アンデッド兄妹は今日もお元気で

一二五六七

第1話

異世界転生?


そんなのちっとも望んでないし、羨ましくもないはずだが、なんでだよ。もう、本当、なんでだよ。


「兄ちゃん、そんなにしょぼんないでよ、ほら見て、腕が取れるよ」

「…我が妹よ、腕が取れるってそんなに嬉しいことか」

「あ、こうやってくっつけるんだ」

「話聞かないんかい!」


ってもういいや、もうこうなったらどうしようもないないし、何を恨んでもわからない。

そうだ、我々兄妹はわけわかんない神とやらを名乗るくそ男に召喚され、世界のお目付け役とかなんとかで無理やりこの異世界に放り投げられてから、すでに丸一日になった。

よく他の小説で読んだチートや特殊能力もなく、アイテム1つすらくれない。これぐらいは観念して自分の運に嘆くしかないと、自分への慰めができるものの、やっぱどうしても気になって気になって、あのクソ神に問投げたいことがあるんだよ。


「なんでアンデッドよ!キミって光明神だろう、敵対する種族を作って世界の観察とかなんとかを任せていいの?」


そうだ、これぞ真の問題だよ。

転生した、あ、そう?

神に役目を授かった、あ、そう?

でもアンデッドだ、なんでだよ!

違うでろう?そこは天使とか、神の使えとか、もっと適した身分というものがあるだろう?

だいたい、アンデッドでいながらどうやったら世界の動きを観察できるわけだよ、たぶん街に踏み入った瞬間駆除されるに違いない。

だめだめ、そんな絶対ダメじゃないですか。頭に以前呼んだ小説内容が浮かび上がって、中に書いている怪物たちがいかに悲惨にやられるのを想像しながら、ぶるぶる、ぶるぶる。

「…兄ちゃん、兄ちゃん、なんで震えてるの」

「…我が妹よ、気づいてないの、今この厳しい状況を」

「やはりお兄ちゃんも気づいたか」

「そうだな…」

妹の顔もだんだん深刻になってきて、さすがにどんくさい彼女でも今の状況を受け入れざるをえないんだね。

「今日の晩ごはんは何にする?」

厳しい状況ってそこ?

心配性の兄と天然(自称)の妹、アンデッド兄妹の楽しい(?)異界生活が今、幕を開く。

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