入学試験ー②

 結局昨日の夜は寝らずにずっと置いてあった問題集をひたすら解いていた。途中で普通にやるようじゃ無理だと思い、全答えを暗記する方に切り替えた。

 答えを見ながら暗記をしていると気づけば朝になっており、急いで朝食と身支度を済ませてから宿屋から飛び出した。

 シルビア学園の校門に着くと既に人で溢れかえっており倍率の高さが伺える。こんなに人がいたら、俺無理じゃね?と思えてくるレベル。

 長い行列に並んでから約十分すると、やっとのことで受付を済ませることができた。

 その後試験会場に行き、試験監督の指示に従って筆記試験の会場に移動した。筆記試験の会場は実際の教室だった。席はだいたい四十席ほど。

 俺は窓側の一番後ろの席についた。

 俺らの試験監督は前からプリントを配っていく。俺の席が一番最後になり、あとは開始の合図を待つだけになった。


「それでは今から五十分間、筆記試験を始める!」


 試験監督の開始の合図で教室にいる皆が裏返してあるプリントをひっくり返し一斉に解き始める。俺も周りに負けじとテストを解いていく。昨日のうちに暗記しておいた問題が何問ある!わかる、わかるぞ!

 俺はプリントにスラスラと記入していく。調子よく書いていたそんな俺だったが、最後の問題でミスってしまった。それは超常識問題である勇者の人数を答えなさいという問題で答えは六人であるのに、俺はハッ!こんな問題簡単だろと息巻いた結果自分を入れて七人と書いてしまった。その間違いに気づいたのは筆記試験が終わってからすぐだった。


「やめ!後ろからプリントを回収しろ。終わったやつから戦闘試験の会場へと移動しろ」


 俺はプリント回収してから教室を出てから、今回戦闘試験の会場となっているグラウンドへと移動した。

 グラウンドに着くと既に戦闘試験は始まっており、次々と受験生たちが戦闘試験を受けていた。

 戦闘試験の試験監督は誰がやってんだろうなと気になり、戦闘試験が行われている方に顔を向けるとそこには懐かしいやつらがいた。

 俺は前にいるやつらを飛び越してから戦闘試験が行われているところに飛び込んだ。


「「「「「え?」」」」」


 急に現れた俺に周りは驚きの声を上げた。だが、俺はそんな周りの反応お構いなしに今目の前にいる試験監督たちに声を掛けた。


「よお!久しぶりだな勇者諸君」


 俺が声掛けたのに六人いる勇者たちは誰一人として反応してくれなかった。あ、あれー?忘れられたのかなー?なんで反応がないんだ?と困っているとセイバーであり剣の勇者である女の子が口を開いた。


「貴様は誰だ!」


「マジかよ…俺ってそんなに印象無かったけ?」


 まさかの誰だよ発言されてしまいました。


「試験を中断させるとは何事だ!」


「それについては謝るけど、俺のこと覚えてないの?」


「貴様のような普通の顔をしているやつなんて知らん!」


 ブチッ!

 頭の中で何が切れる音がした。

 今、俺が一番気にしていることを言いやがったな!


「……忘れたって言うなら思い出せてやるよ。最強の勇者の存在を」


「何を言っているんのだ?」


「てめえをぶっ飛ばすって言ったんだよ!」


 俺の言葉にセイバーであるその子は青筋を立てながら剣を引き抜いた。


「ほう、ならば我が剣の鞘となるがいい!」


 彼女は白く輝いている美しい剣である《神剣アマテラス》を手に持ってから俺に目にも止まらぬ速さで近づき、剣を振り下ろした。

 ま、俺には見えてるけどね。


「《フォルムチェンジ:ソード》」


 《神全ゼクスティウス》を剣に変形させてから彼女の攻撃を受け止めた。俺に止められたのが意外だったのか彼女は驚いた顔をしていた。

 その隙に腹に蹴りを入れ込んだ。

 

