とある戦場にて
「くそっ……いつまで戦いが続くんだ」
「諦めろよ、俺たちの戦いは永遠なんだ」
あまりにも悲しい宿命かもしれない。でも、元より俺たちの戦いなんてこんなもんだ。毎日毎日休みなく戦いを強いられる。休みなんかない、俺らが休めるのはそれこそ死だけ。ブラック企業?そんな生易しいもんじゃねえ。
「敵軍は?」
「270って所だ」
「本当なら200そこそこだろ、多すぎるだろ」
「炎熱魔法は」
「使われてるよ」
俺たちの武器は、基本的に熱だ。熱による攻撃により相手の戦力を減退させる。そして敵をよその側に追いやり、そこの部隊にやらせる。それが基本的な戦い方だ。だが絶え間なく敵は供給されてくる、特にこの時期はその炎熱魔法が使えないのが辛い。
「ったくもう、春も夏も秋も冬も俺らの戦いは終わらない!とくにこの冬の時期はよぅ」
「夏よりマシだろ」
「夏は夏で敵軍が多いからな、その分炎熱魔法の使い手も元気だが」
「敵軍の冷却魔法の威力が強すぎるんだよ!」
冷却魔法と言うのは敵軍の主力魔法だ。この攻撃により次々とやって来る援軍は力が付き、こちらは苦しくなる。他に、大地の魔法と言うのもある。これはこの戦場にはいない、第三者が使う魔法だ。この魔法により自分たちはバランスを失い、敵軍にこの場を突破する隙を与えてしまう。
「あとどれだけ耐えればいいんだよ!」
「5分だ」
「5分も持ちますか、敵軍がさらに15ほど増えましたよ!」
「285か……なんとかして持たせなければならない」
最大限で500まではいける――――らしい。でも実際、自分たちはまだまだ新兵だ。たかだかキャリア数年の新兵ではもうそろそろ限界だろう。だが、耐えなければならない。
「お前たち、総大将にこれ以上恥と責任を背負わせる気か!?耐えるのだ、こんな厳しい戦いはそうそうないのだぞ!」
「ええ……」
総大将。そう、我々の軍を仕切る幼き総大将は我々の戦いに相当な期待を寄せている。まだ自分たちが存在すらしない頃には幾度も破れ続け、その度に涙を流して来た。少し前までは夜戦での我々の敗北の責をお取りになられ悲しまれる事もあった。最近では夜戦での敗北もない、ましてや昼間の戦いで敗北する事などあってはならないのだ。
「だ、大地の魔法だ!」
「あわてるな、これは吉兆かもしれん!」
「吉兆……」
「最後の最後まで耐え抜くのだ!」
俺たちは突如飛んで来た大地の魔法に負けじと最後の気合を込めて、身を構えた。この先へと浸入せんとして来る敵軍を一兵たりとも通してはならじと、俺たちは持てる力を振り絞った。
――――そして。
「全軍散開!」
「勝利という事ですね!」
「ああそうだ!!」
俺たちは隊長の命に従い、敵軍を通過させた。そうだ、俺たちはこの戦いに勝ったのだ。この時だけだ、俺たちが休めるのは。でもまた、戦いが始まる。あーあ次の戦いはもうちょい敵軍が少ないうちに終わってくれるといいなあ、はぁ~…………。
*********************
「はぁ~…………」
「良かったな本当」
「もうちょいでもらしちゃう所だったよ」
「お前もよ、我慢しないで素直に言えよな先生に、ションベン行きたいんですって」
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