生徒会の権限
はじめに紹介する違和感は、生徒会が学校の経営において大きな権限を持っているという設定に対するものだ。たとえば学園に在籍する生徒のみで構成される生徒会が、理事会以上の権限を持っているなど。
こういう設定は公設の学校、つまり国や地方自治体が設置、運営する学校ではなく、私設の学校という基本設定の下に行われることが多いように思う。国や地方自治体は個人の裁量では動かせないから、必然的に私人の所有物である私設の学校であることが要請されるのだろう。
設定のパターンには幾つかあって、現代的な物語の場合、制度上の権限を設定する場合と、人脈上の権限を設定する場合とがあるように思う。前者はつまり学園の理念が「独立自治を貴ぶ」とか「生徒の自主性の涵養を目的とする」などで、いわば教育の一環として生徒会に学園運営の権限が与えられている設定だ。後者はたとえば生徒会の委員の誰かが学園の持ち主の家族や親族であったり、あるいはそれに何らかの影響力を行使できる家系や団体に属していたりで、個人的にその権限を持っている設定だ。
それ以外の物語の場合(これはたとえば、異世界物語における魔法学園など)はその物語背景に応じて設定は変わるだろうが、過去によく見たものとしては、王権の設定がある。つまり生徒が王族だったり月卿雲客の子だったりするがゆえに、それより身分の低い学校の経営陣はその生徒のやることに口を出せず、逆にさまざまな介入を受けるという設定だ。
そのそれ以外の物語のほうは措き、現代的な物語に話を絞ると、違和感が出てくる。
いくら生徒の自主性、独立自治といっても、生徒に学校の経営まで委ねてしまう学校というのは、とても危なっかしい。幾百人も生徒がいれば向上心のある生徒からそうでもない生徒までさまざまな訳で、生徒会がみな向上心の塊であり続けられるかとそれは期待しすぎだろう。生徒会がひとたび自堕落な方向に向かえば、学校が学校として成立しなくなる虞がある。また向上心の方向がおかしい場合も同様で、教育内容が偏ったり、学校と言うよりは何らかの養成所や宗教施設になってしまったりする虞があろう。そういう懸念があるゆえに、一部ならばともかく所有者や理事会などの上位に位置する大きな権限を生徒会に与える学校があるかというと甚だ疑問だ。
また個人的な人脈を駆使して経営に影響を与える場合、現実にありえないことはないとは思う。ものによっては、家族や親族の訴えによって学園の経営方針を変える所有者というのも実在するかもしれない。ただそうは言っても経営のことを考えないわけではなかろうから、生徒の言うことが何でも通るという訳ではないだろう。
私自身の経験に即して言うと、生徒会の権限はもっと地味だ。主に生徒生活の向上に関する部分のみを扱う。具体的には生徒の行うイベントのこと、クラブ活動への予算配分、校内設備の充実などに関して限定的な権限を与えられているだけだった。
その経験もあって、生徒会に学校の経営権(その一部を担うという話ではなく、生徒会が独立かつ最高の意思決定機関となっているという話)を持つという設定には違和感を覚えずにはいられない。
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