第43話 俺たちのイチャラブはこれからだ!
「ちょっと、この場でそれ言う!?」
顔を真っ赤にしながら叫んだアイナに、俺は思いっ切りカッコつけた声で答えた。
「アイナだけに公開告白させといて、自分はしれっとした顔して、あとでコッソリ告白するようなマネをする気は無いぜ」
「ちょ、公開告白って……」
「言ったろ?」
「い、言ったけど……」
「だから、俺もみんなの前で言うのさ」
思いっ切りドヤ顔で前髪をかき上げてカッコつけながら言う俺。はっきり言って、傍から見たらドン引きだろうと自分でも思う。だけどな、恋愛感情まっただ中の場合、コレって相手の娘が自分に好意を持ってる場合には案外効くんだぜ。この場合、世界中の人間にドン引きされたって、アイナにだけカッコ良いって思われればいいんだからな。
「ん、んもぉ、バカっ!!」
そう叫んで、うつむいて両手で顔を覆ってしまうアイナ。オッケー、作戦成功っ!
そのまま、アイナを抱き寄せると、俺の胸にその顔を
そして、今度はアイナにだけ聞こえるように、小さな声で優しくささやく。
「好きだよ、アイナ。愛してる」
すると、俺に抱きしめられたことで硬直していたアイナの体から徐々に力が抜けていく。そして、体の横で固まっていた彼女の両腕が俺の腰に回され、しっかりと抱きしめ返してくる。
「……あたしも、愛してる」
小さな、とても小さな声。だけど、彼女のささやき声は、俺の耳にはしっかりと聞こえたんだ。
その言葉に、目を閉じて、ただ抱いた腕にギュッと力を込めて応える俺。もう俺たちに言葉は要らない。
周囲から口笛やからかい気味の祝福の言葉が飛んでくるが、そんなの気にもならない。俺たちは、しばらく二人だけの世界に浸っていた。
~~~~
「おっと、逃がさないよ」
そう言うイリスの声で、俺は自分を取り戻した。目をあけて声のした方を見ると、ヘルベルトの襟首をイリスが掴んでいる。
「ああ、悪いなイリス」
アイナを抱いていた手を離しながら、イリスに向かって声をかける。俺と同じように正気に戻ったアイナも、慌てて俺から少し離れると、俺に抱きつく前に腰に差していた精霊融合の杖を再び手に取る。
「イチャつくのはいいけど、それでコイツに逃げられたら赤っ恥じゃないかな」
少しトゲのある言葉で俺をつついてくるイリス。まあ、目の前でイチャつかれたら気分が良くないのはわかる。
「すまないな。だけど、イリスなら逃がさないだろうって信用してるから、こういうこともできるんだぜ」
それを聞いたイリスは肩をすくめると、バカ負けしたって表情になって口を開いた。
「……まあいいけどね。それでも、コイツはさっさと帝都に連行した方がいいと思うよ」
「まあ当然だな。それじゃあ、みんな集まってくれ、テレポートの魔法を使って……」
俺がいいかけたところに、マサトが声をかけてきた。
「ちょっと待ってくれっ。その連行、オレたちにやらせてくれないかっ?」
「え? だけど、俺たちはTAIのメンバーだから帝国政府に伝手があるし報告義務もあるんだが……」
そう答えようとした俺の目の前に、マサトがある物を突きつける。TAIのメンバーズカード。
「お前もTAIのメンバーだったのかよ!?」
「ゴリブリン様の使徒だと言っただろうっ」
驚くオレに、ドヤ顔で答えるマサト。そうか、こいつも異世界からの侵略についての神託を受けてたんだな。
「じゃあ、連行はお願いしていいか?」
「任せておけっ! ヘルベルトの爺さんも、ミーネと一緒の方がまだマシだろうしなっ」
そう言うマサトに、アイナが精霊融合の杖を渡して言う。
「じゃあ、これもお願いね」
「ああ、しっかりと帝国の研究所に渡すぜっ」
「それじゃあ、ヘルベルトは……」
言いかけたイリスの所に歩み寄ったのはミーネだった。
「私が連れていきます」
「お、おお、ミーネよ、お前ならわしが騙されていたということを証言してくれるな?」
そう言いかけるヘルベルトに対してミーネは……
「風の精霊よ、お祖父さまを縛り上げて……『エア・バインド』!」
「な、何をする!?」
「逃げられないように拘束しました。お祖父さまの
そう冷たく言うと、底冷えのする視線をヘルベルトに浴びせながら話を続ける。
「騙されていたことは証言しますが、それでもお祖父さまが反帝国の陰謀に加担してしまったことは事実です。その罪は、しっかりと償ってください」