「ぐっ!」


 彼女は五メートルほど後ろに飛んでいき他の勇者のところまで行った。この結果には他の勇者たちも予想外だったらしく驚いていた。


「おい、あいつ今勇者をぶっ飛ばしたぞ!」


「すげえ!速くてよくわからなかったが勇者を吹っ飛ばすなんてヤバいぞ!」


 今の戦闘を見ていた周りの受験生たちも皆驚きの声を上げていた。ただ一人を除いて。


「こら!セシル!何をやっておる!」


「げ!ノルン!」


 その一人とはシルビア王国第一王女ノルンだった。彼女はセシルの本来の実力をよく知る一人であるため大して驚くことはなかった。


「ノルン様、今セシルと仰いましたか?」


 ランサーであり槍の勇者である男の子がノルンに尋ねた。


「ああ、言ったぞ」


「ということは……」


 そこにいた勇者全員が俺の方を向き、指を指しながらわなわなしていた。


「そうだよ、俺がセシル。七人目の勇者であるオールラウンダーと呼ばれるものだ」


「セシルー!?」


 俺がそう名乗ると周りの受験生たちは様々な反応を示した。俺の名乗りを嘘だと一蹴するもの、信じて大ニュースになると騒いでいるものなど様々だった。


「本当にセシルなのか?」


「何度もそう言ってるだろ…はあ、左からセイバーのエリカにランサーのジーク、アーチャーのダイナだろ。そして、ヴァルキュリーのイリスにブレイカーのガルメン、ガーディアンのミリア…これで全員だろ?」


「名前くらいは誰でも知っている。お前が本物だということを実力で示してもらおうか」


 ガルメンは三メートルほどある斧である《神斧トール》を肩に担ぎながら言った。てか、お前が戦いたいだけだろ!この戦闘狂め!


「そうだな…それが一番手っ取り早い」


 ジークはすごく綺麗で洗練された槍である《神槍オーディン》を手にしてから言った。あのー、忘れているようですが入学試験中ですよね?俺にこんな時間かけていいのかなーって思うんだ。ウンウン。


「なら、全員でいくとしよう。もう油断はしない!」


 エリカは立ち上がってからもう一度また《神剣アマテラス》を手に持ってから構えた。横に視線を移せばイリスも光輝き神々しい翼である《神翼アテナ》を展開しているし、ミリアもヒューマン一人隠せるほど大きな盾である《神戟アルテミス》を両手で持っちゃってるし、ダイナも銀色で通常の弓よりも明らかに大きな弓である《神弓アポロン》を構えてるし、もしかしなくても俺に拒否権はない感じ?

 俺は今この現状にため息をこぼし、《神全ゼクスティウス》を発動、いや変形させた。


「六対一じゃさすがに分が悪いな。はぁ、仕方ない、少し本気を出すとしよう。《フォルムチェンジ:セブンスウェポン》」

 

 そう呟くと、セシルの腕に着いていた腕輪が光ると、次の瞬間にはセシルの周りに金色に光輝く剣、槍、斧、盾、大剣、刀、鎌の七つの武器が浮かんでいた。


「何だよ、あれ…」


 周りの受験生たちもだが、俺の目の前にいる六人の勇者も驚きの表情を浮かべていた。

だが、すぐに正気に戻り、互いに睨み合う状態が続いていた。

 そして、戦闘の火蓋は切って落とされた。


「はあっ!」


 俺の目の前にいたエリカがさっきの動きよりも素早く鋭く攻撃してきた。それを周りに浮かんでいる武器の中から剣をとり、防いだ。


「甘いぜっ!」


 俺がエリカの剣を止めている間にジークとガルメンがエリカの後ろから飛び出し武器を振り下ろしてきた。それに対して浮いてる槍と斧を動かしてから空中で受け止める。


「背中がガラ空きよ!」


 後ろの方から声がすると、ダイナの放った矢とイリスの放った魔力弾が飛んできた。避けるのは無理だと判断し、盾を動かしてから防ぐ。

 それからエリカの剣を弾いてから前の三人を吹き飛ばそうとするが、盾を持ったミリアが割り込み防がれてしまった。


「くっ!面倒くせえな…」


 一度前にいるやつらから距離を取ってからさらに神器を変形させる。


「これで終わりにしようぜ!《我は世界の創造者。今こそ終焉が訪れる時。降りそそげ無限の武器たちよ。ウェポンズレイン》」


 セシルの詠唱により、頭上に無数の武器が現れた。無数の武器の矛先は全て下にいるもの、つまり六人の勇者に向けられていた。そして、ついに無数の武器が落ちてきた。





 


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