第1部 第3章(2)血のぬくもり
「あなたの最後の戦いは最高だったわ。馬乗りになって、相手を切り刻んで。まさに生と死という感じだわ。あぁ、血が温かい」
悟郎の腹から流れる血を浴びながら、万理は愉悦に浸った。そして、何度も何度も悟郎に短刀を振り下ろす。悟郎は体が思うように動かないので、万理を押しのけることができない。そのため、現状に対処する以外に方法はなく、防御創ばかりが増えていく。
「ねぇ。あなたは私のものだから、私には危害を加えられないの。気づいていなかった?」
最初に万理をテントの中ではね除けようとしたとき、はね除けられなかったのを今さらになって悟郎は思い出した。
折角、デスゲームを生き残ったのに、ここで死ぬのか?
状況は絶望的だった。
何かできることはないか? 他人に知らせるとかは? 近くに大きな音が出るようなもの、あるいは落としたら大きな音が出るようなものがないか?
万理が振り下ろす刃に抗いながら、悟郎は探した。
「ふふ。無駄よ。誰も来られないわよ」
万理にはお見通しだった。
防御創は増えていく。一つ一つの傷から流れる血はそれほど多くはなかったが、数が多くなると無視できる量ではなかった。それに、最初に穿たれた腹部からの出血が甚だしい。実際に、悟郎の出血量は危機的な状況にあった。
出血や痛みで段々と意識が遠くなっていく。手放してはだめだ、そうは思うものの、瞼がやたらと重い。あぁ、美緒ごめん。美緒が嘆き悲しむ顔が浮かんだ。
「美緒!」
悟郎は虚空に手を伸ばし、叫んだ。
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