「み、ミーネよ、わしはお前の祖父なのだぞ!?」
言い返すヘルベルトに対して、ミーネは冷たい笑みを浮かべて言った。
「孫がエレメンタラーになれるチャンスを潰してくれるような祖父に対しては、これでも優しい対応だと思いませんか?」
絶句するヘルベルト。そして、そんなヘルベルトをにらみつけているミーネの肩を軽く叩いてマサトが声をかける。
「さあ、帝都に行こうぜミーネっ! ゴブりん、みんな、来てくれっ」
そして、ゴブリン
「今度の勝負は引き分けだなっ! だが、次には負けないぞっ!! お互い、この世界を守るために、どっちがより活躍できるか勝負だっ!!」
「おう、受けて立つぜ!!」
俺が答えながら親指を立てて挨拶すると、マサトとミーネも親指を立てて応える。
「それじゃあ、またなっ。テレポートっ!」
マサトたちが消えたのを見送ると、今度は来賓席の方に座っていた近隣の町の冒険者ギルド長の方に向かう。さすがにギルド長だけあって、ほかの偉い人たちは逃げたのに、残って俺たちの戦いを見守っていたようだ。
そのギルド長にTAIのメンバーズカードを見せながら話しかける。
「TAIとしての協力要請です。俺たちTAIのメンバーには帝国政府から直接報酬が出るでしょうが、ほかのパーティーはせっかくワールド・エレメンタル・ザ・グレーテストと戦ったのにタダ働きになってしまいます。緊急事態対応ということで、冒険者ギルドの方から討伐報酬金と貢献ポイントを出してもらえませんでしょうか?」
けっこうデカい町のギルド長なんで、一応敬語で話しかける。これがギルドからの依頼とかで会う場合だったら、本当に同業者組み合いだった時代からの慣習で「ギルドと冒険者は対等」って建前だからタメ口上等だけど、今回はこっちが頼む立場だからな。
「わかりました。今回の討伐については、帝国政府とも連絡を取って、参加した冒険者パーティーに対しては、避難誘導にあたったメンバーも含めて全員に何らかの報酬が出るように取り計らいましょう」
ギルド長が明言したので、周囲にいた冒険者たちから歓声が上がる。ワールド・エレメンタル・ザ・グレーテストの攻撃でダメージを受けて自腹でHPポーションとか使った人も結構いるだろうからな。それにタダ働きは冒険者のポリシーに反するし。
「さて、事後処理も終わったことだし、さっそく『
アイナたちに声をかけて、テレポートの魔法を準備する俺なのだった。
~~~~
「「「「「「「エレメンタラーへの
そう言いながら、七人で乾杯する。ここはアイナの実家の広い食堂。みんなでお祝いをしているんだ。スーラたちスライムもテーブルの上でふにょんふにょんと踊ってお祝いの気持ちを表現している。
「ありがと~!」
少し頬を染めながら応えるアイナ。特に問題も無くエレメンタラーへの
七大エレメンタルの分霊は、普段はその存在を見せていないが、常にアイナの周囲に存在して彼女を守護している。
そして、それを完全に発揮するために必要なのが……
「ワシからのお祝いじゃ。これを使うがよい」
ヒュレーネさんからアイナに贈られたのは、あのエレメンタラーの正装。
「……これ、着ないといけないのよねえ」
複雑そうな表情のアイナ。
「別にいいじゃないか。ボクらのパーティーは女性ばかりだし、唯一の男性であるリョウは恋人なんだから」
そうツッコむのはイリス。
「まあ、それはそうなんだけど……やっぱり、ほかの人たちに見られるのは少し抵抗感があるのよね」
そうつぶやくアイナに、今度はフリードさんが何やら奇妙な装飾が付いた棒状のピンク色のアイテムをインベントリから取り出して差し出す。
「これは私からのお祝いだ」
「何コレ?」
受け取りながら尋ねるアイナにフリードさんが答える。
「これは『変身の杖』というマジックアイテムだよ」
「え、マジックアイテムなのコレ!?」
驚くアイナに、クミコが眼鏡を中指でツイっと押し上げながら解説する。
「『変身の杖』は使用者の装備を一瞬で変更することができるマジックアイテムであるな。これがあれば、普段着とエレメンタラーの正装を一瞬で着替えることができるであろう」
それを聞いたヒュレーネさんが、うなずきながら補足する。
「うむ、これがあれば戦闘のときだけ着替えることも可能じゃろう。フリードに頼まれて帝都のマジックアイテムショップに行って探してきたのじゃよ」
