始めての学園生活ー①
試験が行われた数日後に合格通知は届いた。合格通知には筆記の点数と戦闘の点数が書かれており、それに合否が示されていた。
ええと、俺は筆記が百点満点中の十五点…ま、まあ予想通りだな。次の戦闘は百点満点中の二百点…は?いやいや、え?限界突破してるじゃん!どういうこと!?
とりあえず点数のところをスルーして合否を確認…まあ、合格してるわな。合格してなかったらノルンにおこ、いや、殺されていたな。
合格通知の下の方にはまだ続きがあったようで視線を移すとそこには文字が書いてあった。
セシル君は筆記は絶望的に駄目だったけど戦闘に関しては勇者六人を相手に勝ってるからね。さすがに不合格にはできないということでそれ相応の点数を点けておいたから!
シルビア学園理事長より
「………何てことしやがるんだー!」
「セシルうるさい」
「あ、はい。すいません」
気分が高まってしまい、叫んでしまったせいでノルンに絶対零度の目で見られてしまった。やめてぇ、そんな目で見られたら何かに目覚めちゃう!…いや、ないな。
「どうして急に叫んだんじゃ?まさか落ちたわけではなかろうな」
「い、いや違うから!合格はしていたから!ほら、見てみろよ!」
俺は手に持っていた合格通知をノルンに受け渡す。ノルンはそれを受け取ると読み始めた。しばらくすると、読み終えてから俺に返してきた。それと同時に冷たい目線を送ってきた。あれ、俺なんかしましたっけ?
「まあ、たしかに最後の文を読めば叫びたくなるのはわかるが、この筆記の点数はなんじゃ!三割もとれてないではないか!」
「ひいいっ!ご、ごめんなさい!」
怖っ!Sランクモンスターよりも怖いんですけど!
俺はもう一度叫びたくなる気持ちを抑えてからノルンと向き合った。
「俺にも弁明させてくれ」
「まあ、言い訳だけは聞いてやろう」
ノルンは顎で「ほれ、言ってみ」と指示した。いや、俺にはわかるけれどそれでいいのか王女様!?
「まずだな、俺はそもそも三年も旅に出ていたから勉強はできなかった。そして、こっちに帰ってきたのは入学試験前日……無理に決まってるだろ!?」
「はあ、たしかに仕方ないと言えば仕方ないのじゃが…まあ、よい。今回は許すとしよう」
「ほっ…」
よかったー。ノルンが怒ったらめちゃくちゃ怖いんだよなー。どのくらい怖いかというとSランクモンスターが二十体くらい同時に奇襲を仕掛けてくるくらい怖い。
ホッと安堵し、胸を撫で下ろしていた俺だったが重大なことを忘れていた。それは、
「そういえば明日から学校じゃが、大丈夫か?」
「え……」
それは 明日から学校だということを完全に忘れてしまっていたのだ。
「ノルン…どうしよう。完全に忘れていたよ…」
「そんなことじゃなかろうかと思うたぞ」
ホントにどうしよう。俺何も必要なもん買ってないぞ。どうする、俺!いや、ここは人を頼ろう。人を頼ることはいいことだって誰かも言っていたしな。
「というわけで、お願いしますノルンさん!買い物手伝ってください!」
俺はノルンに向かって思い切り頭を下げた。ノルンは目をぱちくりしていたが、やがて口元をにやっと歪めると答えた。
「頼んでくるのは予想しておったが、まさか頭を下げるとはのう…ふむ、買い物くらいならよいぞ」
「ありがとうございます!」
俺とノルンは宿屋を出て、街に出た。何かと買うものの種類が多かったので商店街に向かった。
「商店街も三年も経てば大分変わるもんだなー」
商店街につくと、そこは三年前とは大きく変わっており、人がいなく寂れていたのが嘘のようだった。
「まあ、この辺りはお父様が頑張って改良したからのう」
ノルンは自慢げにそう語った。しかも胸を張っているからなぁ、目のやり場が困るんだよなぁ。まあ、控えめに言って最高です!
行くとこ行くとこに人が溢れており、全然前に進めない状況であった。
「人多すぎだろ…何?何かイベントでもあんの?」
「別にこれが普通じゃぞ」
俺はこの人の多さを何かイベントがあるからだと結論付けだが、これが普通らしい。
しばらく歩いていくと今回の目的の一つである訓練用の武器を買いに武器屋についた。扉を開けてから中に入ると、そこには様々な武器が壁や棚に飾ってあった。
「ほう、すげえな」
思わずその武器の多さと美しさに感嘆の声が漏れてしまった。実際、部屋一杯にある武器一つ一つがよくできていると感じるほどだった。ここの武器を造っている人は余程武器を造ることが好きなんだなと思った。
「さてと、ノルンは訓練用の武器はどうしたんだ?」
「わしか?わしは主と違って一つしか使えぬからな。当然弓に決まっておろう」
そういえばそうだった。普通は一つの武器に絞ってから訓練するんだったな。神器での訓練の参加はみとめられてないからなー。どれか一つに絞らないといけないのか。どれにしようかな。無難に剣か?いや、それだと面白くないしな。何より勇者と被りたくないな。なら、俺はあれにしよ!
「すいません!これを二つください」
「はーい、銀貨二十枚になります」
俺は袋から銀貨二十枚を取り出す。というか、いつも思うのだがこれが八十枚とかだと大変だよなー。
取り出した銀貨二十枚を店員さんに渡して会計を済ませてしまう。
「なんじゃ?もう終わったのか」
「あー、前から考えていたからそんなに悩まなかったんだよ」
「それで何したんじゃ?」
「これ」
俺はノルンに普通の短剣の長さよりも少し長めである短剣を二本見せる。
「短剣の二刀流か?」
「まあ、何か普通の二刀流よりもカッコいいじゃんか!」
「そんな理由で選んだのか…まあ、よい。買うものは他にもあるんじゃ、さっさと行くぞ」
俺たちは武器屋を出てから、服屋に行ってから制服を受け取り、寮で必要なものを色々と買いそろえた。
最後の買い物を済ませる時にはすでに太陽は沈みかけており、夜が訪れようとしていた。
俺は前を歩いているノルンに礼を言った。
「今日はありがとうな、買い物に付き合ってくれて」
「ふふっ、よいよい。わしも楽しかったしな」
ノルンは笑顔でそう言った。その笑顔は夕日に照らされて、今まであったどの笑顔よりも美しく輝いて見えた。
俺は不覚にも見惚れてしまっていた。
だが、すぐに正気に戻った。大丈夫だ。動揺なんて全然してない。驚きもしないし動揺もしないし可愛いだなんて思わないしビックリもしないし可愛いだなんて思わない。何これ凄い動揺してる。
とにかくその後俺たちは他愛ない話をしながら宿屋と戻っていった。
部屋に帰りついてからノルンは疲れていたのかベッドに寝転がってから数秒で寝てしまっていた。
その光景を生で見ていた俺は「何これ早寝過ぎるだろ」と思ってしまっていた。
しかし、そんなぐっすりと気持ちよく寝ているノルンを見ているとこっちもなんだか眠くなってきてしまい明日の準備をさっさと終わらせてベッドに横になりすぐ眠りについてしまった。
明日は俺にとって初めての学園生活か…楽しみだな。
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