第3話 「お菓子たいむ」

 三人とも今日やるべき勉強の範囲を無事終えて片づけに現在入っている。

 「この後はお菓子を食べたりするんだっけか」

 「いつもはね~。近くの駄菓子屋に行ってみんな好きなものを買って来るんだよ~」

 美咲は相変わらずののんびりとした口調でそう返事をする。

 「でもさすがにしばらくは無理だね……」

 「そうね、しばらくお菓子は我慢しないとダメみたいね。状況がこんな感じだしね」

 確かに小学生の外出時についていける大人はここにはおらず、お菓子を買いに行くということは出来そうにもない。

 しかし。

 「確かに駄菓子屋に買い物に行くことは到底できそうないね。でも、お菓子を食べることくらいは出来るよ?」

 「「「え?」」」

 「お菓子ならうちの家に貯蔵されたものがたくさんある。今回はそれを振舞おうじゃないか!」

 うちの家にはたくさんのお菓子を常時貯蔵しているのである。それを出してあげればきっとこの三人も喜んでぐっと距離を縮めることが出来るだろう。

 「えっと……」

 「……」

 「ふーむ……」

 そんな俺の予想に反して三人の反応は微妙である。鈴はちょっと苦笑いをしているし、奈々に関しては腕を組んで目も合わせてくれないし、美咲は首を少し傾げている。

 「あ、あれ? お菓子嬉しくない?」

 「気持ちは嬉しいですけれども……。今からわざわざお菓子を取ってきてもらうのも申し訳ないなって……」

 「ふん、あんたの食べてるお菓子なんて私たちの口に合うわけが……」

 「ふーむ……。昨日、駄菓子屋のおばあちゃんが勧めてくれたクッキー……」

 鈴は困り顔でそう言ってくれるが、奈々と美咲のストレートな意見を合わせて聞くとより鈴の気遣いが心に沁みた。

 どうやらこの子たちは俺の事を甘く見ているようだ。

 「バカにするなよ……。君たちよりも5年以上お菓子というものを先に知り、向き合ってきたんだ。そのキャリアの差を見せて唸らせてやろうじゃないか!」

 俺はそう言って勢いよく部屋から飛び出してお菓子を持ってくるべく、自宅に急いで戻った。

 「行っちゃった……。と、止めたほうがよかったかなっ?」

 「いいわよ、どうせ何言ってもあの様子じゃ飛び出してたんじゃない?」

 「うーむ、クッキー……」


   ********15分後********


 「待たせたな!」

 俺はお菓子がたくさん入ったレジ袋を持って戻った。

 「ご、ごめんなさいっ! 私たちのために……」

 「謝らなくていいんじゃない? 勝手に飛び出して戻ってきただけだし」

 「うーむ、クッキーはある?」

 お菓子を取りに行く前と三人の反応は全く変わらない。律義にぺこぺこ頭を下げてくれる鈴とクッキーに固執している美咲はともかく、とにかく奈々の反応が冷ややかなままなのはいただけない。

 しかし、そんな態度がとれるのもここまでである。

 「よし、みんな。この袋の中に入っているお菓子は自由に食べてもいいぞ!」

 俺は持ってきたお菓子を袋から取り出して机に並べていく。すると——

 「こ、このお菓子のこの味は見たことがないですっ!」

 「食べてもいいぞ?」

 「は、はいっ! いただきますっ!」

 「む……。このクッキーは気になる」

 「美咲、遠慮なく食べたらいいぞ?」

 「いただこうー」

 早速、鈴と美咲が俺の持ってきたお菓子に興味を示して手に取っていく。奈々は何も言わないが、ちらちらと机の上に並べたお菓子に視線が行っていることを俺は見逃さない。

 「ほら奈々も何か食べたらどうだ?」

 「わ、私は駄菓子屋さんで自分の欲しいと思ったものを買って食べるんだから……」

 「そうは言うけど、さっきからこのチョコレート菓子に視線を奪われていることは知っているんだからね?」

 「そ、それは……。だってそれ、駄菓子屋どころかお母さんとスーパーにお買い物に行った時ですら見たことないんだもん……。誰でも知っているお菓子の銘柄なのに……」

 「意地張らずに食べたらいいじゃないか。ほら」

 俺は先ほどから奈々が気にしているお菓子を奈々に渡してみた。奈々は恐る恐る俺の手からそのお菓子を受け取って口にした。

 「お、おいしい……わね」

 「こっちのお菓子もおいしいですっ!」

 「ふむ、このクッキーは合格点をあげようぞ」

 三人の評価は上々だった。そこからは三人とも喜んでいろんなお菓子を進んで食べるようになってきた。

 「さっき言ったけど、なんでこんなに見たことないお菓子をいっぱい持っているの?」

 「あ、私もそれ気になります! どこで買っているんですか?」

 「このお菓子たちはドラッグストアで買っているんだ」

 「ふむ? どらっぐすとあってこんなにいろんなお菓子あるんだ」

 「そそ、んで学校の帰り道に近くにあるから寄って欲しいものを買いだめしているってこと」

 「それ、バレたら先生に怒られるわよ……」

 奈々は呆れた顔をしてそう突っ込むがお菓子を食べる手が全く止まっていない。お気に召したようで何よりである。

 「今までは自分たちでお金持ってきて駄菓子屋で買ったりしていたの?」

 「そうですね、毎週お菓子を買う分のお金は持たせてもらってましたっ」

 「そっか。俺一人じゃちょっとみんなを外に連れていくことは出来ないから、いつものようにみんながご両親からもらってきたお金を俺がもらっおいてまた次の週末までにお菓子を買って来ることにするけどそれでいいかな?」

 「うむ、異論なし」

 「そ、そうね。それが一番いいかもね……」

 奈々も美咲も俺の提案にはすぐに乗ってくれた。

 「しかし、本当においしいわね……。これ普通のスーパーにも置いてくれればいいのに」

 「本当にねっ」

 「うむ」

 終始三人がご機嫌だったのでまたドラッグストアのお菓子シリーズを提供していこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

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