「ありがとう、お祖父ちゃん!」
変身の杖を抱きしめながらフリードさんにお礼を言うアイナ。
「どういたしまして。装備の登録と変身の際にはキーワードを唱えればよいそうだ。詳しい使い方はヒュレーネから聞くといい」
「うむ。そんなに難しくはないぞ。装備登録の際には、装備を身に着けた状態で、このボタンを押しながらキーワードを唱えればよい。二種類の装備を登録したあとは杖を掲げてキーワードを唱えるだけで自動的に装備が全部入れ替えられる。キーワードは『テクマクプリンパ』じゃ」
「わあ、凄く便利ね!」
大喜びするアイナ。確かに便利なアイテムだな。
「な、何でそのキーワード……そもそも、あのデザインは……」
クミコが例によってブツブツと何か言ってるが、一体何を気にしてるんだか。特に意味の無いキーワードなんて多々あるじゃないか。それに、ハートとか星型の装飾がゴテゴテとくっついたデザインは確かにファンシーで派手だけど、変なデザインのマジックアイテムなんてのは別に珍しくもないだろうに。
「さて、アイナがエレメンタラーになったことは非常にめでたいし、アイナとリョウにとってもめでたいことがあったワケだけど、これについてはパーティーにも大きな影響があることだから、ハッキリさせてもらいたいな」
アイナの喜びが一段落したところで、イリスが改めて口を開いた。これは確かに、男女混合パーティーだと一番大きな問題だから、避けて通るわけにはいかないだろう。
俺は真面目な顔になって言った。
「俺とアイナは男女としての交際を始めることにした。だが、俺はそれを理由にパーティーリーダーとしてアイナだけを優遇するつもりは無い。もし、そういう態度が見えたら、遠慮無く指摘して欲しい」
アイナも俺に続けて言う。
「リョウとの関係を冒険者の仕事に持ち込んだりはしないわ。何か気になることがあったら、あたしにも遠慮無く言ってね。リョウに言いにくいことだったら、あたしが聞くから」
それを聞いて、残りの全員がうなずく。
「まあ、リョウが公正なリーダーだってことは、今まで見てきてわかっているからね。ただ、念を押しただけだよ」
「神は愛し合うカップルに祝福を授けてくれますぅ」
「でも、普段から熱々ぶりを見せつけられるのは勘弁して欲しいでござる」
「自重して」
「ヲーッホッホッホッホ! あたくしは気にしませんことよ。存分にイチャつきなさいな」
「リア充爆発しろ……」
六人とも、一応認めてはくれたらしい……クミコだけ物騒なことを言ってるけど。
まあ、実際パーティーの中で俺たちだけイチャイチャしてたら空気が悪くなりそうだしな。そこはオリエやカチュアが言うように自重しよう。
「わかった、みんなには迷惑をかけないように気を付けるようにする」
そう言って俺がアイナの方を見ると、アイナも俺の目を見つめ返してうなずく。
と、テーブルの上のスーラがルージュの方にふにょんふにょんと近寄っていって、ピトっと寄り添った。スライムって性別は無いはずだけど、召喚主の気持ちの影響は受けるんだろうな。
それを見たみんなから笑いがこぼれて、場の雰囲気が再びやわらかくなる。そんなタイミングを見計らって、ヒュレーネさんとフリードさんがお祝いの料理を運んできてくれたので、祝宴が再開された。
みんなと談笑するアイナを見ながら、俺も料理を口に運ぶ。
人前ではあまりイチャイチャできないかもしれないけど、別にいいじゃないか。時間はたっぷりとある。何しろ、俺たちは今お付き合いを始めたばかりなんだからな。
俺たちのイチャラブはこれからだ!
~~~~
第2章はこれにて終了となります。当初予定では10万字くらい書くつもりだったのですが、そこまで話が膨らみませんでした。これからも各章の分量はまちまちになるかと思います。
さて、いよいよ一人目のヒロインとは恋仲になったわけですが、ハーレムを名乗るからには残りのヒロインズとも仲良くならないといけません。これからは、ひとりずつそのことを描いていきたいと思います。
第3章「イリスは上手く踊れない(仮)」の開始は六月下旬になるかと思いますので、今しばらくお待ちください。
ご愛読ありがとうございました! 次章もご期待ください!!
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