ヤバイ映像が見れる部屋5p

 彼は、わずかに忌々しそうな表情を浮かべて、棚に手を伸ばし、棚から、ラベルに№152と書かれたビデオテープを抜いた。

 彼は、初めの戸棚はビデオテープのラベルを確認していなかったので不明だが、ビデオテープが№1から存在するとして、彼が手にしている№152のビデオテープが最後のビデオテープという事になる。

 彼は、ライトの光をビデオテープに当てて、表返し、裏返し、よく見て見た。

 そうして良く見ても、それは何の変哲もない、どこにでも市販されている録画用のビデオテープだった。

 録画時間は百二十分。


 一本のテープに二時間録画されたビデオテープが№1から№152まで。


 百五十二本にも及ぶこのビデオテープに一体何が録画されているのか。


 彼は№152のビデオテープを片手に持ち、立ち上がると、テレビの前まで移動した。

 彼がテレビをライトで照らすと、灰色のブラウン管テレビにビデオテープの挿入口があるのが見えた。

 テレビはテレビにビデオが内蔵されているテレビデオであった。


 こんな物、まだ使っている人間がいるなんて、と彼は心の中で笑う。


 彼は視線とライトの光を辺りにさ迷わせる。

 そして、目当ての物を見つけた。

 テレビのリモコンだ。

 リモコンを手に持つと、それにライトの光を向ける。

 彼は、何とか使い方が分かりそうだと頷き、№152のビデオテープをテレビのビデオ挿入口に入れた。

 ビデオテープが挿入口に飲み込まれると、テレビの電源を入れ、素早くリモコンの音量ボタンを下げてから、チャンネルを操作する。

 チャンネルをビデオが見られるチャンネルに合わせ、リモコンの再生ボタンを押した。


 テレビに映し出された映像は黒かった。

 ただただ黒く、何も映ってはいない様な風だった。

 十分ほど、彼はテレビに映った黒を眺めていた。

 しかし、テレビ画面には何も映し出されない。

 ただ、黒いだけだ。

 そのあまりにも単調な事に、テープは本当に再生されているのか、と、彼は疑い、確認してみたが、きちんと再生されている様だった。

 

 このテープには、本当に何も映っていないのではないか、と彼に思わせるほどに映像には何の変化も無い。

 退屈の一言の物だった。

 ふと、思いついて、彼は、リモコンを操作し、テープを早送りにしてみた。

 だが、早送りにしてみても、映像の黒は変わらなかった。

 彼が、落胆のため息を吐き出した時、テレビ画面に一瞬、色が映った。

 ハッとして、彼はテープを巻き戻す。

 巻き戻すと、さっき見た色が見えた。

 慌てて、その手前で巻き戻しを止める。

 そうして、テレビ画面をじっくりと見つめる。

 しばらく、馴染んだ黒い映像が続く、と、ぐらりと映像が乱れる。

 彼は目を見開く。

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