第4話 来客
昼を過ぎ、俺に店番を任せ昼食をとるために裏へ行くライドさん。
しばらく誰もいない店の中でボーっとしていると、
カランカラン
と店のドアにかけてあるベルが鳴る。
ドアの向こうから一人の少女が出てくる。
「いらっしゃい」
「どうもです」
今返事をした少女はプリシア・ノース。十六歳だそうだ。
「今日は何か買っていくのか?魔法触媒も多少品揃えが変わってるけど」
「じゃあ、見させてもらいますね」
プリシアは半年ぐらい前からの常連客だ。
よく魔法系の雑貨を買っていく。
近くの魔法学校に通っているらしく、将来は魔術師を目指しているらしい。
客はあまり入ってこないので、結果的に客と話すことが多く、常連客ともなるとどういう人間かまで知っていることが多い。
「どうですか。お客さん、今日は来ましたか?」
プリシアが笑いかけながら聞いてくる。
「まぁ、いつも通りだ。人は来るには来るけど繁盛はしていないってところだな」
「ところで、魔法は上達した? 何か最近失敗して大変なことになったとか」
店の状況を聞かれたので逆に聞き返してみる。
「そういうことはないです。私は慎重なので失敗だけはしないように気を付けています」
「将来的には国一番の大魔術師になるつもりですから」
プリシアが胸を張って言う。
「はは。なれたら俺もうれしいよ」
「それ本気で言ってます? 何か馬鹿にしていません?」
「いやいや、本気さ。ここのお客様が有名人になればこの閑散とした店も繁盛する」
「んー。打算的ですね」
すこしむっとした顔になるプリシア。
「ウソウソ。いや、本気で頑張っている人間が評価されるのはいいことだからね。プリシアがそうなれば本当に喜ぶよ」
「それなら良かったです」
良かったとうなずくプリシア。
「夢のために努力していかないとだな。ところで、最近、学校では何かテストがあった?」
学校の話を振ってみる。
「初歩魔法の振り返りってことでランプに火をつけるテストを」
「でもこのランプ少し加減が違うだけで火がつかなかったり、逆に燃え盛っちゃったり、わざと難しく作ってあって」
「プリシアは出来たのか?」
「そりゃあ出来ましたよ。なんせ未来の大魔術師ですから」
「なら良かった」
と二人で笑いあう。
「いらっしゃいませ。っと、二人で談笑してると入りづらい雰囲気だな」
裏からライドさんが出てくる。
「どうもです店長さん」
プリシアが返事をする。
「いや、すみません話し込んじゃって」
と俺が言うと、
「まぁ構わんよ。若い二人には将来があるんだからな」
「それはどういう意味ですか、ライドさん」
そうしているとふと思い出したようにプリシアが口を開く。
「そろそろ、時間も時間ですし、私は帰りますね」
「その前にこのレッドハーブ1袋分下さい」
「はい980ルビね」
プリシアの精算を済ませる。
「それでは店長さん、ノガミさんまた今度」
そういって店を出るプリシア。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます