水も滴る部屋21p
茅野は眉間に皺を作りそう言った。
紺谷の眉と眉との間には山の様な皺が刻まれる。
「それは、た、確かなんですぅ?」
そのはずなんですけど、と茅野は首をかしげる。
「いくら業者のクリーニングが入っているからといっても、前の住人が使ったお風呂とか、やっぱり自分で掃除してから使いたいじゃないですか。でも、私、昨日はお風呂場の掃除まで出来なくて、だからシャワーだけ使ったんですよ。そのはずなのに浴槽の方の蛇口から水が出ていて、あれっ? て。私がシャワーを使った時には浴槽の方の蛇口から水なんて出てなかったと思うんですよ。私は指一本、浴槽の方の蛇口には触れていないはずなんです。だから、不思議で」
「せ、先生……」
「でも、結果論ですよね。実際には浴槽の方の蛇口から水が出ていたんです。自分じゃあ、触れてもいないと思っていても、実際には違ったんですよね。本当、モヤモヤしちゃいますけど、私のうっかりが過ぎて使っていないつもりでいて実際にはしっかり浴槽の方の蛇口をひねっていて、私はそれを忘れて眠ってしまったんですよね」
茅野はそう言うが、しかし、それを聞いている紺谷は納得が出来ない表情だ。
「先生、そう言われればそれまでの事ですけど、排水口は? シャワーを浴びた時は排水はちゃんとされていたんですか? 先生が言う通りに排水口にそこまでビッシリと髪が詰まっていたなら、シャワーを使った時も水は流れないはずでは? シャワーの段階で排水口の詰まりには気がつかなかったんです? シャワーを使った時に風呂場に何かおかしな所は無かったんですかぁ?」
紺谷のその質問に、茅野は、少し考えて答えた。
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