第5話 脱シルバー

 俺はシルバー帯の攻略が見えず、この日はサブアカウントでどこかのグループに入り、ノーマルで遊んでいた。味方はなかなかの強さだ。俺はサブアカなので、あまり使わないチャンピオンを選んでいた。


「あ~、これ逃げれないか………」


 味方が一人殺されて、近くに居た俺が敵二人に狙われた。俺はリコール(味方陣営にワープできる魔法)を行っていたが、詠唱時間がかかるため、敵二人の方が早く来てしまう。覚悟を決めて戦った。


「うまッ!!」


 どうやら、味方の誰かが見ていたらしく、その声が味方の会話をかき消した。沈黙の後で俺が二人を撃退したのだ。


「ダブルキル」


 正直、勝てるとは思っていなかった。その証拠に、俺は瀕死だ。生きていることが不思議なくらいだった。


「相手のurtをQで避けた。」


 『うまッ!!』と叫んだ人が驚きながら説明する。それくらいは誰でもできる。驚くことのものではない。俺はこういった。


「たまたまですよ」


 そのゲームは味方も悪くなく、余裕で勝利を収めた。次のゲームだ。過去にメインチャンプにしていたフィ〇ラを選んだ。レーン戦の相手はカミー〇だ。相手のQやパッシブに注意しながら戦えばいい。俺はレーン戦を有利に進めていた。また、味方の一人が殺された。


『またか………』


 さっきと同じようにまた挟まれたのだ。味方ジャングル内に敵がいる。しかもtop側、ヘルスもあるらしく、俺は既に捕まる位置にいた。


「やるしかないみたいですね。」


 俺はそう言って相手のカミー〇に挑んだ。相手のヘルスはないのでタワーダイブは味方がやられる前から考えていた。俺は強引に攻めて相手を倒した。


「うまッ!!」


 先程の男の方が再び称讃の声を挙げる。


「カミー〇のultをフィ〇ラでWした!!」


 『よく見ているな』俺はそう思って再びこう返した。


「たまたまですよ」


 なかなかシヴィアなことかもしれないが、そんな難しいことではなかった。味方のjgも近くに来ていてくれてたため、敵のjgが弱った俺を狙いに来た時、敵のtopがいないので、敵jgが不利な状況に陥ったのである。味方jgの人は俺が称賛されて唸っていた。このゲームにも勝てた。先程唸っていたjgの人がこんなことを言ってきたのだ。


「チャレンジャーの方ですか?」


 俺は笑って返答した。


「俺なんかがチャレだと言ったらフェ〇カーさんに失礼な話だ。」


 フェ〇カーというプレイヤーは有名で、Lo〇最強のmidプレイヤーだ。S〇Tチームに所属し、S〇Tの選手は有名な方々が多い。ベンチにいる選手にもベストメンバーに選ばれないのが不思議なくらいの選手も多い。しかし、S〇Tは人材がそろっていても、それを活かすことができない残念なオーナーチーム、あろうことか、今ではフェ〇カーがベンチ入りしてしまったのだ。


『S〇Tもここまでくると馬鹿だよな。フェ〇カーの御蔭で今まで優勝できたのに、優勝できる確率を自分から0%にするなんて、フェ〇カー使わないなら俺にくれよ。俺がチーム作ってフェ〇カー選手を使い優勝狙うのに!!」


 S〇Tは優秀な人材が豊富なのに宝の持ち腐れは周知の事実、S〇Tのベンチにいたピー〇ッツ選手もS〇Tから他に引き抜かれる始末だ。ピー〇ッツ選手は有名で実力もあり、S〇Tを抜けてから大いに活躍している選手で、ピー〇ッツ選手が大会に出られるのを待ち望んでいたファンも多い。ファンの声からは『フェ〇カーもS〇T辞めればいいのに』という声も聴くくらいだ。


「実力があるのに、世の中のクズが上にいるせいでピー〇ッツ程のものですらベンチに入る。か………」


 この頃の俺はシルバー帯で最も苦しませる魔境の中の魔境、銀3にいた。味方の銀3や銀2が余りにも下手すぎる。初心者と何も変わらない。味方にアンランク(新規プレイヤー)の方が来てくれる試合の方が勝てたのだ。アンランクはゲームのことをわかってない。だが、退却ピンを鳴らすと下がってくれる。味方の銀3や銀2はピンを鳴らしても下がらない。この差がとてもでかいのだ。


「ち、こいつも銀2か………レポートしよ」


 ここでシルバーがなぜ魔境なのか説明しよう。新規プレイヤーはランクを持たない状態(アンランク)、から振り分け戦をする。振り分け戦で、すんなり入れるのが銀2や銀3である。銀2や銀3に振り分けられたプレイヤーは時分に自信を持つ。


―――俺はブロンズ入りではなかった!!―――


 そう過信する新規プレイヤーは多い。そして、金5に振り分けられた新規プレイヤーはもっと酷い。


「頭の中は女しかないように、ゲームでも無双することしか考えていない猿が多すぎる。」


 そんな時だった。プラチナのフレンドの人からメッセージが来た。


「調子はどう?」


 このプラチナの方は非常に強く、弱チャンピオンとなってしまったカタ〇ナでも素晴らしい戦いを魅せてくれる。


「魔境を感じていて銀2の100LPまで来ましたが、初心者のように弱い味方しか引きませんよ。」


 俺はそのプラチナの人とduoを二回だけしたことがある。カタ〇ナもナーフ喰らっていたので、その人が寧ろ足を引っ張っていた。だが、後半はマクロ差で勝てた。


「君が銀にいるのはおかしい。俺が変わって上げよう。」


 俺は何を言っているのかわからなかった。


「いや、いくら何でも、カタ〇ナが弱くなってから流石にこの魔境は辛いと思いますよ?」


 彼はその言葉を聞かなかった。


「二日で金にしてあげるよ」


 俺は半信半疑にお願いしてみた。もし、本当にこの魔境を突破できるなら、実力というものがあると証明されるだろう。俺は見てみたくなった。


「お願いします!」


 それから二日間、ログインしなかったのだ。スカ〇プで聞いてみたところ、こう返事が返ってきた。


「金になれたよ」


 俺は目を疑った『本当になっていやがる』俺のランクがたったの二日で金になっていた。


「確かにやばいの来るし暴言チャットちょっとしちゃったよw」


 その人が使ったチャンピオンはフィ〇だった。勿論、カタ〇ナで試合してるものもあった。


「流石ですね。そこら辺のプラチナ姫やゴールドのゴミくずとは違ってあなたは本物のプラチナだ。ゴミくずダイヤもいますが、あなたはそんなダイヤ以上です。」


 俺はプラチナの力を再確認した。そして、試合のリプレイを見て研究した。その人はtopもやっていたのだ。


「フィ〇、op(強)過ぎる。」


 強すぎるチャンピオンをopチャンプという。これは参考にならない。俺はダリ〇スのリプレイ動画を見てみた。これならtopで分かりやすかった。できればプラチナの人の解説が欲しかったが、居ないのでは仕方がない。試合を見ていると俺は真っ先にわかったことがある。


「味方最悪だな。ここでtopのTP(テレポート)を使わせるとか、頭悪すぎだろ。」


 当然、そこでの戦いはtopがTPしても勝てないため、topはTPを途中でやめた。味方の4人が死亡したのだ。


「おいおい、これってまさか、またTPを無駄打ちさせるんですかねぇ~」


猿の味方の所為でまたTPを打ってキャンセルしたのだ。


「あそこに敵三人いるのもわからないとかマジやばい。ワードもいい位置にない、これはTPもただ無くなるだけだな。」


 どの試合を見ても、いいTPはなかった。これではTP持つ意味が無い。味方がTPを考慮していないのだ。


「いや、待てよ………」


 味方の動き方は最悪だった。しかし、味方がtopのピンに従っている。退却をしてくれているのだ。勿論、しないやつもいる。味方のプラチナがいるとも知らず、それでもゲームに負けるシルバーの猿は多い。あのプラチナの人も常勝と言う訳にはいかなかった。


「そうか、TPを無駄打ちして、TPのCD(クールダウン)を表示させ、全軍を退かせているのか!!」


 そう、諸刃の剣、背水の陣、チャレンジャーやプロの世界では笑われても仕方ないクソな試合だ。だが、シルバーの猿野郎たちもTPがないことをコールすればその場から退いてくれる。ということだ。


「そうと分かれば実施あるのみ!!」


 俺は開始早々、botがレベル差着けられてダブルキル取られるところにテレポートを使ってやった。勿論キャンセルするために打ったのでマジでbotに行ったりはしない。しかし、このTPは無駄で、topはTPを失った。これはレーン状況も悪く、topはいきなり追い詰められる。そう、俺のレーンだけが『絶対に勝たなければならない』状況になるのだ。俺はすぐにチャットした。


「botレベル先行されてるだろ!! そんなことも知らないでランクしてんのかよ!!」


 俺はそうチャットした後でTPのクールダウンを連打した。味方のbotはその後から、俺の退却ピンに従うようになっていた。


「よし!! botが言うことを聞いてくれた!! これはでかい!!」


 ゲーム上のマイナスはとても大きい。しかし、botが言うことを聞くようになった。これはでかい。なぜなら、相手のチームも猿だからだ。


「猿vs猿ならチームワークしている猿の方が勝つ!!」


 こっちのチームの大将、俺の言うことをbotが聞くようになった。三人もいれば十分なのだ。因みに、今ランクをしているのはサブアカウントの銀3で、トロールの味方の名前はある程度覚えている。敵にトロールが一人居る。負けるわけにはいかない。


「俺のレーンは勝っているが、腐っているmidは来ないでくれ、負ける可能性が出て来る。守ることもできないならLo〇をやめろ!!」


 俺はきついことをたくさんチャットした。だが、結果は出した。まるで、ヤクザみたいなことをしていていい気分ではない。


「おい、midそれ以上行くな!!」


 俺はチャットした。しかし、midは言うことを聞かなかった。その時、TPが上がっていた。俺はTPした。勿論、そこに飛ぶ気はない。midが殺されたのを確認してTPをキャンセルした。TPダウンにmidのキル、そのマイナスは計り知れない。


「おい、mid貴様負けたいのか? チーム全員からレポートされて永久停止を喰らいたいのか? 言うことくらい聞けや!!」


 そうチャットした後でTPが無くなったことを表示し、他の最前線にいる味方全てに退却ピンをした。


「お前の所為でみんなが攻めれないんだ!! 次からは言うこと聞けよ。わかったな!!」


 そして、再びTPがないと連続で表示させた。シルバーは魔境だ。勝つためにはマイナスになることをしなければならない。Lo〇というゲームが崩壊しているのだ。そのゲームは味方が全員弱かったので『支配』するには簡単だった。ヤクザや暴力団がやる非人道的で馬鹿な方法だ。それをやるしかない。当然支配する人間は賢くなければならない。力だけのゴミくず野郎が支配しても負ける確率が高い。俺は味方と戦わなければならなかった。


「ダメだ。このゲーム、支配している奴の頭が悪すぎる!!」


 俺は先程のゲームに勝てたが、たくさんキル持ってるやつの頭が悪すぎて試合が怪しくなってしまっていた。


「お前いい加減にしろよな!! 今一番強いのお前だぞ!! 馬鹿みたいに突っ込んでんじゃねぇよ!!」


 そいつが腐って、密かに育っていた俺が登場した。相手はもともと腐っていた。その一番強い奴がやられて、その後で俺が入り込みトリプルキルしたのだ。


「この猿のところで戦うな!! 全滅しかしない。それに、こいつはもう腐っている!! 俺の言うことだけを信じろ!!」


 一番育っていて強かったそいつだが、№2の俺が今では№1だ。


「よし、このゲームも貰った!!」


 こういう試合は苦労する。馬鹿がそのままキャリーして試合を終わらせることもある。だが、簡単な試合もある。それはこのパターンだ。


 味方に凄い優秀な奴がいる。俺は腐ってしまった。だが、そいつは強く、賢く、ミニマップもよく見ている。そいつが味方に退却ピンを鳴らした。その味方が怪しい奴だということは既に俺も見抜いていた。


「おい、言うことも聞けないのか!! このmidクソ強いぞ!!」


 俺がそうチャットしてTPした。勿論、キャンセル前提だ。敵も俺のTPを見て視界に映った敵が次々にやって来た。俺の転移先は囲まれていたのだ。それを見て目先のことしかわからない猿達も『あれはやばい』と退却してくれたのである。俺はTPをキャンセルして、こうチャットした。


