水も滴る部屋22p

「気付いていたら、直ぐに対処していましたよ。気付き様も無かったです。排水口が詰まっているとか、考えもしなかったですし。シャワーを使った段階では何の問題も無かったと思いますよ。風呂場の様子も、年季が入ってる事以外、何ら気になりませんでしたし、それに……」

「スト―ップ!」

 まだまだ続きそうな茅野の話を紺谷が強引に遮る。

「ねぇ、先生。もういいです。あの、先生、あのですね、何なの? 無い、無い! 無い! 無い! 有り得ない! 先生の話が、もう頭から有り得ないんですよ。先生の部屋、何なの? 不自然が過ぎるんですよ。全ての事が先生の言う、先生のうっかりミスとか、クリーニング業者の手抜きだとしても不自然が過ぎるんですよぉ! 先生、先生の部屋、失礼ですけど、事故物件とかじゃ、ありません?」

「え、そうですけど」

「は?」

「いや、そうですよって」

「はぁぁー? 事故物件とかって、私、半分、冗談で言ったんですけど、マジですか!」

 当然の様に出た茅野の台詞に、紺谷は愕然とした様子だった。

 しかし、その台詞の主である茅野は平然としている。

「はあ、私に部屋を紹介してくれた不動産屋さんが言う事には、確か、私の部屋に、前の前位に住んでいた方が、不審な亡くなられ方をした……とか」

「不審な亡くなられ方って、どんな」

「ええーっと、何だったかしら。不動産屋さんから聞きましたけど、覚えて無いです。え、重要な事ですか、それ」

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