくれるがまともに返事ができなかった。

そのまま自分の寝室に入り、ベッドに横たわる。

「…………」

情けなかった。自分が。

能力を使えば、何とでもできたはずだ。

いいや、能力を使わずとももっと良い方法があっただろう。

何もできなかった。いいや、何もしなかった。

どれだけの強い力を持っていても、強い意志がなければ意味がない。

改めてそう思い知らされた。

「このままじゃ駄目だよな」

しかし、今はどう頑張っても何も思いつかない。

ただ、時間だけが過ぎていく。


翌日


俺は今レストランにいる。

レストランと言ってもそう改まったものでもない。

酒場に近い感じのレストランだ。

人々が大きな声で談笑する。そういう場所だ。

酒もあるので酔っている人も少なからずいるが、未成年でも問題はない店だ。

一応未成年ということになっているので、酒は飲まない。

軽食を済ませた後、コーヒーを飲んで休憩をしている。

しかし、昨日のことが未だに整理がつかない。

何かすべきなのか、何もすべきではないのか、わからない。


「ノガミさんじゃないですか」

「ん?」

聞き覚えのある声に呼び掛けられる。

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