水も滴る部屋27p
その様子に茅野が「どうしました?」と声を掛ける。
「な、なんか、サイトから、先生の部屋の記事が消えまして。記事が……削除されたみたいですねぇ……」
「うわぁー、タイミング最悪」
茅野と紺谷は、気まずそうなお互いの顔を見つめ合い、そして、二人揃って、「あ!」と声を上げだ。
二人のテーブルの横を通ったカフェの店員がブラッディチョコレートパフェを五つ乗せたトレイを両手で持ち、慎重に運んでいるのが二人の目に入ったからだ。
茅野がカフェに来てからまだ注文をしていない事を二人揃って思い出したのだった。
茅野が紺谷との打ち合わせを終えて、そのままアルバイト先であるコンビニへ向かい、アルバイトを終えたのは終電がもうそろそろという時間だった。
今、茅野は帰宅途中で、駅から緑頭花荘までのわずかな道のりを重たい物でも背負っているかの様に歩いている。
アルバイトが終わってから、茅野の頭の中では、疲れたという言葉がぐるぐると回っていた。
早く眠りたかったが、そうはいかない事を思い出すと、暗い夜の闇は茅野を、このまま消えてしまいたい、と言う気持ちにさせた。
はぁ、と茅野は何度目かのため息を吐く。
ため息のついでに茅野は、藤宮に借りる部屋の鍵の件について、藤宮から連絡があったかも知れない事を思い出してスマートフォンを鞄から取り出し、切っていた電源を入れた。
スマートフォンの留守番電話には、一時間前と四時間前に、藤宮からのメッセージが記録されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます