第10話 感覚のズレで歳を痛感
35歳の捉え方と彼との関係が解決してスッキリした私は、さわやかな気持ちで出勤し、なんらトラブルなく午前の仕事を終え、午後の仕事に取りかかかった。
彼とのトラブルで仕事中もモヤモヤしてたなんて、まだまだ未熟だな...。
「大滝チーフ、頼まれていた封書の宛名記入終わりました。」
「あ、ありがとう。」
今日中に投函することが急遽決まった封書15通の準備と宛名記入を木瀬に頼んだ。
コンパがうまくいかなかったのか朝から機嫌が悪かったので気が引けたが、彼女が唯一時間がありそうだったから仕方がない。
“K株式会社 人事部 田中武・御手洗和彦様”
“株式会社W 管理本部 中根山哲也 部長様”
おいおい…。
「木瀬さん、宛名の敬称の書き方が間違ってるよ。」
「えー?」
「個人名はそれぞれに様をつけないと。連名にして、点付けて様じゃ失礼だよ。それに、役職に様は付けないよ。」
「え?!そうなんですか?」
「そうだよ。」
「一緒ですよね。2人まとめても、どこに様を付けても。」
「“個々に様”を付けるのと、この場合“管理本部部長 名前に様”と付けるルールだから、修正してくれない?他のも間違えてないか確認して。」
「はい。今まで学校でもそんなこと教えてもらってないし、すみません。」
「あ、そう…。年賀状とか、誰かに手紙とか、2年間会社の書類をこうやって出してたの?」
「小学校以来年賀状は出したことないし、手紙なんて書かないし。会社の書類はそうやって出してました。でも、長谷川さんも教えてくれなかったし、誰かに間違えてるって言われませんでした。」
めまいがする。
「そ、そう…。これから、気を付けて。」
「はーい。」
「それから、今後は何か初めてやることがあれば、行動する前にどうすればいいか調べるか、指導者か先輩に確認して。」
「あ…はい。」
「よろしく。」
去り際に、
「てか、私悪くないのに。はぁ。」
聞こえてますけど。
私がため息を出したい。
学校で教えてもらったことしか知らないとか、先に誰かが教えてくれなかったのがいけないとでも、言いたいのか?
私が新人の時はそんな言い訳通用しなかったぞ。
来年度の新人研修に手紙の書き方を入れるか検討しないと…。
個々の感覚・教養の問題かジェネレーションギャップの問題か、これから、もっと若い世代と一緒に仕事がやっていけるか不安だ。
そして、若い子と私のなんとなくの感覚の差や反応の違い、当たり前のズレを目の当たりにして、どんどん歳をとっていくことを痛感するのかな。
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