第8話 コード:ハイペリオン

 ララとフェイスは下北沢に来ていた。

 例の抱き枕が隠してあるというアリ・ハリラーのアパートだった。


 そこは既に警察が入っており現場検証が行われていた。


「ご苦労」


 警察官が敬礼をする。


 例の抱き枕はビニール袋が掛けられ部屋の中央に積み上げられていた。十数体はあるだろう。


「アリ・ハリラーはここで寝泊まりしていたのか?」

「は! そのようです」

「私に埋まって寝ていたというのか?」

「抱き枕ですが……」

 

 捜査官は抱き枕とララを見比べてうんうんと頷く。

 ララは恐る恐るその抱き枕をつついてみる。


「嫌だ。くすぐったい♡」


 もう一度つつく。


「ああ~ん。そこはダメ♡」


 さらにつつく。


「あああーん。もう我慢できないの。熱いのを頂戴♡」


「誰が欲しがるか!!」


 拳を上げるララと捜査官とフェイスが止めに入る。


「姫様。ここで暴れてはいけません」

「大切な証拠品です。抑えてください」


 この捜査官はララの事をよく知っているようで、それこそ必死の形相で阻止していた。


「現場は我々が確保しますから、室長は逃げている首謀者を追ってください」

「そうですよ。ララ姫」


 捜査官とフェイスにたしなめられ拳を収めるララだった。


「すまなかったな」

「いえいえ。これからどちらへ? 他の構成員のアジトへ行かれますか?」

「いや、病院に戻る。急ぐぞフェイス」

「了解」


 ララとフェイスはビルの上を跳躍して移動する。どこかのヒーローみたいな行動だが誰も気づいていない。


「遅かったか。やはりやられていた」


 ララ達が病院に戻った時には特殊病棟が破壊されていた。

 恐らくミスミス総統が来てアリ・ハリラー一党を助け出したのだろう。


 しかし、こんな盛大に破壊するとは何を使ったのだろうか。

 すぐにハルト君が来て説明してくれた。


「ララ室長。巨大ロボットが現れて病棟を壊したんです。アリ・ハリラー一党はその時に全員逃げだしました」

「ミスミス総統の仕業だな」

「恐らくそうです」

「アルヴァーレのメンバーはどうか」

「無事です。あちらの病棟は襲われていません」

「不幸中の幸いか」

「そうですね。室長が必ず抱き枕の回収に向かうと踏んで、その隙を狙ったのだと思われます」

 「分かった。ハルト君は引き続きアルヴァーレのメンバーに付き添ってやれ」

「はいわかりました」


 ハルト君は病院内へ入って行った。


「巨大ロボットか。とうとう出てきたな」

「ララ姫。ご存知なのですか?」


 フェイスの問いにララが答えた。


「具体的な情報は無いのだがな。コード:ハイペリオンという」

「えーっと。ここをぶっ壊した奴ですかね」

「恐らくそうだ。自衛隊が出動すべき案件になるだろう」

「でも、そんな大ごとにしたら損害が半端なく出るんじゃないですか?」

「そうだろうな。だから私が動くしかない」

「なるほど」

「アルヴァーレの三人が回復するのを待つ。お前は連中の動きを見張っていろ。動くのはその後だ」

「了解しました。姫様」


 敬礼を入れ姿を消すフェイスだった。

 ララは腕組みをしながら壊された建物を見つめていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る