第4話 子供だけでゲーセンへ
当時ワイが住んでいたド田舎山中からゲーセンのある街へ降り、
帰ってくるというのは丸1日がかりの大遠征であった。
しかも子供だけで街へ降りる事は厳禁。そのため隠れ忍んで
見つからないように山を降りる必要があった。
もし知り合いの大人や同級生の親などが乗った車と途中ですれ違えば
そこで終了である。激しく怒られた後、軽トラックの荷台に自転車と一緒に
乗せられ連れ戻される。
朝の9時に自転車に乗り家を出てそれから滝川君の家で合流。
国道は交通量が多いので、人の気配の少ない林道を通って山を下る。
行きは山を下るため、比較的に楽なモノである。街へ通じる林道は
鬱蒼とした林の一本道で少し不気味だが一応舗装されているので問題はない。
だが時折、山からの清水が道路まで溢ていたり倒木が道を塞いでいる事は
よくあった。
山を下り、人家が増えてくる、そして平地になると一息つく。さらに進むと
川があり沈下橋を渡ると、田園地帯に入る。ここまでくれば風景を楽しむ余裕もでてくる、揺れる稲穂を横目にほどなく進むと風景が街なびてくる、もうすぐである。
話では病院や古本屋の辺りに出来たという話なので、その辺りをぐるっと周り
それらしい店がないか探すとすぐに見つかった。
「大通りゲームセンター」
店に着いたのが丁度お昼位だった。店の前には沢山の自転車が止まっており、ゲームのくぐもったプレイ音やボタンを叩く音が店の外まで聞こえる。
よしここだ!と適当な場所に自転車を止めようとすると、滝川君がおかしな事を言い出す「なぁ・・やっぱゲーセンに子供だけて入るのは良くない、もう帰ろうや。」
「はぁ!?」いまさらなにを言ってるんだ?。
一瞬驚いたがすぐに理解した、ビビってるのである。昔のゲーセンと言えば
不良のたまり場。実際に他のゲームセンターはそういう場所であった。
あるゲーセンなどは入り口の戸を開けると、タバコを咥えた高校生4・5人が
いっせいにこちらを見て睨んでくるような店だったので一回しか行った事がなかった。だが不良だって年中ゲーセンに入り浸っているワケではない。
しかし近寄りづらいのも事実だった。
この店の外見の雰囲気はたしかに不穏なものを感じる。
窓にはゲームのポスターが貼ってあるので中はよくみえないし。その隙間から店内を伺うがかなり薄暗い。
グズグズしていると、店から50過ぎ位のメガネの男性が出てきた、
風体からこの人がおそらく店長だろう。すると男性がこちらを見るなり
「あ!君たちちょっと!!」
いきなり話しかけられ驚いた「そこに自転車止めると迷惑だから、こっちに
詰めて止めて!」。
振り返ると滝川君は、ゲーセンが怖い上にいきなり、大人に軽く叱られたので混乱しているようだった。
しかしそれが逆に良かった「ホラ滝川君ちゃんと自転車とめないとまた怒られるよ!」。一転して店に入る流れになったのだ。自転車を言われた場所に止めると入店しないワケにはいかない雰囲気だ。軽くあやまりつつ店にはいる
「すみませんーおじさんー」。
店に入ると、そこには初めて見るゲームが多数あった。「R-TYPE」や
「獣王記」など初めて見るゲームに棒立ちになっていた。
なんだコリャ・・気持ちわりーけどスゲーな、顔投げてるよ。
他にもデパートのゲームコーナーにはあまりない色っぽい麻雀ゲームや、
ギャルズパニックなどゲーセンの奥深さを味わった。
特に気に入ったのがマイケルジャクソンのムーンウォーカーである。
リアルなマイケルジャクソンのグラフィックも凄いと思ったが、
踊りの滑らかさに驚いた。さらに斜めから見下ろすようなクウォータービューというのは当時珍しかった。
改めて店内を見回すと、同じ歳くらいの子供も何人かいるし、思ったより安全そうである。
滝川君も、他人がゲームをするのを眺めているし落ち着いているようだった。
店内を見回すとギャラリーの多いゲーム台があった。
アレが話題の「メチャクチャ面白い」ゲームなのか?人だかりに近づくと
不穏な空気が流れた、ゲーム台に群がっていたのはガラの悪い不良集団であった。「クソが!!」
ワザとらしく大声をあげ、ミスする度に台を蹴り叩く姿に周囲は少し遠巻きに見守るだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます