不器用な遺伝

鮮明に思い出すのは出来ないが、

泣きじゃくる僕は父に駆け寄っていったんだ。

分からない。どうして涙が溢れるか。

吐露したい気持ちが交差する、雲が掛かった僕の脳。

そんな暗い世界をね、そっと照らしてくれたんだ。

僕を包んだ不細工な笑みと震える手。

ああ、そうか。誰かがいるのが灯りか、と言葉に出来ずまた泣いた。

その一言を聞いた時、僕はたしかに救われた。

「言いたいことは言えないもんさ。」

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