他人との出会い

 やっと、静かになった。

 ここまでの道則で、私は数えきれない期待と失敗を重ねてきた。

 自分を囲む衣装棚は浮足立つ体を見せない最後の城。

 額から湧き出る汗は緊張か、はたまた不安か。

 思考は無限に脳を埋めることしかできず、口を閉めさせない。

 けれど、救い難い程に未来がない。

 地面を踏む音は真っ直ぐな足取りで鼓膜を徐々に震わせていく。

 足元から腰、腹、胸、首を悪戯に登る蛇は御馳走を前に上唇を濡らす。

 「私はもう、知られたくないのに。」

 鈍重に開く音を耳にした直後、目は眩い光を認識した。

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