第2話
「式典参加しなくていいの?」
EA軍本拠地内の隅にある茶色い芝生の丘で大の字で寝そべるルイにシアンが顔を除かせた。
「お前だって。」
半笑いで答える。
誰かさんと違って、入隊式には参加したし。
ルイはソッポ向く。
2人とも新調されたカーキ色の軍のスーツが皺一つなくピッタリと着こなされていた。
ルイのだらしなく結ばれたネクタイが、シアンとは大きくちがうところだった。
珍しく晴天な昼下がり、大きな雲を写す影が2人を飲み込んでは出てとのんびりと場所を変えていく。
この日は創立100周年の記念式典。全隊員参加する一大イベント。
「次は活動報告にうつります。
直近一年間に現れた地球外生命体、知能型10事例。攻撃型26事例。無害型3事例。 地球外生命体による国民の犠牲者数121名。殉職者…………」
拡声器によって敷地の隅まで、声を響かせた。
控えめに吹き抜ける風が居心地よく、
「わざわざ目の前で話を聞きに行かなくたってここまで聞こえるね。」
ルイの横に座ったシアンが声をかける。
心室鬼没に出没する地球外生命体は、落下した隕惑星に生息していたと思われた。共通の細胞でできている生命体も全くの別ものもいる。少なくとも今まで数十種類の生命体が確認がされ名前が付けられた。何体生息するのか、何種類いるのか、繁殖方法も生態は謎。未だ研究段階だった。
ただ、100年の歴史でどんな生命体も方法は様々だが、死滅できるということがわかっている。不死身はないということ。
国は地球外生命体には人権がないとみなし、地球人も知恵をつけ力をつけ危害を加えることがあれば、とことん対戦した。結果人々の安全は守られ、過去の発展をとりもどそうとしていた。
次は元帥の挨拶です。一同敬礼。
「我々の主な仕事は、治安維持。国民を地球外生命体から守る事。その為に各所からのパトロールを怠らず、攻撃型と見なされれば、容赦なく抹消がゆるされている。
責任は計り知れない。
また、EA軍の隊員もに500人を超え、
未知なる地球外生物と戦う為に訓練を重ね、装備も年々進化の一途をたどっている、、、、」
元帥の話は続く。
「武力班にはグローブに小型の火薬が装備され波動を出す際、爆発的な威力を発揮するよう改善された。
予測不能な敵に対応する為、訓練はハードでほとんどの人間が兵役訓練期間でリタイヤする。
兵役期間後志願して入隊したとして殉職する者は少なくない。それでも、ここにいる諸君は、この国を守るべく隊務を全うしようと、、、」
「表向きは、スーパーヒーローだが、常に緊張感をもちあわせ死と隣り合わせの仕事だって言いたいんだろ。」
ルイが解説すると、あくびをはじめ、ウトウトしかけたところ、腕時計型通信機リストフォンからベルが響いた。主に、テレビ電話、無線、メール。軍に欠かせない様々な情報の受発信ができ、軍隊全員に支給されるものだった。
「ルイ、シアンさぼってないで、早く来なさい。」
「うわっ。アコだー。」
ルイはアコの映るリストフォンを顔から遠ざけた。
「わかった。戻るよ。」
聞き分けのいいシアンがルイのうでを引っ張り連れ出した。
ルイとシアンは渋々式典の列の最後尾に付く。
「こんなに隊員いたんだな。」
第1基地内にある広大な訓練場にびっしりと式典でしか着る機会のないであろう制服を着こなした、ガタイの良い隊員が1ミリもずれることなく、規則的に整列している。
「なんでアコはサボってるってわかったんだ?」
「これで探したんだよ。元帥の話中にね。」
シアンがリストフォンを指差しながら、笑った。
ルイは高身長で筋肉質。自信家で気が短く喧嘩っ早い。でも情にもろく仲間思いなところがある。
対するシアンは、身長は平均的で武力班とは思えない端正な顔立ち。家事もできる才色兼備であり、年の割に落ち着いていた。
ルイとシアンは中等学校からの仲。お互い高め合って成長してきた、親友だった。
2人はウマが合って中等学校からずっと苦楽を共にしその関係は今も変わらなかった。
EA特進大を創設以来の成績で卒業し、現役入隊したのは、武力班のルイ、シアン、アコ、看護班のビビ、テレパ班のサトルの5人だけだった。
5人はそれぞれ前代未聞の大尉ついた。
