第4話 トリニティ☆プリンセス、窮地!
「あそこですわね!」
ヴァイスが、背中を向けて逃走するノイベルトとゲープハルトを見つけた。
「逃がしませんわよ!」
「ステッキの錆にして差し上げますわ!」
ブランシュとグレイスもまた、ノイベルトとゲープハルトを追跡する。
と、二人はある部屋に入った途端、逃走をやめた。
「観念したのですね!」
「ひしゃげなさいませ!」
ブランシュとグレイスが、それぞれステッキを振るう。
しかしヴァイスだけは、何かに気づいて急停止した。
「お二方、止まって下さい!」
と、次の瞬間。
部屋を紫色の電撃が覆った。
ピンポイントで、ブランシュとグレイスを捕らえていたのだ。
「きゃああああああっ!?」
「いやああああああっ!!」
「お二方!?」
ヴァイスが手を差し出すが、慌てて引っ込める。
雷の檻に囚われたグレイスは、先陣を切って檻を壊さんとする。
しかし、檻はびくともしなかった。
「くっ、魔術が効かない……!?」
異変はそれだけではない。
二人の体が、勝手に火照り始めていたのだ。
「これは……!」
ブランシュが魔術で火照りを鎮めようとするが、今度は魔術自体が発動しない。
「無駄だ、“トリニティ☆プリンセス”! フハハハハハ!」
「その檻は、攻撃では破れん! クハハハハハ!」
ノイベルトとゲープハルトが、揃って高笑いする。
「はぁっ、はぁっ……!」
「いや、手が勝手に……!」
その間にも、二人の体はヒートアップしていた。自らの興奮を鎮めようとする本能が、二人の理性を無視して体を操る。
「お、お二方……! お気を確かに……!」
ヴァイスが叫ぶも、最早意味は無い。
かといって迂闊に突っ込めば、ブランシュとグレイス同様の末路を辿るのは火を見るよりも明らかであった。
「い、や……。ッ、グレイスさん、慰めて、くださいませ……」
「ブランシュさん、わたくしも……」
雷の檻に囚われた二人が、互いのドレスを暴き始めていた。
*
その頃、ララ殿下の胸元をしゃぶり尽くしたハリアーは、仕上げとばかりに殿下のスカートを暴いていた。
「いやっ、そこだけはぁっ……!」
だが、ハリアーは気にせず殿下を暴き続ける。
そして、腰より下の邪魔な布切れを全て取り払った。
「クソっ、クソぉっ……!」
ララ殿下はもう、顔全体が茹で上がっているのではと見まがう位に、真っ赤になっていた。
「さて、少しいじるか」
と、ハリアーが拘束具を調節し始める。
「……え?」
ララ殿下が呆然としている間に、拘束具は足先を持ち上げる体勢になっていた。
いわゆるV字開脚というものである。
「では、まずは準備と行こうか……」
ハリアーはララ殿下の股間に顔を近づける。
「ひっ、何を……!? やめっ、やめろっ大馬鹿者が……あぁあっ、ンン~~~ッ!」
部屋中に、水のような音が響き渡る。
同時に、ララ殿下が歯を食いしばったのであった。
*
「はぁっ、はぁっ……! グレイス、さん……そろそろ限界ですわ……」
「ブランシュさん、わたくしも……」
雷の檻の中では、ブランシュとグレイスが、互いの体を貪っていた。主に、お互いが持つその豊かな胸元を。
「ああ、お二方……!」
何も出来ず、ただ成り行きを見守るしかないヴァイス。
彼女もまた、下着をぐっしょりと湿らせていた。
「フハハハハハ……! 無様だな、トリニティ☆プリンセス!」
ゲープハルトが、勝利を確信しつつ高笑いする。
「冥土の土産に教えてやろう! その檻はな、“霊力を封じ、性欲に変換する”のだよ!」
ノイベルトもまた、三人を嘲笑していた。
(霊力を……?)
しかし、ヴァイスだけは違った。
(そういえば、檻はどこから……ッ、見つけましたわ!)
明らかに様子の違う、箱状の物体――正確には、真っ赤な箱に金のリボンを付けたプレゼントボックス――にステッキを向けるヴァイス。
「無駄だ、“トリニティ☆プリンセス”!」
ノイベルトがヴァイスを嘲笑う。
しかしヴァイスは魔力をステッキに集中させ、氷の弾丸をプレゼントボックスにぶつけた。
と、プレゼントボックスが粉砕した。
同時に、バリアの一部が解除され、その範囲にいたグレイスが冷静さを取り戻し始めた。
「っ……わたくしは、何を?」
「グレイスさん、派手な外見のプレゼントボックスを壊してくださいませ!」
「はっ、はい!」
グレイスはドレスを整えるのもそこそこに、ステッキを振るってプレゼントボックスを粉砕し始めた。
*
「どっ、どういう訳だ!?」
自らの秘密兵器を壊されたノイベルトが、驚愕の表情を浮かべる。
「それは、こういう事ですわ!」
「ひぃいっ!」
ヴァイスの放った氷弾が、ノイベルトの後ろの制御装置を、檻を通り抜けて粉砕する。
各プレゼントボックスと繋がっていたそれが粉砕されると同時に、全てのプレゼントボックスが爆発四散した。
「ノ、ノイベルト将軍!」
想定外の事態に、ゲープハルトまでうろたえる。
「ま、まさか貴様は……!」
何かを察したノイベルトは、直前の自身の発言を思い出していた。
――その檻はな、“霊力を封じ、性欲に変換する”のだよ――
そう。
つまりヴァイスには、霊力が無かったのだ。
「情報収集が不足していらしたのですね。わたくしに霊力はなく、あるのは魔力ですわ」
ヴァイスは氷点下の笑みを浮かべると、ノイベルトの頭を鷲掴みにする。
「さあ、狼藉者よ。わたくしの同輩達をたぶらかした罪、その命で
「ひっ……!」
その悲鳴がノイベルトの遺言であった。
ヴァイスは魔力をノイベルトに送り込むと、たちまちの内にノイベルトを氷の彫像に変えた。
「さあ、残すは貴方だけですわ」
「うっ、うわぁあああああっ!」
ノイベルトの死に様を見たゲープハルトは、大慌てでハリアーの部屋が存在する最上階へと向かう。
「とは言ったものの……まずはこちらが、先ですわね」
ヴァイスがノイベルトを葬っている間に、グレイスはブランシュを助け出していた。
「大丈夫ですか? ブランシュさん」
「ええ……。やっと、落ち着きました……」
檻から解放されたブランシュは、自らに魔術を行使して体調を整えていた。
「さて、散々やってくれましたわね、“ゲマインシャフト”」
ブランシュの目と言葉には、怒りが宿っていた。
「ええ。その代償を支払う時が、参りましたわ」
グレイスもまた、目に怒りを宿す。メイス状のステッキが、月明りを反射して鈍く輝いていた。
「さあ、決戦と行きましょうか……!」
ヴァイスは言うに及ばず、ただ前へ前へと歩み始める。
ブランシュとグレイスもまた、ヴァイスに従ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます