第29話 きき耳

今日は診察があり、バスに揺られ病院に向かいました。


市バスで40分はかかるので、かなりの時間をそのバスの中で過ごします。


少し街中の工業地区や団地や住宅街をゆっくりと通過し、遠くを見れば、山や空が広がっています。


平日の午後でも、日により混み具合が違い、その理由は今だわからないままです。


私は週に一度のこの時間、少しストレスが自然解消されます。


日により、私の心や頭の中はまちまちなのですが、バスの中は基本的にゆっくりとした時間が静かに流れていて、それに身をゆだねていると、いつもと違う人生を生きてる軽い錯覚が心に湧いて、つかの間、気が楽になるのです。


そして、ついつい人観察をしてしまっています。


今日、印象に残ったのは「私、元美容師だから」が口ぐせの、おばさんからおばあさんの間くらいの女性のそのセリフです。知り合いと思われる女性と話過ぎて、バスを降りる時に両替が遅れたことをしきりに運転手に謝りながら、去っていきました。


「元美容師だから」は彼女のプライドのように聞こえました。だから、私は何でもできるわ、という勢いだなぁと思い聞いていました。


「私、元~だから」というのを自分に当てはめると、結構色々ありますが、職業じゃない上、カッコいいのが無いので、この場ではふせて心にしまっておきます。

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