読まない空気を読む

 着いた時、周囲の様子が変だった。

 水無月でもないというのに、会社の雰囲気は重く冷たい。

 聞くと、前年の売上を考慮して、上層が圧力を掛けてきた。

 はっきり言って、楽しくない。勝手に落ち込んで欲しくない。

 皆の覇気が戻って欲しいと願うのは、僕の我儘なんだろうな。

 ふと足は、殊更に御機嫌な態度と挨拶を連れ立って、疑いの瞳を吸い寄せる。

 能天気さと図太さに自身で呆れてしまうけど、これが自分の出来る事。

「なんか笑顔だね、君。」

 誰かの頬が上がるなら、僕のお節介も役に立つ。

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