大尉クラスの人材は、知力、身体能力はもちろん。波動、テレパシー、救急と全てのスペックがオールマイティに身についていること。所属先に応じた能力が即戦力になりかつ指揮を取れるレベルとと判断された場合、着任できる。全隊員の中で武力班が5割、テレパ班が3割看護班が2割で各班のなかで左官クラス以上は1割以内と実力主義の軍隊で名声のある立ち位置だ。
パワーのルイ、命中力のシアン。この2人の能力は別格だった。
式典が終わり、ルイとシアンを見つけるな2人の耳を掴み自分に引き寄せる。2人は腰を大きくまげ、バランスを崩す。
「サボってるんじゃない!」
と叫ぶと誰もが注目した。
「鼓膜が破ける!」
ルイが叫ぶ。
アコは武力班の数少ない女子、気は強いが小柄で顔が丸っこい、可愛らしい容姿だった。
また、アコのパワーは大尉クラスの持つ波動のパワーの10人分の威力に相当した。ただし、自身で威力をコントロールする事が出来ず、一発勝負になってしまう。
中等学校では、そのせいで落ちこぼれのレッテルを貼られていたが、兵役訓練中に教育担当だった大佐に見出され、EA大に推薦された。
波動のコントロールができないものの、知力身体能力は申し分ない実力だった。
アコはお節介やきで、割と自分自身の感情のコントロールも苦手なタイプ。ただ、アコのお陰もあって学生時代は5人は互いを励ましあい、友情を育んでいった。
式典の後は、会食があった。立食パーティーだ。
ルイも渋々参加していた。
「どれも、美味くねーな。」
「また、そんなこと言って。アイル大佐にちゃんと挨拶言ったの?」
サトルが呆れ顔で言う。
「あーめんどくせぇ。」
そう言うルイにお酒の瓶を押し付け肩を押した。
サトルはひょろっと背が高くメガネをした、インテリ男子だ。
知識がとにかく豊富。テレパシストもしても、研究者としても秀でていた。
臆病なところはあるが、実戦を積むうちにそれも克服してきた。
5人のうちで一番情報を持っていて頼りがいがあった。
アイル大佐は重役と話し込んでいた。ルイは割って入る必要なんてないと、方向転換する。そんなルイをアイル大佐が見かけると、話しを切り上げ、ルイに近づいた。
「ルイ。久しぶりだな。」
「お久しぶりです。 」
少しふてぶてしい面だったが、サトルに渡されたお酒をついだ。
「大尉で着任したと聞いた。素晴らしい。一言祝いの言葉をかけてやりたかった。
我が家の誇りだよ。」
「ありがとうございます。」
「そういえば非通達情報だが、3日前また軍人がひとりアブダクションされたきり帰ってきていない。」
声を沈めて続ける。
「一連の連れさりはどれも同じ異星人よるものだと考えられてる。異星人は我々より1枚も上手かもしれん。油断するなよ。我が家の恥を晒さないよう。精々頑張りたまえ。」
「肝に命じます。」
ルイが頭を下げるとアイサ大佐は去った。
相変わらず、応援してんのか、嫌味が言いてぇのかわからないヤツだ。ブツクサ言いながら、おさけを探しうろついた。
アイルはルイの10歳年上のお兄さんだ。
アイルは昔から優秀でEA大も首席で卒業している。父親も優秀な元軍人で、ルイは小さい頃から英才教育を受けて育った。比べられることが多く。幼い子供にしては強いプレッシャーの下で育った。ルイはアイルが苦手だった。
先祖は地球滅亡を免れたいち部の人間がこの地に移住し、知恵を出し合い生きる望みをつないでいった。
当初社会主義だった街が、建国するにあたり資本主義になった。
わん当時統率をきっていたのが、トロンチェと言う名の元軍人だった。トロンチェはこの新しい地の国名にもなった。
建物は潮風で錆つき、エイリアンによって傷ついた街は修復が追いつかぬまま廃墟と化した。緑は消え薬品のにおいが立ち込めた街。そんな荒れ狂った土地でも人々明るく前を向いて生きていた。
国は治安維持が最優先とし、軍事力に予算を費やした。
EA軍の本拠地である第1基地は街に似合わないほど最新で広大だった。
第1基地と政治や経済など国家機能を司る役場がある国の中心地がペネス街区。その他に4つの街を区分けしそれぞれに基地が配置された。農産業、畜産業も小規模では、あったが機能した。
EA軍から毎年何人か国外調査にいくが、地球場にトロンチェ以外に国があるかは、不明だった。調査する為の人員の確保や、装備など、準備が不十分過ぎるとともに、放射能が残る土地が多く存在した為、開拓は困難だった。
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