図書館暮らし。

善吉_B

1ページ目 11月16日

 数日目にして、ようやく書くものを見つけた。


 この場所に閉じ込められてから何日が経過したのか、既にあやふやになりつつある。

 自分の記録のためにも、そして万が一私が生きてこの場所を出られなかった場合のためにも、記録は付けておくべきだろう。


 今これを書いているノートは、先程までいた部屋の本棚の上に置かれていたのを見つけたものだ。立派な装丁で、手触りの良い紙を使っているのが素人にも分かる。

 ペンは正面玄関の大理石の大階段を上ってすぐ、踊り場の百科事典の棚の脇に落ちていたものを拾った。こちらも良いものなのだろう。持ち手の部分に小さくあしらわれた螺鈿細工が美しい、黒の万年筆だ。



 どちらもこのような覚書に使うのは勿体ない気もするが、他に書けるようなものが見当たらない。

 ひとまず代わりが見つかるまでは、使わせてもらうことにする。

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