第10話 不穏
魔物討伐から幾日がたった。
相変わらずの平穏な日常だ。
しかし、この日はそうではなかったのだ。
俺はいつも通り雑貨屋の店番をしていた。
そうしているとドアが開き、
「お邪魔しまーす」
「ああ、アリスか」
アリスがドアの向こうから出てくる。
「この前魔物を討伐しただろ?」
「あぁ、アリスとマナブで倒した奴だな」
アリスが意気揚々と話しかけてくる。
「それでさ、討伐した証しとして勲章と褒賞金が出たんだよ」
「良かったじゃないか」
「マナブも貰ったんだけどさ、ほらその勲章」
国のエンブレムがあしらってある金色の勲章。
これがアリスとマナブがブラックソウルナイトを倒した証しというわけだ。
「いやぁ、あれから何日かたったけど今でも高揚感があるね」
実際に嬉しいのだろう。顔に出ている。
「そうそう。褒賞金が出たからさ」
とアリスが思い出したように言ってくる。
「あぁ」
うなずき返すと、
「今度おごって欲しいなって」
とアリスがとんでもないことを言う。
「こっちがおごるのかよ。おかしくないか?」
「ウソだよ。ウソウソ。今度何か買って渡すよ」
アリスが笑いながら言う。
「で、今日は自慢話をするためだけに来たのか」
「うん。それだけだよ」
アリスの返答に少し呆気にとられる。
「世間話だけしに来ちゃ駄目なのかい?」
「悪いわけじゃないが……お店としては何か買って行ってもらえないかなっと」
「えぇ……最近お金貰えてないんだよ……」
あからさまな嘘をつくアリス。
「褒賞金はどうした」
「ウソだよ。剣を清めるための聖水一瓶買っていくよ」
「ありがとうございました」
聖水を買っていき、アリスは店を出る。
「もうそろそろ営業時間も終わりですね」
「そうだな、客もいないし後片付け始めるか」
日も暮れ、そろそろ営業時間も終わりに近く、ライドさんと片付けに入ろうとする。
と、その時店のドアが開く。
「いらっしゃい。ん、プリシアじゃないか」
店に入ってきたのはプリシアだった。
「…………」
「どうかした? 何か顔色がよくないけど」
何も言わず、ただ佇んでいるプリシア。
「何かあった?」
「いえ、その……ノガミさん、ちょっと話したいことがあるので外まで来てもらってもいいですか」
「えっと……ちょっと待って。ライドさん少し外行ってもいいですか」
何か真剣な話があるようなのでライドさんに許可を取り外に出ようとする。
「じゃあ、こっちで片づけをしておくから外行きな」
ライドさんも何か察したのか、外へ行くことを許してくれる。
「じゃあ、外に行こうか」
「……はい」
ドアを開け、二人で外に出る。
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