「次からはmidのピンに従えよ。猿共が」


 その試合は余裕だった。試合後に俺はこうチャットした。


「ty mid」


 すると、味方のmidから返事が返ってきた。


「いや、お前の御蔭だな」


 俺達はフレも送り合わずに次のゲームへと進んでいった。だが、ランクの道は険しい。チャンピオンバンフェイズで俺のメインチャンピオンがバンされた。そう、敵に先程味方に居たmidがいるということだ。俺は相手のバンを見て悟ったのだ。


「これはまずい!!」


 試合は負けた。その後で相手のmidが俺に話しかけて来た。


「やはり居たか、危なかったよ。」


 そいつは俺よりも一歩も二歩も先を行っていたのだ。俺は、こう答えた。


「勉強になりました。」


 次の試合に勝って、さらに次の試合に臨むとき、味方を常に見なければならない。味方は全員金4や金2だ。しかし、俺はこの時、銀2で金5~2のゴミは初心者のように弱い。そういう奴が多かった。買いアカウントや代行、そういうのが流行っているからだ。俺もメインは代行されただが、それはクズがやるような代行ではない。製造業のゴミ連中は頭が固いからわからんだろうが、俺はそれを参考にしている。もう俺は『銀に居ていい』プレイヤーではない。


「例え、味方がゴミくずゴールドプレイヤーでも、勝率は50%以上だ!!」


 敵のチームも4人がゴールドで一人シルバーがいた。俺の対面は金2と格上だ。敵にいるシルバーも金2と格上、俺とそいつはレーン戦で格上の金2をぼこぼこにしていた。


「やるな修羅に生きるシルバー!!」


 こいつを殺せば俺達の勝ち、敵の動き方は乱れが多い。こっちの味方も乱れが多い。お互いにチームが成り立っていなかった。いや、違う。今回は俺がチームを支配しなかった。しようと思えば簡単だった。


「おいおい、味方の金2はシルバー相手にぼこぼこじゃないか」

「俺も銀で相手が金2だけど、金2は雑魚しかいないのか?」


 などとチャットしてTPを捨てればいい。俺の心のどこかに余裕と油断が生まれていた。いや、違う。余裕しかなかった。相手の方がチームプレイをしている。だが、俺の使うチャンピオンが強すぎたのだ。


「弱い!! 弱すぎるぜゴールド!!」


 俺は最早勝ち負けに拘っていなかった。相手と味方が弱すぎて弱すぎて強さを示すことだけしか頭になかった。


「ペンタキル!!」

「エース」

「アンストッパブル!!」

「ゴッドライク!!」

「エース」


 俺は欲望のままにタワーに突っ込み、敵本陣のネクサス(敵の本陣でここに飛び込めばどんなチャンピオンも一瞬で殺される危険エリア)にまでダイブした。この時間帯は俺に敵うチャンピオンがいない。


「シャットダウン!!」

「ダブルキル」

「シャットダウン!!」

「エース」


 試合が終わった後で俺はチャットした。


「弱い、弱すぎる!! 敵も味方もゴールドしかいない。俺はシルバーだぞ!! 敵に一人シルバーがいるけど、そいつ以外みんな雑魚だ!! ゴールドなのに恥ずかしくないの? ブロンズからやり直せゴミくず共!! どうせ、味方のシルバーにも謝罪できなくて、敵のシルバーにもぼこぼこにされるだけの存在なんだろ!! Lo〇辞めちまえよ!! 敵味方双方のゴールドはレポートしといてやるぜ!! 辞めちまえ雑魚共!!」


 そう言って俺はそのチャットルームから抜け出した。ランクだけが立派でも、実力がブロンズでは当然の仕打ち、その鬱憤を余すことなく晴らした。そして、俺は金5へと昇格したのである。


「待ってろよプラチナの姫共!! 俺がお前らをボロクソに罵ってやる!!」


 金5になった俺は最早、金に慣れた喜びなどなかった。あるのはただただ、ゴールドやプラチナのクズ野郎への殺意だけだったのだ。

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