北風と太陽とウサギとカメ
昔々ある所に、北風と太陽とウサギとカメがいました。
「全く、カメさんはどうしてそんなに足が遅いんですかね。見ていて本当イライラしてたまりませんよ」
とか何とかウサギが言うものですから、ウサギとカメは競走を始める事になりました。それを、ちょうど太陽と北風が見ていたのです。
「私たちも一勝負しませんか?」
「よし乗った!」
自分たちもとばかり勝負を持ちかける太陽の言葉に、北風も応じる事になりました。
「じゃまず俺から行かせてもらうぜ」
北風はそういうと強い風を起こしました。すると跳ねて進んでいたウサギはたちまちにして転んでしまいました。一方で元々姿勢を低くして進んでいたカメは足がやや鈍ったものの前進を続けました。
「なるほど、そう来ましたか。それでは私も参りますよ」
続いて太陽は暖かい日差しを放ちました。その結果ウサギとカメが競走していた地上は暖かくなり、ウサギは心地よさの余り昼寝を始めてしまいました。その一方、北風のおかげで温度が下がり動きが鈍くなっていたカメは暖かくなって行動が活発化し、前進の速度を上げました。
「そう来るか……なるほどな、じゃ次はこれでどうだ」
今度は北風が上り坂に差しかかったカメを後押しするような追い風を吹かせました。その結果カメの足は速くなりましたが、ウサギもまた温度が下がった結果昼寝から目を覚ます事になりました。
「おやおや……それではこれでどうです?」
すると太陽は強い日差しでウサギとカメの競走のゴールである大木へ続く道を示した看板を燃やしてしまったのです。その時まだリードを保っていたカメはその看板を既に通過していましたが、ウサギはまだ通過しておらず道を探して混乱してしまいとんだタイムロスになってしまったのです。
「じゃあ俺はゴールの大木の葉っぱ全部散らしてウサギを惑わしてやろうか」
「カメさんがゴールが分からなくなるじゃないですか!私の力で木を育て直します!」
その後も北風と太陽は相変わらずの争いを繰り広げました。そして、ウサギとカメがゴールにたどり着いたのは全く同時でした。
「この勝負、引き分けですね」
「ああ、そうだな。太陽よ、次は決着を付けさせてもらうぜ」
北風と太陽はそう言って去って行きました。えっ、この戦いの勝者ですか?さあねえ、北風と太陽はお互い引き分けだって認めてますし……あっ、敗者ならいますよ。北風にも太陽にもまったく応援されなかったのが……。
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