第2話 sup専の姫と男性プレイヤー

 いつものように俺はLo〇を起動させた。今回はノートパソコンの下に保冷材はない。ノートパソコン用のクーラーだ。こいつのおかげで制限時間は無くなった。やり放題である。


「よくわかんないけど、レオ〇というチャンピオンはsupらしいな。supってのを折角だし覚えていくかな。」


 俺はレオ〇のビルドを調べた。今はないが、前にはサイトストーンというものがあった。


「この青い眼玉みたいなの可愛い!!」


 俺はサイトストーンがやけに気に入ったのである。このサイトストーンはアクティブアイテムでワードを三つ置くことができる。ワードを置く場所は重要だ。だが、俺にはどこに置けばいいのかもわからなかった。


「ピンクワードって何?」


 今でいうカウンターワードだ。supに行きたがる紳士淑女は多い。supを教えてくれる人も多かった。勿論、殆どがクズみたいな人だったが、クズの中でもまだ教えてくれないよりはマシだった。


「この三角形の草村とかドラゴンの前にワードを置くといいよ。」

「わかりやすいぜ!!」


 ドラゴン周りの視界、バロン周りの視界がとりあえず重要であると教えてもらった。今となっては、これは基礎基本の様なワードの置き方で、本当はもっと重要な視界確保があるということを後々に理解する。その話はまだ先のことだ。


「なるほど、ミニマップが凄く見やすい………」

「もっとワードを攻めておいた方がいい場合もあるけど、まぁ、今は良いんじゃないかな?」

「丁寧な説明感謝です!」


 だが、こんな関係もsupの人間がクズだと長くは続かない。Lo〇の世界は過酷で非情だ。やらなければやられる。レーン戦では殺意しかなかった。しかし、今ではそんなことはない。そう、ある日を境にして、sup専と俺の関係は崩壊した。それは俺がtopを練習している時だった。まだ経験が浅く、ミニマップも見れない俺がtopガレ〇でガンクを二回も貰ってしまったゲームのことである。


「何やってんの? ナサ〇育ったらもうこのゲーム勝てないでしょ!!」

「お、おう」


 俺のレーンだけが崩壊していた。崩壊と言っても、相手のjgもヌーブなため、ナサ〇のレベルも離れたわけでもないし、ナサ〇のスタックも堪ったわけでもない。俺のガレ〇もまだ戦える。だが、supしか知らない紳士淑女はもうこのゲームきついと判断している。


「ちょっと、どうして前出るの!!」

「そうだぞ!! いい加減にしろよ!!」


 俺はあまりにも一方的に言われているので流石に我慢の限界が来た。


「相手アルティメット(ult)使っただろうが!!」


 俺はキレた。攻め時だったのだ。ここでナサ〇をリコールさせるわけにはいかない。ここでリコールされたら、レベル差がついてしまう。俺はたった一人でナサ〇と戦っていた。目の前の様な距離にsup専の味方が二人もいるのになぜか1vs1だ。本当なら3vs1だったはずだが、なぜか誰も来ない。


ガレ〇「ジャスティーーーース!!」


 俺が扱うガレ〇のultが発動した。相手のナサ〇はデスを落とし、ガレンとの有利さはなくなった。


「お前らsup専とは違ってtopもやってんだよこっちは!!」


 そう言って俺のガレ〇がそのまま育ち、止まらなくなってGGと試合が終わってしまった。試合が終わった次の日、sup専の紳士淑女は俺のフレンドらんから消えていた。


「これがJP鯖のsup専か………まるで今の日本人みたいだぜ………」


 だが、悪いことばかりでもなかった。同じくプレイしていたプレイヤーで一人の者が俺に興味を持ってくれた。なんと、元プロプレイヤーで実力はチャレンジャークラスだった。


「君結構やるじゃん。よかったら一緒にランクしない?」


 そう誘われたが、俺は断った。初心者の俺でもこいつの実力はとんでもなかった。


「ノーマルからでいいですか?」


 そいつは不満そうだったが、それでもokしてくれた。俺は、supでその元プロプレイヤーはadcだ。相手のjgがガンクに来た。丸見えだった。俺はすぐにその場から逃れるように後ろに下がったんだ。だが、そいつは未だに逃げずミニオンを攻撃し、CSを取っている。


