第6話 トリニティ☆プリンセス、決着!

「どうした、それでおしまいか?」

 あれだけの弾丸の雨を受けてもなお、平然としていたハリアーが笑いながら叫ぶ。

「ええ」

 ヴァイスは敢えて肯定すると、ステッキを構えて突っ込む。ブランシュとグレイスも、同時だった。

「『三人がかりで』などと思うなよ!」

 ハリアーが二刀流で、ヴァイスを切り刻まんとし――


『任せましたわ』


 ヴァイスが走りながら光り輝くものを回収し、ハリアーのすぐ脇を通り抜ける。

『ええ』

『ご無事で、ヴァイスさん』

 ブランシュとグレイスは、同時にステッキを叩きつけた。

「なっ……!?」

 ハリアーは動揺するも、すぐにブランシュとグレイスからの攻撃に襲われた。当然まともに受ける訳にもいかず、二刀で防御する。

(くっ、この土壇場で……!)

 ブランシュとグレイスは、ヴァイスからの役割を果たす事に専念し始めた。


     *


 その頃ヴァイスは、無事にララ殿下の部屋へと突入していた。

「殿下、いらっしゃいますか!? “トリニティ☆プリンセス”のリーダー、ヴァイスでございます!」

 ララ殿下を探すも、見当たらない。

 と、その時。

「ここだ! 助けてくれ、ヴァイスとやら!」

(!)

 ヴァイスはララ殿下の声が聞こえた方向へ、一目散に走り出した。

「ご無事ですか、ララ殿下!(しかし、このお姿は……!)」

「うぅ、何とか、な……。こんな無様を晒すとは、思わなかった……。それよりも、早く助けてくれ!」

「ええ!」

 ヴァイスが光り輝くものを手にすると、ララの手錠を、拘束具を外し始める。


 そう。光り輝くものすなわち、鍵束だったのだ。


「終わりましたわ。動けますでしょうか?」

「ああ。待っていろ、“ゲマインシャフト”のリーダーこと有原ハリアーめ。ボッコボコにしてやる」

 ララは目に怒りを燃やし始めると、ヴァイスの先導も待たず飛び出した。


     *


「どうした、“トリニティ☆プリンセス”!? 無様だなぁ、ええ!?」

 一方、ブランシュとグレイスは、二刀によってドレスをビリビリに破かれていた。

 胸元の豊かな果実が姿を覗かせ、肉付きの良い太ももがチラリと現れている。不思議なことに、素肌に傷は一つも無かった。

「くっ……!」

「これは……!」

 双方ともに大したダメージは見られないが、徐々に押され始めている。

「さぁ、続きと行こうか!」

 ハリアーが床を蹴ると、ほぼ同時に二人のドレスが破けた。

「きゃああっ!」

「いやああっ!」

 ドレスの布地が耐え切れず、二人の豊かな果実がこぼれ出る。

「フハハハハハ! これは男が放っておくまいな!」

 ハリアーは眼福な様子にご満悦である。

「っ、この!」

「よくも!」

 二人がステッキを振り回すが、ハリアーは軽くさばき続ける。

「果実が暴れているとはな! 靭帯が切れるぞ? クフフハハハハハハ!」

「余計なお世話ですわ!」

「うるさいですわよ!」

 いつの間にか、攻防が逆転していた。

 今度はブランシュとグレイスが、ハリアーの攻撃をさばき始める状態となった。

「さぁ、貴様らも花嫁共々存分に味わってから、死んで――」

「私が、何だって?」

 ハリアーが硬直する。

 そこにいるはずの無い人間を見たからだ。


 そう。ララ・アルマ・バーンスタイン殿下が、拳を構えている姿を。


「えっ――」

 情けない声が、有原ハリアーの最後の声となった。

「覚悟しろ!」



 次の瞬間、有原ハリアーはララ殿下の拳によって、流星と化したのであった。


     *


「ブランシュさん、グレイスさん。足止め、ありがとうございました」

「いえ、ヴァイスさん。大丈夫ですわ」

「ええ。それにその様子……ララ殿下は、無事に救出出来たのですね」

 ブランシュとグレイスが胸元を押さえながら向き直ると、元気なララ殿下がヴァイスの傍らに立っていた。

「ああ。手間をかけさせたな、“トリニティ☆プリンセス”」

「いえいえ。ララ殿下がご無事で、何よりですわ」

 ヴァイスのその言葉に、うんうんと二人は頷く。


 その後、夜明けと同時に“トリニティ☆プリンセス”はララ殿下を連れ、近くで待機させていたヘリコプターで拠点へと帰還したのであった。

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