第11話 悲憤

「で、話って?」

あまり人が来ないようなところで、話を始める。

「その……ですね……」

「うん」

プリシアから話の内容を聞き出そうとする。

「私……その……」

プリシアが口ごもる。

「私!ノガミさんのことが好きなんです!」

「…………」

思ってもいなかった答えに沈黙してしまう。

「その……あの……前から好きで……」

「…………」

違和感を覚える。俺のことが好きだという所だけではなく、何かおかしい。

彼女の、プリシアの青ざめた表情が不安を感じさせる。

「だから……つき……あっ……うっうう」

突然泣き出してしまうプリシア。

「一体……何が……」


とその時、死角から金髪の少女と黒髪の少女が出てくる

「じゃじゃーん」

「ドッキリでしたー」

「「あっはっはっはっはっ」」

言葉を発したかと思うと笑い出す二人。

「ごめんなさいっ……!」

泣きながら言葉を発すると、走りだし去ってしまうプリシア。

「プリシア!……っ!」

プリシアを追いかけようとすると二人の少女が立ちはだかる。

「お前たち……一体何なんだ」

その言動に対し、明確に敵意を向けてしまう。顔も険しくなる。

「あの子……プリシアとの学校の同級生ですよ」

金髪の少女が口を開く。

確かに二人はプリシアと同年齢程度の見た目をしている。

「それで……何なんだこれは」

「何って、ドッキリだって言ったじゃないですか」

金髪の少女が少し呆れた顔をして言う。

「ドッキリなんですよ。プリシアと打ち合わせをした上での」

「ドッキリであそこまで泣くのか?」

明らかな違和感を覚えつつ言葉を発する。

「そうですね。ドッキリですけど罰ゲームにも近いんですよ。だから泣いちゃったのかな。そこまで気にすることないのに」

「不愉快だな。このドッキリも。プリシアを泣かせたことも」

不快感をあらわにする俺。

「このどっきりも合意の上ですから。私たち」

「そんな訳……っ!」

俺は思考した。ここで心を読めば相手が嘘をついてるかどうかすぐにわかると。

しかし、それはしたくない。俺の信条が許さないのだ。

他人の感情を読むこと。他人の感情を強制的に動かすこと。他人の感情を誘導すること。

それに準ずる行為、全てをしないと。

ただ、これは逃げなのかもしれない。

いいや、そうなのだろう。

怖い。自分の能力によって他人に与える影響が。

だから、こんな状況でさえ能力を使うことを拒否しているのだ。

「どうかしました?」

金髪の少女がこちらに話しかけてくる。

「君たちと話をしていても、らちが明かない。行かせてもらう」

「待ってくださいよ」

少女が呼び止めるが構わない。

プリシアの場所を感知し、その場へワープする。


プリシアが街の片隅で泣いていた。

「大丈夫?」

泣いているプリシアに話をかける。

「…………っ」

プリシアは一瞬こちらを見るが、泣いたまま顔をそむける。

「何か困っているんだったら相談……」

「今は……今は放っておいてください……」

言葉の途中でプリシアに拒否されてしまう。

「ごめんなさい……私の問題ですから……私で何とかしますので……」

そう言うと駆け出し、向こうへと消えていく。

俺は何もできずにただその場へ立ち尽くす。

「俺は……俺はどうしたらいい……」

その言葉は虚空へと消える。

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