第2話 エクセリオンという名にしてはダサい機動兵器です。ところで誤字脱字警察って誰ですか?
「さあノラベル将軍、あの高慢ちきなララ室長を懲らしめるのだ」
「かしこまりましたアリ・ハリラー様。さあ喰らいなさい。30㎜機関砲ですよ♡」
エクセリオンの右腕に仕込まれている機関砲が火を噴く。30㎜砲弾は倉庫の屋根を破壊し、壁に穴をあけていく。そして倉庫内では火災が発生した。
「あーっと。ノラベル将軍。これはやりすぎではないかな? 中の人が死亡してしまっては意味がなかろう」
「アリ・ハリラー様。あの化け物室長を舐めてはいけませんよ。こんな程度でくたばるわけがぁ?」
火災の中から突然姿を現した黄金仮面ことララ室長。オープンヘッドのダサい機動兵器「エクセリオン」のどてっ腹を蹴りつけていた。
エクセリオンはたまらず尻もちをつく。
「やはり出て来おったか化け物室長め。これでもくらえ」
立ち上がったエクセリオンは右手の機関砲を連射しつつ背のハッチから誘導弾を発射する。機関砲の弾幕に追い詰められたララの行く手に四発の誘導弾が着弾し爆発する。
「ほら当たった。敵をうまく誘導して其処に弾を落とす。定石ですよ」
「油断するな。ノラベル将軍」
「あの爆発から逃れられるわけがぁ?」
爆炎の中から十字手裏剣が飛来し、エクセリオンの右二の腕を切断した。
30㎜機関砲と共に右腕が落下する。
「ば、馬鹿な。このエクセリオンの装甲は鋼鉄とセラミックスとチタン合金の複合素材だ。手裏剣等で切れるわけがない」
「実際、斬られているのだ。直ぐに対処しろ」
アリ・ハリラーの言葉に頷いて左手でレーザーソードを抜くエクセリオン。しかし、ララ室長の姿は見つけられない。
「ララ室長。どこだ、どこへ行った」
「この場にララなどいない。いるのは黄金仮面だ!」
その声が聞こえた方向はアリ・ハリラーの後ろ、エクセリオンのタンデム型コクピットの直ぐ後であった。
「おのれ、ララ室長……もとい、黄金仮面め。レーザーソードの錆にしてくれる」
「ちょっと待て将軍。レーザーソードは錆んと思うぞ」
「いや、アリ・ハリラー様。刀剣で斬ることを〇〇の錆にという表現を使うのです」
「それは知っているのだが、そういう表現を使うと誤字脱字警察が来てしまうかもしれないではないか。錆びないものが錆びるなどという表現は大いに違和感を感じるぞ」
「アリ・ハリラー様。その違和感を感じるという表現こそ誤字脱字警察を呼び込んでしまうマジックワードですぞ」
「なっ、なんと私がその表現を使ってしまったのかぁ………これは頭痛が痛いかもしれん」
「三点リーダーは原則二つですぞ。ほら其処、三つ使ってますよ。それに頭痛が痛い等、何処のおやじギャグですか?」
「私は親父と言われるほど年を取っていないのだ」
「でも親父ギャグは言うのでしょう?」
「だから私はそんな歳ではないぃ?」
その時唐突にアリ・ハリラーの首根っこが掴まれた。
「おい、親父ギャグはそのくらいにしとけ」
「黄金仮面よ。いつの間にそこにいたのだ!」
「さっきからいたではないか。私を無視して誤字脱字警察がどうのこうのとはしゃぎおってからに」
「ああ、それは悪かった。申し訳ないが、その手を放してくれないかな?」
「知らん」
その刹那、アリ・ハリラーはララにぶん投げられ、空の彼方へと消えていった。
「コクピットクローズ。中には入れさせんぞ。黄金仮面よ」
エクセリオンのサイドから風防がせり上がり、上面を装甲が覆っていく。先ほどまでのオープンコクピットがクローズドされた。
「おい。ノラベル将軍。これで私と二人きり……密室の中だ。何をする気だ?」
「ん? 何故そこにいるのだ黄金仮面よ」
「何故って。さっきお前らの元締めアリ・ハリラーを放り投げてからここに座っていたのだが、気が付かなかったのか?」
「はっ、馬鹿な。何という勘違いをしておったのだ私は!!」
「気にするな。人間誰にでも間違いはある。ほら、私からのプレゼントだ」
ララはピンを引き抜いた手りゅう弾を2個ノラベル将軍に渡す。ハンマーが信管を叩き着火した。
「じゃあな」
コクピットの天井を蹴破ってララが外へ脱出すると同時に手りゅう弾が爆発した。
頭部のコクピットが破壊されたエクセリオンはゆっくりとその場に倒れた。しかし、そのコクピットにはノラベル将軍の遺体は見当たらなかった。
「逃げたか。さて、あの娘たちにはお仕置きをせねばならんな」
ほとんど全裸で身を寄せ合っている「魔女っ娘探偵アルヴァーレ」の三人に向かってララが話し始める。
「いつもいつもヘマばかりしおって。今回もまんまと罠に嵌められたではないか」
「申し訳ありません、室長」
「ごめんなさい姉さま」
「ララ様……」
ヴァイ、ブラン、レイスの三人がしおらしくなる。先ほどまでの好色な雰囲気は消え、皆正気に戻っていた。
「どうしてこんなバカな罠に嵌ったのだ」
「それは、室長の抱き枕が闇ルートで出回っているという情報を掴んだからなのです」
「水着バージョンとドレスバージョン、パジャマにネグリジェ、そして全裸があるという情報が……」
ブランとレイスが俯きながら答える。
「何? それは本当か?」
「はい。私たちはその情報を追ってここに来たのです。そしてこの目で実物を確認しました」
リーダーのヴァイが神妙な面持ちで答える。
「なるほど、それは深刻な問題だな。ところでお前たち、魔法のステッキはどうしたのだ。なぜ身に着けていない」
「それは……」
三人が顔を見合わせる。
「抱き枕と交換してやるって言われてつい……」
レイスの言葉に三人が頷く。
ララはギリギリと歯ぎしりをしながら1000円札を投げた。それはひらひらと舞い降りヴァイの乳首を隠すように張り付く。
「始発で帰ってこい。1000円あれば足りるだろう」
「しっ、室長。こんな姿で電車に乗れっていうのですか」
「服はそこで転がっているハルト君のものでも借りておけ。あとは自己責任だ」
冷徹な一言を残し、ララ室長の姿は夜の闇へと消えた。
三人は焼け焦げてあちこち穴が開いているハルト君の衣類を引っぺがし、三人で分けて着用し、早朝始発電車で帰還したという。ジャンバーはヴァイ。ワイシャツはブラン。下着のランニングとジーンズはレイスが奪った。電車の中では、そのセクシーな衣装は好奇の目で見られていたという。
ハルト君は素肌にネクタイ&パンツ一丁の姿で発見され、救急車で病院に運ばれたという。運ばれた先が精神科であったかどうかは定かではない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます