15.魔法屋 魔術師 ラエルナ・フォルト(後)

名前【ラエルナ・フォルト】

性別【女性】

年齢【三十二歳】

職業【魔法屋店主 魔術師】

外見【下肢機能障害 美人】


 二度目の彼女とのやりとりも魔法屋で行っている。幸か不幸か被害者が切断されていた事実が露呈してしまったことで、検証実験を魔法屋で行わせて貰えることになったからである。以下は、冷凍装置で氷の剣を作る、溶解液で溶かすといった検証が見事に否定され、最後に行った検証――鶏肉を冷凍して切断する――が、針鋸で切ることも叩きつけて割ることも出来なかったために成立せず、九つの仮説が全て否定された後での会話の一部終始である。


 ――残念ね。でも本当に分からないわ。その綺麗な断面をどうやって……駄目。思いつかない。

 ちょっと休憩しましょう。コーヒーでも淹れるわ。

 ……はいどうぞ。いい香りでしょ。最近入った新作なの。王都で流行ってるって聞いたわ。酸味があって苦みが少なめ。私はもう少し苦くてもいいんだけど。

 それにしても……暗礁に乗り上げちゃったわね。ニーデック医師は何て言っているの? そう。……医者でも分からないならどうしようもないわね。

 魔獣に殺された、だったら分かるんだけど。鋭い爪とか牙とか持っている奴なんてごろごろいるわけだし。でもそんなのが街に入ってきたら殺人以前に大騒動よね。

 あとは……そうね。王都にいる殺し屋の話なんだけど、「爪使い」っていうのがいるらしいわ。その男は魔術都市で右の手首から先を切断して、代わりにグリフィンの前足を移植しているの。爪使いはその鋭く長い爪で対象の首を掻き切るそうなの。……でも、彼の仕事は依頼を受けて政治家やマフィアの首領を殺すことであって、辺境の村の浮浪者を殺す理由はないわよね。そもそもグリフィンの爪でも綺麗な断面を作るのはきっと難しいだろうし。

 他には……サーベルシャークってのがいるわ。海の中だけど。彼らは口の先がサーベル状に伸びていて、船底に穴を開けて船を沈めて船員を食べたりするの。全長は五百から六百カルダぐらいで、重さが二トン前後だから……サイクロプスがサーベルシャークを振り回せば人間ぐらい切れるかも知れないけど、これはちょっと荒唐無稽よね。結局魔獣が街に入ってきちゃってるし。

 どうしたのよ? 短剣なんて握りしめて。氷の剣は役に立たなかったし、その風属性の短剣だって、昔は一振りすれば魔法の風の力で遠く離れた魔獣を切り裂くことが出来たらしいけど……今はもう使えないわ。ただの飾りね。

 ちょっと、見つけたって何よ、声大きいって、だから、ちょっと、もう、そんなに揺すったら車椅子から落ちちゃうじゃない。落ち着いてよ、もうっ!

 

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