光の柱

「久しぶりねルーチェ」

 女はルーチェに駆け寄り言った。

「そちらはルーチェのお友達かしら。早く解いてあげなさい」

「分かりましたわ」

 マリガンは二つ返事で答えた。スリーはコールドスリープから解

放され、大きくせき込んだ。

「なんだよここは。説明してくれ」

「そうだよ母さん」

 二人とも状況が理解できなかった。マリガンの行動にも違和感が

あった。まるで眼前の女性に付き従っているかのような態度だった。

「自己紹介がまだでしたね私はアルモニーア。ルーチェの母親で

す」

 律儀に頭を下げて言った。スリーは口を開いた。

「あんたは実験対象じゃ無かったのか?なんでダークマターの施設

で自由にしている?そういう実験なのか?」

 スリーの質問にアルモニーアは笑って答えた。

「私も最初はモルモットでした。しかしある日一瞬だけ能力に目覚

めたのです。それで十二年前にルーチェだけを逃がすことが出来た

のです。それからは自身の能力を隠して自己研鑽の日々でした」

「あんたの能力は一体何なんだ?」

「洗脳です。正確には全ての生物を私の思うように動かす能力です。

故に私は自分の力をダークマターのエージェントに気付かれないよ

うにしなければなりませんでした。この力に気付かれれば彼らは何

をするか分かりませんから。……この十二年は本当に長かった。け

ど今はこの星の人々は全て私の手中にあるのです。たとえば……ほ

ら」

 アルモニーアのその言葉でマリガンは笑顔で自身の首を両手で絞

め始めた。ルーチェは叫んだ。

「母さんやめて!」

「駄目よ。この女は生かしてはおけない。この女は様々な人体実験

を繰り返してきた残虐な女なのよ」

「それでもこんな事駄目だよ!やめて母さん……」

 ゴギリ、という音が響いた。マリガンは膝から崩れ落ちて倒れた。

「あんた……」

 スリーはアルモニーアを睨みつけた。アルモニーアは平然として

いた。

「あなたも『宇宙人』なら判るでしょうに。彼らの残虐さが。あな

たの体がその結果ではなくて?」

 スリーは返す言葉が無かった。

「誰がダークマターかは、判らない。故に全ての人間を一度支配し

て炙り出さなければなりません。今は銀河一つ程度しか支配出来ま

せんがいずれ宇宙中全ての生物を支配できるでしょう。けどその前

にルーチェ、あなたの能力を覚醒させなければなりません。こちら

にいらっしゃい」

 ルーチェの足は彼女の意思に反してアルモニーアの方に向かって

行った。スリーは身動き一つ取れなかった。言葉も出せなかった。

すでにアルモニーの術中に嵌っていたのだ。

「さあ見せなさい。あなたの力を」

 ルーチェの頭を掴みアルモニーア囁いた。ルーチェの体は仰け反

った。

「なんだぁこの状況はぁ!?」

「スリー、大丈夫デスカ!」 

『チームライトニングス』とアビゲイルが辿りついた。しかし一足

遅かった。

「うるさいですね。少し黙っていてください。」

 その一言で『チームライトニングス』とアビゲイルは身動き一つ

取れなくなった。

 一人を除いて。

 ギリアンは手を振り稲妻を放った。アルモニーアは片手で稲妻を

払い退けた。

「星越者ですか面倒ですね」

 アルモニーアが手を振った。アビゲイルがミサイルを、ドミニク

とアストが稲妻をギリアンに放った。ギリアンもアルモニーアの支

配に完全に抵抗出来てる訳では無かった。重い体を動かして攻撃を

回避し続けた。

「さてそろそろでしょう」

 アルモニーアの声に呼応してルーチェの体がびくりと動いた。

ルーチェの体から光が放たれて天へと伸びた。反動でアルモニーア

が吹き飛ばされた。光はぐんぐんと伸び続け惑星ギャロットの衛星

の一つにぶつかった。衛星は徐々に惑星ギャロットに引き寄せられ

て行った。

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