第6話 金曜日のコンビニごはん

会社に戻った時、すでに13:30前だった。

フレックス制で自由が効くとはいえ、インターン関連書類・新卒入社試験選考書類など仕事は山のようにある…。

文字が多くて目がつぶれそうだ。

肩痛いし、自分で肩を揉んだら老けて見えるから、死んでも会社では揉まない。

仕事を終わらせれば、明日は休み。がんばろー!と、自分を応援する。


はー、疲れた。時計は、すでに17:45だった。片付けて帰ろう。

「お先に失礼しまーす。」

数人の残ってるスタッフから、

「お疲れ様でした。」と言う声を聞き会社を出た。

もちろん木瀬と栗本は17:00くらいに退社していた。

コンパのために。

コンパか...もうだいぶ昔のような感じがする。

今はフリーでも絶対参加したくないが、そもそも誘われることはない。


金曜だけど、予定なくまっすぐ家に帰る。日課として、彼にメールは送るけど、基本レスポンスはお互い悪く業務連絡的な内容になっている。


電車は混んではいないが、座席は空いてない...

ただ立って乗る電車の時間が、一番ヒール靴が嫌になる。

バイトの愚痴を言う20前後の女子、カップルで無駄に体をくっつけている2人組、くたびれた顔の中年男女、仕事帰りとは思えないクオリティのメイクを保っているスーツの若い女性。

私はくたびれた中年のグループか。


夕食作るのがめんどくさい。

ついスーパーの食料品ではなく、コンビニやお弁当屋へ足が向いてしまう。

家には冷凍ご飯があるから、今日はコンビニのパックおかずと、チーズケーキ買っちゃおう。


別に体力のいる仕事をしているわけでも、運動をした後でもないのに、家に着くと一段と体が重くなる。

チンするだけのビーフシチューのパックおかずの、チンすらめんどくさい。

チーズケーキは、冷蔵庫へ。

ん??

“製造年月日 2018.6.28 消費期限 2018.6.29”

たった2日しかもたないんだ。

なんか切ないな。

このチーズケーキももっと長い期間美味しく食べほしいだろうな。

もし、この期日が過ぎたら捨てられちゃうからもったいない。

私も、いい時期を過ぎたら捨てられちゃうのか?

誰に?

彼に?会社に?社会に?

その時期はいつだ?

会社は定年の60だとして、社会は本当に死んだ時か。

彼氏は...?

人と物をリンクさせて、捨てるとか、期限とか考えてる自分が悲しすぎる。

心が寂しすぎる。

賞味期限に意識向きすぎ...


ブブッブブッ。

『お疲れ様。明日のデート、映画見に行かない?』

彼も仕事が終わったようだ。

『うん、いいよ。』

昨日の誕生日をスルーされた、モヤモヤは頭の片隅にまだ残ってる。

会える楽しさより、どう接してくるのか気になる。もし、明日も何の一言も無かったら、言ってみようかな。どうしようかな。

なんで素直に自分のモヤモヤを彼に話せないんだろう。


私の親しい友人は3人しかおらず、みんな結婚や子育てしているから、こんなどうでもいいことを相談したり、愚痴ったら、忙しい家事とかの邪魔だろうな...。


結婚してパートナーや子供がいたら、離婚した時が賞味期限か?

不倫する人もいるし離婚してもすぐ恋人ができる人もいるし、離婚は婚姻関係の賞味期限で女としてではないか。

セックスレス夫婦とかカップルって耳にするから、お互いが異性として魅力がなくなった時が、賞味期限か?

一応、私は彼とそういう状況じゃないから、まだセーフ?年齢的にはアウト?

やっぱり、女の賞味期限っていつだろう。


『映画は、前優香が見たいって言ってたアクション映画でいいかな?』

『うん、それがいい。』

『ネットで予約しとく。11:00に迎えに行くよ。』

『うん、ありがとう。楽しみだね。』

っと、“楽しみ”と入れておく。


さて...今日までのチーズケーキを食べながら今週の録画ドラマを見て、明日に備えてお風呂入って、彼に会うからパックして寝よう。

肌の手入れを気にして、やっぱり彼にはきれいに見てもらいたいって気持ちがある。単なる自己満だけど、女性としての意識はまだ大丈夫かな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る