占い

「何だよ、珍しい色の傘だな」

「そう?」

「お前いっつも赤い傘じゃねえか。なんで今日は紫なんだ?」

「だって、今日のあたしのラッキーカラーは紫なんだもん」

「ラッキーカラー?」

「そう、牡牛座のあたしのラッキーカラーは紫なの。で、浩樹って何座だっけ?」

「えっと、水瓶座だけど?」

「なーんだ、やっぱり占い気にしてんじゃん。その真っ黒なシャツ」

「は?」

「今日の水瓶座のラッキーカラーは黒なんだって」

「そ、そうかよ……で、他に何か言ってたか?」

「うーん、そう言えば、今日はあまりお金を使わない方がいいって」

「マジかよ……後で新しいTシャツでも買いに行こうと思ってたのに」

「大丈夫、私が付いていれば。今日の牡牛座は自分の事より人の事を決めてあげるのが吉だって言ってたから!」

「そうかよ……じゃ一緒に行くか」





 とか言う恋人の他愛ない会話が街角で繰り広げられていた頃、教会では


「にしても、今日の説法はずいぶん素晴らしかったですね」

「ああ、今日の神父さんは何か輝いてましたよ」


 月に一度の説法に訪れた人々が、非常によい説法が聞けたと満足そうな顔をしていた。

 そして、満足そうな顔をしていたのは神父も同じであった。


「主よ、今日はまた一段と素晴らしいお言葉を戴きました。皆を救うという意欲に満ち溢れたあなた様のお言葉、我らは生涯忘れませぬ」

 神父はいつも以上に感謝した様子で、キリスト像に向かって深々と頭を下げていた。




 さて、ここで先程の恋人たちの会話に戻ってみよう。


「でさ、今日一番ラッキーなのはズバリ何座な訳?」

「えーと……あっ確か山羊座よ!今日のあなたは心身ともに気力に満ち溢れていて、何をやってもうまく行きそうです。今日のあなたの言葉には普段とは桁の違う重みがあります。多くの人の信頼を勝ち取り、相手の不安や危惧を取り除く事ができるでしょうだって!ラッキースポットは……ええと、確か教会!」

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