第2話 え?マジで?
室井に谷坂さんのアドレスを教えて欲しいと伝えて、その翌日。いつも通り2組に教科書を借りに行くと、室井がトイレに行こうと声をかけて来た。谷坂さんは教室にいなくてなんだか少しモヤモヤしたのを覚えている。
室井『大竹〜、ちょっとトイレいこーや』
俺『ん?まあいいけど、俺さっき行った…』
室井『いいからいいから!』
俺『めんどくせー…』
〜トイレ内〜
俺『お前連れションとか珍しいなー』
室井『俺もトイレはさっき行ったわ!』
俺『なら何故…』
室井『谷坂さん、アドレス教えていいってさ!』
俺『え?マジ?本当?え?本当?』
室井『落ち着けって笑 昨日メールしたらオッケーだとさ』
俺『マジでありがとう!室井大好き!』
室井『はいはい、そしたら後で送っとくから!谷坂さんには大竹からメールするって伝えてるからよろしく!』
俺『え?そうなの?!わかった!谷坂さん俺のこと知ってた?知ってた?』
キーンコーンカーンコーン
室井『んー、そこまで詳しく話ししてない笑 授業遅れるからまたなー』
俺『えー、ひどい!いや、でもうん、ありがとな!』
もちろんこの後の授業なんて耳に入ってくることはなかったし、なんの授業だったのかさえ覚えていない。覚えているのは、谷坂さんになんてメールすべきなのかをただひたすら考えていたってことだけ。
〜放課後〜
俺の学校では、校則で学校内に携帯電話の持ち込みは基本的に禁止されている。なので、谷坂さんに連絡できるのも、恒例の勉強会が終わって家に帰ったらだ。
俺『室井〜、谷坂さんって彼氏いるんかな?どうなのかな??』
室井『いや、知らんなー。あんまり男子と話してるの見たことないし、いないんじゃね?』
俺『えー、どうなんだろー?うわー』
室井『お前、そんなウキウキしたりするんだ?笑 もっと冷静なイメージやったわ笑』
俺『いや、おれもこんな感じ初めてで自分でもわりと戸惑ってる…』
そんな会話はそこそこに、勉強会なんて上の空。チームメイトはアホみたいな会話で盛り上がってるが、俺は未だに谷坂さんになんてメールを送ろうか、ずっと考えていた。
〜帰宅〜
俺はメールを作っては消し、作っては消してを繰り返しながら、谷坂さんへのメールを作成していた。
『初めまして、隣のクラスの大竹です。室井からアドレス教えて貰いました!よろしくね!』多分こんな内容を書くのに1時間程かかっていた気がする。絵文字はどうする?顔文字はどうする?そんな些細なことを考えながら、メールを送信した。
待てど暮らせど、連絡がない。
忙しいのかなあ?それとも室井に断りづらくてオッケーしたものの、実はダメっていうパターンもあるのか…。なんて考えながら、携帯電話とにらめっこをしていると…
チャンチャカチャンチャーン♪
今まで、うんともすんとも言わなかった携帯電話から賑やかな音が鳴る。
『はじめまして!1組の大竹君だよね?よく教科書借りにくる笑 ギプスしてるからよくわかるよー笑』
多分、今まで生きて来た中で、なによりも緊張して画面を開いたメールだったと思う。たったこれだけ。なんてことはないたわいの無い文書。だけど、谷坂さんは俺のことを知っている。ただそれだけが何よりも嬉しかった。今思えば、ただの悪目立ちだったのかも知れないが。
無事中間テストは終わり、また授業が終わればグラウンドに走り出す日々。野球部は他の部活よりも終わるのが遅かったため、谷坂さんとの連絡も遅い時間からしかできなかった。部活が休みだったときは早い時間から連絡出来ていたのになあ…と思いながら。
けど、遅くまでやる野球の練習も悪くなかった。生徒用の自転車置き場で自主練習をしていると谷坂さんに会えることもあった。こっちは恥ずかしいから知らんぷり。けど谷坂さんが手を振ってくれることもあった。すごーくそっけなく、誰にもバレないように手を振り返す。会えたらすごく嬉しいし、会えなかったらすごく寂しい。心の中でそう呟いた。
その後も谷坂さんとはほぼ毎日連絡を取り合っていた。メールを通じて、谷坂さんがどんな人なのか少しだけ知れた。
何部なのか?何中学出身なのか?何人兄弟なのか?とかたわいの無い会話から、本当にすこーしだけ知れたんだと思う。
テンポよく進むメールに、毎日テンションも上がりながら、俺は『多分このままなら付き合えるだろう』と少し確信じみた気持ちを抱いていた。
メールも毎日遅い時間まで続き、どっちかがおやすみを言う。さらに翌朝どっちかがおはようのメールをする。きっとすぐにでも付き合えるんだろうなーと思いながらメールを打つ。この返事次第では、メールだけじゃなくて、電話かけたりしてもいいのかな?って。
俺【今日もお疲れ様ー!いきなりなんやけど、谷坂さんって彼氏とかいるのー?】
谷坂さん【今日もお疲れ様でした!いきなりどうしたのー?いるよー!】
え?マジで?
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