遺跡
21世紀後半、SFの世界の産物に過ぎなかったスペースコロニーが次々と建設され始めました。
百億を越え、増えすぎた人口を地球から切り離すために。当初は物珍しさと人類の最先端を体感できると言う事で移住者も多かったのですが、その環境は正直最悪でした。
20世紀より宇宙飛行士によって集められ続けていたデータが、予想外に役に立たなかったのです。
かつてのスペースシャトルやソユーズと呼ばれる宇宙船に使われていた、いやそれとは比べ物にならないほど上質な外壁を使ったのですが、それが予想外に無力だったのです。人類が英知を結集して作り上げた代物がね。
宇宙線と言うのは強い放射線、つまり放射能です。
20世紀より、人類はこの放射能によって何十億の人的損害を出し、同時に何十億の人間もの生活を支えてもらってきた訳です。無論生活を支えてもらう、すなわちソーラーエネルギーと共に宇宙線のエネルギーも人類は発電に利用したわけですが、それ以上に人的損害が大きかったのです。
えっ?宇宙線を利用した核兵器?いえ、それ以上に大きかったのは、宇宙線そのものの害だったのです。先程も述べたように、宇宙線と言うのは強い放射能です。かつての宇宙船はちゃんと耐えた?それはそうです。しかし、宇宙船なんて言う物が宇宙にいるのはせいぜい半年から一年。コロニーの中では一生です。
その間にゆっくりと被ばくを繰り返し体に蓄積された放射能は、確実に我々の体を蝕んで行ったわけです。
その結果、ガンと白血病はコロニー住民の国民病と化し、コロニー住民の平均寿命は地球人と十歳、いや二十歳以上の差が付きました。
当然、この状況を目の当たりにした地球に残った人類はまだ宇宙進出は早すぎたと言う判断に至り、コロニー建設及び宇宙への移民中止を発表したのです。
ですが、それは実質コロニー住民を見捨てるような決断でした。いや、人類が未来永劫生き延びるためには仕方のない犠牲だった……と言う理屈は綺麗事ではありますがわかっています。
しかし、例えそうであったとしても感情としてそれを受け入れられるはずがありません。ましてや、この時百億の人口の内ほぼ半数が宇宙への移民を済ませていました。彼ら宇宙移民は地球の決定に憤りました。
そしてやがて、地球対宇宙と言う余りにも悲しい戦争が始まったのです。しかし宇宙と言う貧しく厳しい土地に適応しようとした結果、コロニー住民の身体能力は地球人を大きく上回り、その結果戦いは宇宙側の勝利で終わり、地球に残っていた人類は地球環境再生のためと言う名目で一人残らず宇宙に上げられたのです。26世紀の事でした。
ところで、私は戦争終結から500年後、31世紀の人間です。しかしコロニーの居住環境は依然として過酷です。
此度人類がいなくなって500年、人類のゆりかごであった地球のかつての文明を調査しに地球に降りた所です。
先も述べたように、コロニーの環境は依然として過酷です。その結果、コロニーの住民たちはいわゆるネオテニー化が進んだのです。
そんな我々が、かつて人類が利用していた施設、まあ遺跡と言うべき代物に入った時、抱いた感想は全員同じでした。
「天井高っ!」
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