派手な事件は起きない。性格の派手な人は出てこない。パトカーや警察が走り回るようなこともない。日常の中にぽつんと謎の色がついたような、あれって何だったんだろう、とか、もしかしたらさりげなさすぎて、何が謎だったかさえ気づかないようなとりとめのない違和感を、聞くだけ、見るだけ、推理だけで冷静に見抜く安楽椅子探偵ならぬ学食コックさん探偵のお話。面白かった。ミステリというより学術的な探求に近い雰囲気を感じました。
民俗学好きな大学生・秋月ゆみえが、図書館で遭遇した事故。そこで、人を食った態度の青年と知り合いになる。探偵役の千里が、現場を見ただけでor話を聞いただけで、ゆみえは謎だとも思っていなかった謎を解決してしまう連作。表題の和泉式部にひかれて拝読しましたが、一番好きなのは紅葉の季節の日光の話でした。ミステリなんですけれど、読んだ感想が「日本って美しい……」になります。