七人目の勇者ー③
冒険者ギルドを目指して、ヤンヌ山を下りたフレイヤとセシルは街までの道のりを会話に花を咲かし、歩いていた。
「なぁ、フレイヤさん。実は俺、冒険者ってどんな仕事してるか知らないんだー。だから、教えてくんない?」
「おお、いいぞ。まず、冒険者ってのは簡単に言えば、何でも屋みたいなものだ」
「何でも屋?」
「そう、何でも屋。ある時はモンスターを討伐したり、またある時には薬草を採取してきたり、またまたある時には迷子の猫を探したりと色々やるんだ」
「へぇー」
セシルはフレイヤの話に少し感心したような返事をした。
セシルの中での冒険者のイメージは毎日のようにモンスターを相手に戦い、その討伐数でお金を稼ぎ、そのお金で酒場で騒ぐもんだと思っていた。
だが、実際の人の話を聞いてみると、イメージの中の冒険者よりもずっと大変そうな印象があった。
「お金はどのくらい稼げるんだ?」
「やっぱりそこは気になるよなー。まぁ、今回だけ特別に答えてやろう」
フレイヤは少し得意気な反応をした。はっきりと言ってうざい。
「冒険者にはランクがあるのは知っているよな?」
「たしか、冒険者見習いの時がFランク、それ以降はE、D、C、B、Aの順に高くなるんだよな?」
「その通り。ランクによって稼ぎは全然違うからな。例えば、Aランクの冒険者とBランクの冒険者の稼ぎでは大体金貨三枚分くらい変わってくるな」
「そんなに!?」
「ああ。でもその代わり、死ぬ危険性は増していくからなー。はぁ、稼ぐって大変だよな……」
なんだか、暗い雰囲気になってしまっていた二人だったのでセシルは話題を変えた。
「そ、そういえばフレイヤさんに夢ってありますか?」
「夢?」
「そう、夢です。なんかこうなりたいなーとかこれやってみたいなーでもいいんで。なんかそういうのって無いですか?」
「ある」
「え?どんなことですか!?」
セシルは冒険者のギルド長ならば、ものすごくロマンチックな夢を持っているんだろうなと楽しみにしながら待っていた。
だが、フレイヤから出てた言葉はセシルの予想を大きく裏切った。
「結婚すること」
「は?」
あまりにも短い言葉に思わず聞き返してしまった。
セシルは何かの聞き間違いだと思い、フレイヤに聞き直した。
「すみません、よく聞こえなかったのでもう一度言ってください」
「美人で可愛くて優しくて収入が安定している女性と結婚すること」
「増えてるから!さっきのより条件増えてるから!」
「別にいいだろ、夢くらい見たって」
「失礼ですが、フレイヤさんはおいくつ?」
「二十八歳」
その言葉を聞いたとき、セシルはこの人夢見る年齢じゃねえだろ!と心の奥底でつっこんでおいた。
「そういうお前はどうなんだよ」
「俺ですか?」
セシルはフレイヤからの質問に少し考えてから答えた。
「やっぱり普通の日常を送ることですかね」
「なんだそれ」
フレイヤは怪訝な顔をしたが、セシルはその反応は予想はしていたので肩をすくめながら答える。
「七歳までは普通の農家の家に生まれてから普通の日常を送っていました。しかし、七歳になってから、何故か勇者に選ばれてからはゆっくりと過ごすことができなくなっていたので、やっぱり普通の日常を送ることが一番だなと思いました」
勇者には勇者の悩みがあるんだなと思ったフレイヤであった。
そんなこんなで話していると、いつの間にか冒険者ギルドの前にまで来ていた。
フレイヤはその扉を開けてから中へと入った。セシルはフレイヤのあとに続いて中へと入った。
「ただいまー」
「あ、お帰りなさい!ギルド長!」
受付嬢は何やら机の上で作業をしていたが、扉の開く音に反応してから顔を上げると、ギルド長が入ってくるのが見えた。
フレイヤはセシルを連れて、二階へと行き、ギルド長室に入った。
「さてと、今日のうちに城へと向かうが何か必要なものとかあるか?」
「俺は特にありませんよ」
「そうか、なら、俺は今から少し準備するからちょっと待っててくれ」
「りょーかい」
フレイヤはセシルの返事を聞いてから、部屋を一度出てから準備をし始めた。
「あれ?ギルド長何しているんですか?」
「ああ、今から城に向かうからその準備でな」
「ってことはですよ!見つかったんですか!?七人目の勇者が!」
受付嬢は目をキラキラと輝かせて、まるで「どんな人なんですか?」と目が語っていた。
受付嬢の少しばかり子供っぽいところに苦笑しつつもしっかりと答えた。
「俺の後ろにいたやつ」
「えっ!あのめちゃくちゃ普通そうな男の子がですか!?」
「ああ」
受付嬢は信じられないといった表情をしていた。その反応を見て、まぁ、そりゃあそうかとフレイヤは苦笑いした。
準備を終えたフレイヤはギルド長室にもどり、セシルを迎えにいった。
「すまない、待たせたな」
フレイヤはギルド長室でゆっくりしていたセシルに声を掛けた。
セシルはその声に反応し、席を立った。
「いや、そこまで待ってない。それよりも準備が済んだのなら早く行こう。王女様が待っている」
「そうだな」
フレイヤはセシルを連れて冒険者ギルドを出てから、城へと向かった。
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