「おい、逃げるな逃げるな!!」

「え!? 相手のjgはもう目の前まで来てますよ!!?」

「勝てる勝てる」


 俺はビビりながらも一生懸命にsupした。正直、逃げ腰で、ちゃんとsupで来たわけでもない。だが、奴は一人で1v3に勝ちやがった。


「ナイスバリア」

「お、おう」


 俺はその時思った。チャレンジャーが姫をマ〇ブーするということ、しかし、これはそうではない。チャレの姫プはうわさでしか聞いたことがないため、よくは知らないが、姫を突撃させ、味方のsupを生贄にダブルキルを取る。非情なやり方だ。だが、今回はどうだろうか、supは後ろにいた。


「相手のjg足並みそろえて来なかったから、俺でもなんとかなりました」

「そうだな。よく見てるじゃないか!」


 その試合は余裕で勝利してしまった。その後でこう言われたのだ。


「俺と1vs1してみるか」


 俺はこう答えた。


「勝敗は火を見るより明らかだ。」


 そういうと相手はこういった。


「なら、ヘルス半分まで減らした状態でやってやるぜ」


 相手はハンデを背負うというのだ。いくら何でもそれはさすがにと思った。


「俺、これでもブロンズ4の時、ゴールド(雑魚)に喧嘩売って1vs1勝った男ですよ。」


 そう脅してみたが、相手は全く怯んでいなかった。半信半疑で俺は勝負してみたのだ。だが、まさかの敗北をしてしまった。


「危なかったわ。」

「本当ですか?」

「こっちはヘルス半分だからね。」


 それからこの元プロプレイヤーとしばらくご一緒させていただいた。当然、始めたばかりの俺ではミクロは足りていても、マクロは足りていなかった。


「これいける!!」


 俺がjgでジャー〇ンⅣをやってた時だ。この頃の俺はすっかりキルに貪欲になってしまった。元プロが行けると言っている。しかし、俺には何のことかさっぱり分からなかった。


「わかりました!!」


 近くだったので行ってみたらなぜか相手がタワーダイブしてきたのだ。まだ低レベルだというのに、そんな危険なことをなぜするんだ。俺は意味が分からなかった。


「ノックアップ決めました!!」

「ナイス!!」


 結果、キルが貰えたのだ。当然キルはjgではなくmidが取った。


「今のなんで相手タワーダイブしてきたんですか?」

「さぁ?」


 このやり取りで俺にはこのプレイヤーが何を考えているのかさっぱり分からなかった。わかることがあるとすれば、このプレイヤーは強い。そして、俺はこの人の役に立てないということだけだった。


「これも行ける!! 来てくれ!!」

「解りました!!」


 しかし、ここで俺はガンクを決めることができなかった。レーナーが来てくれと言った時、既に危篤な状態だった。俺が目の前までブリンクした時には、midは殺されていた。


「ちょっと遅かったけど仕方ない」

「mb(my bat)」


 そのゲームはなんだかんだでプロプレイヤーが無茶な戦い、たった一人で三人相手にしたりと無謀なことばかりだった。それでもダブルキルを奪ったりしてくれたし、味方が三人いないときも俺とその人で相手のタンクだけ残して4人殺し、タワーやインヒビターを守り抜いた。結果は負けてしまった。


『無謀な戦いが多すぎる。いや、俺がうまければ勝てるのかもしれない。』


 少なくとも、今の俺にはわからないことだ。


「ちょっと他の味方が弱すぎたな」


 彼はそう言って俺にいつも名誉を送ってくれた。俺も送り返していた。彼はもうLo〇のゲームを辞めてしまった。そのきっかけはフォートナ〇トだ。FPSもできるみたいで、かなり強かった。放送などもして、プロチームに入ってしまったのだ。


「まさかFPSもできる人だなんてな」


 まるで雲の上にいるような人間だった。俺はFPSはしたことがないから、彼にフォートナ〇トを誘われた時、それを断るしかなかった。ある意味では、彼に着いて行った方がよかったのかもしれない。しかし、俺の中では何かが変わっていたのだ。目の前に元プロプレイヤーの人間がいた。その人と一緒にプレイした。それが俺の成長へのきっかけとなっていた。


「もう少しだけLo〇をやろうと思っているんですよね」


 俺の中で、何かが変わり始めていたのである。

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