欠片をもう1つ
雨音
第1話完結 鏡の中
欠片ともう一つ。
忘れた時をは何を思い出しますか。
それは、あなたにとってどんな物でしょう、人、花、歌、言葉、もしかすればそれは、目には見えない、ろくなものではないかもしれない。
人らしいとはなんだろう、私らしいとはなんだろう、僕らしいとはなんだろう、手を空に翳してみても変わりはしない。
もう一度考えてみよう。
あなたは何か、人なのか動物なのか、僕、私、俺、あたし、様々な一人称からあなたに合うのはあなたが使っていたものは何か、誰か探していたものはあっただろうか、再びそれは巡り会えるものか、もう手にはできない物だろうか。
あなたは、貴方は、貴女は、あなたは、一体誰か。
あなたは自身の正体がわかっているだろうか、鏡を見てごらん、ほら君の顔がわかるはずだ、酷い顔だ、血色は悪く髪はぼさつきまるで、死にかけの猫じゃないか、醜い顔だ、実に滑稽だ、そして愛らしい、君らしいとても素敵な醜い顔だ、さぁ今の気分はどうかな。
悪いかな、まぁそんなことはどうだっていい、でもあなたは自身の事がまだわかっていないようだ。
わからなくて当然だろう、だってそれは、君が望んだのだから……。
大切なものは何か、何か、何か、何だ。
あなたは何が大事だ、窓越しにあなたは何を望む。
それを叶え、大切なものは見つけられただろうか、あと、あと、何が欲しい、醜いあなたに告げよう、あなたは「強欲」だ、あなたは欲しがりすぎた、あなたは捨てすぎた、あなたに告げよう、あなたはなんと馬鹿で無知で無能なお一人だろうと、それを愛してしまうわたしもきっと、いや、相当悪趣味だ。
あなたはわたしを覚えていますか、大切なものになれていただろうか、わたしはあなたにとってどんな存在だっただろうか、あなたが言ったのだ。
わたしを何があっても探すと、わたしを見つけてくれると、あなたはあなたは、本当に自分勝手だ。
わたしを覚えていますか。
わたしを覚えていますか。
わたしを覚えていますか。
あなたは誰ですか、醜い顔で、わたしを見つめる、男、女、わたしはどちらでしょう、あなたはどちらでしょう。
わたし達にそんなものがあるのだろうか、鏡をもう一度見てごらん、ほらあなたはどちら、わたしが見えているのかな、それともわなたにはわたしの声なんてもしくは姿なんて見えていないのかもしれない、虚ろな目には何が映る、明日の話、空の色、変わらない景色が一つただ一つそこにあった。
欠片を拾う度、あなたがまた何処へ行ってしまうような気がした。
思えば思うほど、拾うが怖くなってきた。
割れた鏡をパズルのように埋めていく、無意味だとわかっているけれどそれは大切な事。
ガラスの破片が手に刺さり、真っ赤な血が流れる、全く人はどうしてこうも脆いのだろう、人は……どうしてこんなに馬鹿で無知で愚かで、……どうして……どうしてこんなにも愛しいのだろうか。
毎晩毎晩この夜空の世界であなたと月の光に照らされ踊っていた、一瞬だった、だけどその一瞬がたった少しその瞬間が堪らなく愛しかったのに、あなたは強欲だ、こんな事になると、ちゃんと教えたのにちゃんと……忠告したのに、もう治らないかもしれないのに、もう人なんて……どうして皆、こんなに狂おしい程に愛しいのだろうか。
一欠片、また一欠片を拾う、真っ赤な花を散らしながら、割れた部分に嵌める。
でも、まだ足りない、まだ、まだ、まだ……。
暗く沈みきった瞳をしたあなたがそこにいた。
珍しい今日は一人で歩けるのか、つまらそうな空っぽなあなた。
ペタペタと歩く足音に相変わらず、ぼさついた猫のようだった、気まぐれで、いつまでもこちらを向こうとしない、発する言葉もないらしい、いつまでも、夢を見たまま心に光を灯すことなく、また一人、あなたは何も見ず、何も考えられず、わたしはまたあなたの大切なものをかき集めまた割れた破片を床に嵌め込んだ。
振り向いた時、あなたに何度も訪ねた。
あなたにとって大切なものはなんですか。
それは人、物、それとも手にはいらないもの、現実では言えないようなそんなものなのだろうか。
そう聞くとあなたは息なんてしてないような顔でわたしを見つめる、泡沫に消えてしまいそうな寂しそうな冷たい姿……あの時のような暖かい感情は何処にもなかった。
ただ寂しい、あなたは何も言わず立ち尽くす。
声はなく、口パクで何かを呟いた。
聞き返すもあなたはまた人形のように、首をかしげ元に戻ってしまう、一瞬だけ微笑んでいたように見えたのは、きっと気のせいだ。
あなたにとって何が一番大切ですか。
大切なものはありますか、それはどんなものですか、もしもあるのであれば決して壊してはいけません。
よく、考えてみましょう。
一つ、一つ、拾い集めよう、あなたの欠片をまた一つそして埋めていこうあなたという、鏡を……あなたの一欠片を……。
ーendー
欠片をもう1つ 雨音 @ameyuki15
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