水も滴る部屋14p
そう言われて茅野は、紺谷の指の先にある、メニューに載せられたブラッディチョコレートパフェの写真を見る。
茅野は、「ああ、これ、良いですねぇー」と、目を細めて頷く。
そんな茅野の表情を見て、紺谷はホッと息を漏らした。
「先生、これからです! これから二人で頑張って売れまくりましょう! 私達ならやれます! メニュー、それで注文しますね。……あ、そうだ。部屋、風呂の蛇口の閉め忘れが原因って電話で聞きましたけど、そんな風になるもんなんですかぁ? 部屋まで水が溢れるとか。風呂場の排水口が、流れてくる水の許容範囲を超えたって事ですよね?」
紺谷は、オーダーの為に店員を呼び止めようとしながら何気無い様に言う。
その何気無い言葉に茅野が、ああっ! と声を上げて反応した。
「そう! 排水口! そうなんですよ! 紺谷さん、聞いてくれます? うちの風呂場の排水口、もう、気持ちが悪くって!」
「へ? 排水口が、どうですって?」
「ええ、もう髪が凄くて」
「は? 神?」
興奮気味の茅野と違い、紺谷は何の話が始まるのかと不安そうに眉を寄せている。
「髪です、髪。毛髪ですよ。いやね、私、起きたら部屋じゅう水浸しで、ビックリで、ああ、兎に角、水を止めないとなって思って、キッチンから始めて水回りを調べたんです。小さな部屋ですから直ぐに風呂場から水が溢れ出ている事は分かったんです。脱衣所と風呂場を繋ぐドアから大きな音を立てて、蛇口から水が流れている音が聞こえましたし、ドアの隙間から水が入って来ていましたから。私は慌ててドアを開けて風呂場の中に入りました」
夢中で話す茅野に、紺谷は、それで? と聞き手らしく尋ねる。
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