第17話 選択の権利か評価の基準か

「で、優香は最近どう?仕事とか?恋愛とか?今も彼と続いてる?」

何を話していいんだろう。

何の変化もない生活を過ごしている…。


とりあえず、最近直面した賞味期限を考えたこと、誕生日の彼との出来事、親とのやり取りを掻い摘んで話した。


私は、玲に近況を話していて気付いた。

私の出来事や悩みなど、玲や結婚したり大病したりいろいろと乗り越えて生活している人に比べて、なんとも軽い内容だと。


それは、私の悩みは基本的に私自身の問題で私の行動で解決できるから。

玲の経験している大変さを経験していないし、苦労も知らない。

それに、玲の問題は、玲だけの問題じゃなく旦那、特に子どもへの生活・人生への影響が大きい。

話した後だったが、なんだか、玲には申し訳ない気持ちになった。


「ごめん、私、小さい人間全開だね。玲のことと比べるとくだらないね。」

「え?!そんなことないよ。優香は優香でいろいろ悩んで、生きてるじゃん。」

「うん…。」

「ねー、優香。別にすべての人がすべて同じ経験する必要ないと思うよ。同じ経験をしたとしても、同じ学びに繋がるとも思えないしね。それに何かを経験していないから、その人間が未熟とか、欠陥ありとか、その判断基準にはならないよ。」

「そうだね。私は結婚も子育ても経験していないから私の生き方でいいのか、心のどこかで不安になってたのかも。」


そう、結婚も出産も人生計画や願望がなくても、“人として”したほうがいいのか“親不孝”かと思う自分がいた。

しかし、その思いを認めると結婚も出産も実現させていない私が、人としてダメであると認めることと同じになる気がして、怖かった。


「優香は優香の生き方でいいんじゃない?」

「いいのかな…?」

「例えば、もし私が離婚したら、優香は私をダメな人間だと判断する?もし、私が憲法の国民の義務の勤労をせず専業主婦になったら、失望する?」

「それは、ないかな。」

「それと一緒だよ。人それぞれの生き方をすればいいと思う。離婚も専業主婦っていう生き方も権利があって、個々が選択した生き方で、人の評価の基準にはならないと思うよ。だから、独身でも子ども産まないことも選択の権利の1つじゃないかな。評価基準じゃない。」

「ふふ、そうだね。」

「でも、専業主婦は家庭という企業に勤務しているけどね。しかも、無休の無給で。ある意味ブラック。」

「それは、やばいね。労基に行かないと。」


玲とは、かっこつけたり、強がったりせず、話ができる。

そして、玲は私の不安を解決させてくれる。


話に夢中になって、ランチのパスタもデザートもあっという間に食べ終えてしまった。


「それじゃ、次会うのは出社したときだね。」

「うん、玲、いろいろ大変だと思うけど、協力できることあったら言ってね。」

「うん、ありがとう。優香もほどほどにね。」

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